第47話 各国でのテリサバース教会の崩壊について
――各国side――
シュノベザール王国では、いち早くテリサバース教会の悪事が届いた。
兄上が知れば戻って来てくださるかもしれない。
もうテリサバース教会は教会に非ずとされているのだし、とは言っても、我がシュノベザール王国のテリサバース教会は、神々の国のアツシ様から派遣された為、大きな問題にはなっていない。
いち早く連絡が来て良かった……兄上をこの地に戻って来て貰えるかもしれない。
――兄上が神々の国に亡命して早10年。
そろそろお帰り願いたいとさえ思っていたのだ。
また国王に戻って欲しいとさえ思っているが、今ではアツシ様の右腕として働いている兄上は戻ってきたとしても国王にはならないだろう。
でも、それでも――堂々と国を見て貰いたい。
兄上から受け継いだこのシュノベザール王国を、守ってきた俺を褒めて頂きたい。
「シュライ兄上に連絡を入れる」
「畏まりました」
「ふふ、君も兄上が大手を振って戻って来れたら幸せだろう?」
「それは無論です。その為にこの宰相の地位にしがみ付いているのですから」
そう言って笑うサファール宰相は、嬉しそうに微笑んだのだった――。
◆
「テリサバース教会って胡散臭いと思ってたけど、やっぱり胡散臭かったのね」
「ユリ、それより仕事が立て込んでるんだが……」
「え? 昨日も付与したわよ? もう来たの?」
「注文が殺到しててな……」
「もう、忙しい事は良い事だけど、たまの休日くらいはゆっくり過ごしたいわ!」
「そうですよ兄上、たまには家族サービスしないと」
「そうよお父様」
「僕も偶には遊びたいなぁ」
そう言って私とエンジュさんの間に生まれ子供も、エンジュさんと遊びたくて仕方がない様子。
あの後、子宝にも恵まれ、娘には私と同じ石を出す能力を授かった。
家内安全で夫婦円満の木彫りのお守りも効いていて、我が家は平和そのもの――なんだけど、何かと仕事人間のエンジュさんには少し困ったものね。
「今日はオフの日にしましょう? 仕事は仕事が始まったらやるわ?」
「やれやれ。じゃあ今日は公園でのんびり遊ぶか」
「「わ――い!!」」
「あ、でも近道だからってテリサバース教会の前は通らない方が良さそうね」
「そうだな……本当にテリサバース教会は何をやってるんだか」
「ロストテクノロジー持ちを奴隷のように扱ってたって書いてあったわ」
「もしユリと娘の力も知っていたら、二人も連れて行かされたんだろうか……」
「あら、私達は石を出す程度の能力ですもの、欲しがらないんじゃない?」
「むう、それなら良いんだが……不安はあるさ」
「心配性ね?」
何時までも仲のいい夫婦のまま――私たちは幸いテリサバース教会には関係していなかったからそこまでの被害はいないけれど、貴族たちは大変そう。
まぁ、何かと「神の御威光です」って言って金を貰いに来るテリサバース教会が無くなるならそれでいいわ。
全く、金の亡者だったのよね。嫌になっちゃう!
