黒い立方体
白兎
立方体
それは突然そこにあった。
無機質な黒い立方体。大きさは戸建ての一軒家ほど。
一体誰がここに置いたのか。
「これは宇宙人が置いていった」
そんな風に言う人もいた。確かにそれは不自然であり、人の仕業には思えない。専門家が集まり、調査が始まった。
どんな物質で出来ているかを調べるため、削ろうとしたが出来なかった。
微量の放射線を検知し、これが宇宙から来たものという信憑性が強まった。立方体の中には空洞があることがレーダーで確認できた。
「一体、これは何なんだ?」
専門家たちは悩んだ。
「空洞があるというなら、これは箱だな」
と誰かが言った。箱というには大きすぎるが、何かが入っているかもしれないという期待が高まった。
「これを開けてみよう」
しかし、この立方体は、傷つける事すら出来ない。こじ開ける事なんて出来るだろうか。
重機を使ってもその立方体は開けることは出来なかった。いよいよ手詰まりとなり、爆薬まで使って、何とか開けようと試みた。しかし、それは全くの無傷のままだ。
今度は数学者を集めて、この立方体を開ける方法を考えてもらうことにしたが、彼らは難しい話しを論じ合い、結局、立方体の開け方は分からないと結論付けた。
それならばと、科学者を集めて、この立方体の仕組みを調べさせた。そして、分かったことがあった。
「これは、どこかと通信をしている」
「これは機械仕掛けである」
「科学の力をもって、これを開けることが出来るだろう」
これは希望が持てると、誰もが喜んだ。
「では、科学者の方々、早速これを開けてくれ」
とこのプロジェクトの責任者が言うと、
「これはあまりにも高度な科学で、我々には開けることは出来ない」
と期待外れの答えが返って来た。
『今回はどうでしたか?』
通信を確認している者に聞くと、
『あれを開けることが出来なかったようだ』
と答えた。
『残念ですね。せっかくの贈り物なのに』
そう言う者は青緑色の肌に、輝くような黒い瞳をしていた。
黒い立方体 白兎 @hakuto-i
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