第33話 シャルロット・フィズリー王城へ招かれる②

 ――シャルロットside――



「この手のあなた方で言う遺跡と言うのには随分と親しんだものですけれど、ハッキリ言わせて貰えば、この脳だけの人形は既に壊れて動きませんわ。弄っても無理レベルでしてよ。ここにつぎ込むお金があるなら人形師に回せば宜しいのに。現代の人形を見せて貰う機会がありましたから言いますけれど、あんなの失敗作でしてよ? 誰ですの? 人形を作る為の魔法陣を簡略化なんてさせた阿呆は」



 そうわたくしが口にすると、人形大臣であり何度かお話したことがあるローダン侯爵が一歩前に出ましたわ。

 すると、「話をする前に人形課を見て欲しい」というのでそちらに行くと、まぁ質の悪い魔法陣をどや顔で……。イライラしますわ。



「今から50年程前でしょうか。それまでも簡略化は進んでいたのですが、更に簡略化させ無駄な声を省かせよと言う法律が出来ました。声に関しては弟妹人形に関しては着けても良いが、他の人形には依頼主が任意で有り無しを決められるのです。無駄口を叩く暇があれば仕事をしろと言う意味があるのだと聞いております。ですよね? ドスマン伯爵」



 と、同じ人形大臣の元で働く老害らしき人物に声を掛けたローダン侯爵に、ドスマン伯爵は震えながら目を反らし「えっと、その……」と口にしている。



「まぁ、あなた方人形を奴隷にしたいんですの?」

「そ、れは……」

「人形とは人間と人形が手を取り合って生活できるようにと言うのが弟妹人形のコンセプトの筈ですわ。それなのに大人であるあなた方が人形を奴隷だと言っている。なんとも矛盾してますわね? その辺りどうお考えかしら? 法改定は? ここにある多くの人形と言う名の失敗作はどうしますの」



 まさか自分たちがどや顔で作っていたのを失敗作と言われるとは思っていなかったのかしら?

 人形師たちはビックリした目でこちらを見ていますわね。



「かなり長時間の議論の末、簡略化はやはり宜しくないと言う事で元の人形を作る為の魔法陣を現在取り戻すべくしている部署があります。ですが芳しくはありません。長い年月簡略化され過ぎて、綺麗な魔法陣を保つと言う事が難しいのです」

「そんな者、人形師を名乗る資格はありませんわ。無論簡略化した魔法陣でしか人形の失敗作しか作れない此処の課も必要ないですわね」

「ですが、今の人形師は簡略化された魔法陣しか知りません」

「なんて頭の痛い問題なのかしら。あなた方人間は直ぐ退化させる事ばかりしますのね。だから衰退していく一方なのですのよ?」



 そうため息交じりに伝えると「退化」「衰退」と呟く声がチラホラ聞こえましたけれど、事実しか言っておりませんわ。



「七つの大罪の怠惰と同じでしてよ」

「七つの大罪!」

「なんて見っとも無い。もっと気合を入れて元の魔法陣にまで精密さを上げなさいませ? それが出来ないのなら人形を作る意味など御座いません事よ!! 奴隷を生み出すだけの魔法陣等捨ててしまいなさい!」



 手厳しいとは思いますけど事実は事実。

 すると人形師から不満の声が上がった為「ゴミしか作れぬ者達はお黙りなさい」と口にすると――。



「ゴミしか作れないってなんだよ! 確かに古代人形は何もかもが作りが違うって聞いてるけど……でも俺達だって」

「苦労してその程度ですの? 本当の苦労を知らなすぎですわ。ぬるま湯に浸かっているからその程度ですのよ。お分かり頂けるかしら?」

「ぬ、ぬるま湯!?」

「あなた達、どうせ『俺は人形を作ってやっている』と言う気持ちで御座いましょうけど、人形からすればそんな人間から作られるなんて、生き恥ですわ」

「「「生き恥……」」」

「ああ、でも20年そこらで死ぬんでしたわね? 生き恥も20年と思えば耐えれるんじゃありません事?」

「――!!」

「まぁ、古代文明の方々の人形師の作る人形はどれもこれも一品物。同じ人形を作る機関はあれど、個人の人形師の人形とは一つ一つが芸術の域でしたわ。あなた方の作る人形、目が死んでますのよ」

