第46話 トップシークレットな二つの話②

――騎士団side――



陛下の命により、王国騎士団は慌ただしく準備が進んで馬に乗り込み一気に駆け出した。

向かうのはテリサバース教会総本山。

陛下から聞いたお言葉にゾッとするものがあった。

我が弟妹人形も戻ってこなかった……彼女は無事だろうか。

弟妹人形を奪われた者達は数多い。過去を含めても80体余りが行方不明になっている。

それを、まさかテリサバース教会が所持していようとは、誰が想像したであろうか……。



「アニサ……待っていてくれ」



そう小さく呟き、総本山に乗り込むと沢山の高級馬車が並んでいて貴族が来ている事が分かった。

馬を降り総本山の扉を開けて中に押し入ると、神父たちは慌てふためき俺達は彼らを押しのけ右側の階段を探り隠し通路がある事を確認。

その通路が隠れている扉を壊すと一気に中に押し入り、神父たちが「大司教様――!!」と駆け出す姿を放置して中に突き進んでいく。

扉を一つずつ開けて行くと、中には小さな像や大きな像も沢山あり、どれもが一点物だと分る素晴らしい出来だったが――全て女性の裸体であった。


――こんなものを教会が所持して何になる!!


腸が煮えくり返りそうな中、最後の扉を開くとそこには驚いた顔をした貴族たちが裸でいて、そこには沢山の弟妹人形や大人の美しい人形が!!



「国王陛下の命令である! 全員取り押さえよ!!」



そう言うと慌てふためいた貴族たちは全員裸のまま取り押さえられ、彼らの言い分等は現行犯逮捕な為聞き入れられない。

そして俺は見てしまったのだ。

――愛しい最も大事にしてきた弟妹人形であるアニサがいることに。

怒りでどうにかなりそうだったが、縄でキツク撒かれた彼らは裸のまま外に連行される。

貴族はざっと40名余り。

殆どが男性だった。

俺達の――いや、奪い取った人形達を娼婦人形に変え戯れていたのだ。

到底許される事ではない。

牢屋用の鉄格子の馬車の中に放り込まれ、人形達は全て荷馬車として持ってきた雨に濡れないような造りのしっかりした物を8台も持って来ていて正解だった。

一つ一つ運び出し、証拠品として並べていく。

アニサは俺が責任を持って抱き上げて連れて行った……。

死んでいるのにこんな目にあわされて……何と言えばいいのだろうか……。



「隊長、押収品の裸体人形もでしょうか?」

「全て持ってこいとの仰せだ」

「畏まりました」



冷たい雨に裸のまま晒されて貴族たちは騒いでいるが知った事ではない。

全ての物が押収されたら、もう一つの仕事が残っている。



「テリサバース教会内部を徹底して探せ。地下に通じる階段がある筈だ。塔になっている場所を探すんだ!」

「畏まりました!」

「大司教も探し出せ!! 罪人だ! 何としても捕えよ!」



この声に周囲に住む者達は騒めき、雨の中不安そうにしているが――事実、大犯罪がテリサバース教会で行われていた。

この様な事、許される訳がない!!

鎧をガシャガシャと鳴らし、怒りの形相で目についた塔の元へと向かい地下に降りると、既に人の気配があり、俺達数名は隠し扉を探し見つけ出した。

中に入ると此処だけ異様に違うのだと理解し、中にはいると大司教と数名の幹部らしきものたちが何かに祈りを捧げていた。

悲鳴を上げながら捉えられる大司教は「メデュアナシア」と何度も叫んでおり、その声の先には――今では作る事、持つ事すら許されないミイラがあったのだ。

まだ死んで間もないような、そんな美しい少女のミイラであった。

其方も丁寧に運び出したが、大司教は狂ったように「メデュアナシアに触るなああああ!」と叫んでいて、その姿は異常であった。

その声にふと、娼婦人形に変えられたアニサを思い出し歯を喰いしばる。



「そういうお前達とて!!! 俺達の大事な弟妹人形に何をした!!」

「そ、それは」

「これは陛下にお持ちする。この命令は絶対である!!!」

「あああっ!! 乱暴に扱うな!! メデュアナシアは人形と違って繊細なのだぞ!」

「黙れ!! そいつの口を縛って置け!」



そう命令し押収したミイラも持って行く。

こうしてテリサバース教会で押収したものを全て城に持って行き、弟妹人形とミイラ及び、裸体の像たちを城に運び入れると、陛下が入ってきた。

無論奴らは牢にぶち込んである。



「陛下」

「これは見事に……酷い有様だね」

「弟妹人形及び、美しい人形達は全員身体は娼婦人形に変えられています」

「報告を受けている。なんと残虐な。遺体を弄ぶのと同義ではないか」

「それから、大司教が特に反応をしていたのが此方です」



そう言ってガラスケースの中で眠るミイラを見せると「これがシャルロット様の言っていたメデュアナシアか」と口にし、目を閉じると小さく息を吐かれた。



「テリサバース教会内部は、余程腐敗していたと見える」

「どうなさいますか?」

「貴族たちには拷問しながらの事情聴取を行っている。全てが吐き出されたら、元大司教たちの犯罪を裁くつもりだ。断頭台は用意させておこう」

「畏まりました」

「また、今回捕まった貴族たちも名前と仮名を報告し、貴族籍を剥奪。家はお取り潰しとする」

「ハッ!」



――こうして、テリサバース教会での悪行が世間に公表され、それは大きな波紋となってテリサバース教会全体へと広がって行く。

また、教会に無理やり捕らわれていた【ロストテクノロジー】持ちの人間達は保護を求め、今は国が保護をしている。

余程辛い中働かされていたようで、骨と皮だけの者も数十名いた。

奴隷のような日々だったと語る彼らに、国王は更に怒りを露わにした。


更に、弟妹人形を奪われた貴族たちは挙ってテリサバース教会に向かい本当にいないのかどうかを確かめたり。

尋問して総本山に送った事を伝えられて取り戻しに来たりと、半年間騒ぎは続いた。

そしてこう言われるのである。



【テリサバース女神の御威光があっても、テリサバース教会のした事は許されない。最早教会は教会に非ず】



その言葉は世界へと広がって行くのである――。




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