そんな事を思いつつも、私達家族は平和に過ごしている――。
◆
「まぁ、本国っていうのかしら? テリサバース総本山が摘発されたそうよ。嫌だわ、これだから金の亡者って嫌なのよ」
「まぁ、でも聖女様を探していらっしゃったんでしょう?」
「ええ、貴女と言う聖女ではなかったらしいんだけれど、全く不思議ね。あちらの聖女様はひっそりと隠れて過ごしたいタイプんだと何となく思うわ」
「まぁ……でもこんな酷い総本山に行くよりは、潜んで隠れて過ごしたい気持ちも分かるわ」
そう語り合う私、ロスターナと妻の言葉にウンウンと頷くアツシさんとシュライさん。
アツシさん宛に手紙と同時に新聞が届いていて、持って来てくださったの。
「シュライは俺の右腕だから全部を返す事は出来ねぇんだけどなぁ」
「まぁ、一時帰国は一旦嵐を止めて行ってもいいでしょうね。凱旋帰国としますか?」
「あはははは! テリサバース教会が追い出した賢王シュライ、神として戻る! ってか?」
「それも良いですね」
そう言って笑うお二人はとっても仲良し。
シュライ様のお子様もアツシ様のお子様と仲が宜しいし、本当にホッとするわ。
とは言え、このテリサバース教会にまで波紋が広がらなければいいけれど、こちらはこちらで独自の発展を遂げたテリサバース教会。
余り考える必要は無さそうね。
「このテリサバース教会は殆ど本国とも連絡が取れない状態でしたし、まぁ問題はないかしら?」
「ありませんわ」
「それもそうよね」
こうして神々の島――ジュノリス大国にあるテリサバース教会はいつも通り平和そのもの。
本国はどうなっても知らないけれど、こちらに飛び火だけはしなければそれでいいの。
でも、聖女ちゃんを守る為にここまで動いたとしたら、それはとっても凄い事ね。
引き篭もりが出来ないから何かを盾にして隠れたいって感じかしら?
ふふふ♪
でも、それが一番良かったのかも知れないわね。
悪事はしてはならいもの。
そんな事を思いつつ、アツシさんの拠点でお茶を飲みつつ過ごした午後の事――。
◆
「リディア聞いたか? テリサバース教会の事」
「ええ、さっきロキシーから聞いたばかりでしてよ」
「大変なことになったな……ナカース王国とダンノージュ侯爵家領にあるテリサバース教会も今は大変らしい」
「あらぁ」
「ナカース王国の教会は焼き討ちにあったとか」
「そこまでですの!?」
「暴動は収まらないかもしれないな。奴等何かと金だ金貨だと貴族だの俺達商人から奪い取って行ってたからな」
「確かに、一体あんなにも大きな金額何に使うのかしらって思ってたけど、何に使ってたのかしら?」
「娼館と、酒」
「最低ですわね」
カイルがダンノージュ侯爵になってもう直ぐ20年。
わたくしも年を取りましたわ。
でも、相変わらず箱庭に閉じ籠っているんですけれども。
わたくし達の間には3人の子宝に恵まれましたわ。
内二人は箱庭師でロストテクノロジー持ち。
流石にテリサバース教会から連れてこいと煩かった為、「身体が弱く」と嘘をついてわたくしの箱庭で保護してましたの。
娘二人はその内力を発揮して、わたくしと同等の箱庭を作れるようになりましたわ。
これで何かあった場合に備えて……何とかなりそうですわね。
無論婿を取らせますわよ? ええ、勿論!
長男はカイルの一子相伝の技を引き継ぎ、今は騎士団に所属して身体と心を鍛えてますわ。
「ダンノージュ侯爵領のテリサバース教会にも貴族が大勢押し寄せているらしい」
「まぁ、暴動が起きなければいいですけれど」
そう言っていた矢先、横暴で有名だった神父が貴族に寄って殺害され、それを代わり切りにテリサバース教会は慎ましく、静かになったそうですわ。
何処でも悪事はしてはならないのだと嫌でも分かる事件でいたわね。
今後、テリサバース教会が生き抜くには、慎ましく静かに過ごす他ないでしょう。
昔のように「金だ!」「金貨だ!」なんて言えば、袋叩きですものね?
ザマァないですわ!
「でも、新聞では聖女様を探そうとしてこうなったと書いてありますわね。聖女様は一般と一緒で生活したいのだと仰っていたのだとか」
「ああ、らしいな。リディアのように引き篭もり体質なのかも知れない」
「あら、わたくしは違うと感じましたわ。きっと隠れていたいんだと思いますわ」
「どっちも変わらないだろう? ははははは!」
そう言って笑うカイルにわたくしも「確かに言われてみればそうですわね!」と笑い、とはいえ、【引き篭もり】と【隠れていたい】では、若干違う気もしますわ。
何が違うって言われると微妙にお答えできないんですけれど、それもそれで、似た者同士なのかも知れませんわね!
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