「確かに人形と言うよりは、目の曇ったというか、目の死んだ人形が多い気がするわ」

「そう、輝いてませんのよ」

「確かに言われてみれば……」

「それはそうでしょうね。生み出される瞬間から奴隷の様な気持ちで生み出され、声を奪われ、寿命も多くて20年と短い使い捨て……。人形大臣? これの法改正は?」

「進んでいます。ですが肝心の」

「また国王が仕事してませんの!?」

「申し訳ございません!!」



 流石のわたくし得意のヒステリックな声を出すとローダン侯爵も頭を深々と下げ、王弟殿下も深々と下げた為全員が這いつくばるように頭を下げましたわ。



「あ――!! なんて事ダーリン……この国はもうお終いね!! 後に残っているのは国が老害が居なくなった途端滅ぶだけでしてよ!!」

「本当に、私たちは来なくとも良かったかも知れませんね」

「そ、そんな!! いいえ、必ず何とかして見せます!!」

「でも、肝心の国王は仕事を為さらないゴミムシみたいなものなのでしょう?」

「ゴミんん! 次に心臓発作が起きれば死ぬのが分かっているからこそ、安静にしているのですが」

「それ、本当に事実ですの?」

「それは……」

「わたくしの目を見て仰って? 本当に安静にしてまして? 事実を述べよ」



 そう王弟殿下に告げると、わたくしの目をジッと見つめた後……静かに首を横に振り、まさか安静にしていると思っていた面々は口に手を当てて驚いていますわね。

 これが――わたくしがしたかった三つ目ですわ。



「では、国王は今何をしているのか、ハッキリと口に為さい」

「それは……」

「それは? 手早くしてくれないかしら? 後ろで待っている方々の質問時間は刻一刻と減ってますわよ」

「お、王弟殿下!!」



 そう周りに焦らせ、苦渋の決断をさせると言うのも大事な一幕。

 暫し沈黙させたのち、そろそろ……と言う所でダーリンが口にしますわ。



「もしや、とは思いますが……陛下はベッドで安静にしていないと言う事ですか?」

「……はい」



 この一言に大きなざわめきが起きましたわ。

 それに付いてはわたくしが手をパンパンと鳴らして静かにさせ、王弟殿下の言葉を待ちますの。



「……毎日、側妃様と贅沢三昧をしておられます」

「贅沢三昧と言うと?」

「食べて飲んで酒を呷り……国民には食べ物を大事にしろと言いつつ、本人たちは食べ物を粗末にし、毎日面白可笑しく過ごしておられます……注意はしたのですが、国民の物を国王がどう使おうが勝手だろうと笑い飛ばしておりました」



 この言葉に招待されていた貴族及び、知らなった家臣も多いのか騒めき、大臣たちは顔を伏して目を閉じている。



「その様子だと、事実ですのね」

「はい……」

「もう良いですわ。この国にその国王がいる限り先は無いと判断しましたわ。他の方々の質問を聞きたかったですけれど、そんな国王がトップにいる間は質問に答える義理もありませんわね」



 これには今か今かと待っていた考古学者たちや歴史学者、その他の専門は目を丸くして何とかして欲しいと王弟殿下を見ましたが、溜息を吐いて首を横に振りましたわ。

 んふふ。

 いい出来具合でしてよ?



「三日後のパーティーには参加しますわ。けれど、それまでですわね。この国自体の衰退はその国王も随分と関係しているようですし、あなた方にはその国王がトップにいる限りは未来がありませんの……。わたくしの知識を与えたくとも、未来がない者達に与える知識はありません事よ」

「そ、そんな……」

「では我々はどうすれば」

「ああ、最後に王妃様にだけ会っておきますわ。今後どうしたいのかも聞きたい所ですし、他の皆さま方は解散して下さる? 無論質問は聞きませんわ。だって国王がそれではあなた方にも未来がありませんもの」



 この言葉に周囲は騒めき「何とかして欲しい」「何とかしてくれ」の声が切実に流れましたわね。

 此処までで四つ目。

 しっかり根付いた国の衰退、国王の腐敗は早々消えませんわよ?

 だって、美味しい餌が目の前にあったのに、国王の腐敗の所為で自分達には未来がないから何も教えないと、急に餌を取り上げられたんですもの。

 欲求は満たされず発狂寸前かしら?



「さ、王妃様の所に案内して下さる? ああ、その時は王弟殿下、貴方とわたくしのダーリンと護衛のヘロスだけでよろしくてよ」

「畏まりました」



 こうして、わたくしたちは王妃様の待つ執務室へと案内されて行ったのですわ。



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