終編
君との再開
「先生、お陰様で良くなりました。ありがとうございます」
「いえいえ、私に出来ることをやっただけですよ」
あれから、何だかんだで医者をやっている。
だがそれはあくまでも表向き。
裏では、白斗君の病気について研究していた。
どうやら、病気にかかって病気の発生まで2、3ヶ月の何もない、無自覚状態が続き、免疫力の低下、病気の重ね掛けの初期症状が現れ、それが段々と何年とかけ重くなっていく。
あの時、白斗君が風邪をひいてから、3ヶ月後に私はインフルエンザにかかった。
つまり、私にも病気はかかっている。
だから、研究員全員で急いでワクチンを作っている。
生きたいなど、そんな薄っぺらい想いなんかではない。貴重な実験台なのだから、逃す訳にもいかない。
研究員にもそう言い聞かせ、私は作りかけのワクチンを打ってはどんどんと体調の悪くなる一方だ。
「樺乃ちゃん。こっち来てちょうだい」
「雪賀谷さん」
もちろん、この研究員には白斗君のお母さん。雪賀谷さんも参加している。
「なんですか?」
「…研究の結果。あなた後長くないわよ」
「…そうですか」
「それだけ?」
「はい。別に私が死んだってだどうでも…」
「あなた、泣いてるわよ」
「えっ?」
鏡を見てみると、確かに涙を流していた。
「本当だー。人間って無自覚に涙を流すんですね。これをレポートにして出したら世はどんな反応するんでしょう?」
「そりゃそうだろって学者達に笑われるわよ」
「ですよねー」
世の中はそう簡単に甘くない。
そう知ったのはもう遅かったのかもしれない。
私はこれの数週間後、急に体調が悪くなった。
「大丈夫!?」
と研究員達に心配されたが、
「ワクチンを!」
と指示されアタフタとしながらもワクチンを打ってくれたので、大丈夫そうだ。
この病気の恐ろしい所はどんな病気にもかかってしまう事だ。
子供だけがかかるような病気、
異性にしかかからない病気、
植物だけにしかかからない病気、
歳、性別、種族、関係なく、病気にかかりやすくなること。
それ全てに対応出来るワクチンを作らなくてはいけないこと。
しかもワクチンの方がいいのか血清の方がいいのかを調べなくてはいけないこと。
問題が、山ずみだった。
そんな事から一時でも良いから離れたくて顔を、冷水で洗った。
数週間後…。
「先生!病状が!」
「分かってる!悪化しているんだろ!ゲホっ!ゴホ!グハァ!」
やばい、吐きそうだ。
白斗君はこのくらい大変な思いをしていたのか…。
なら、これ以上この想いを無くせるように!
何とか解決策を…!
「ワクチンはどうした!?」
「今、ワンチャン、全ての病気に対応出来るワクチンが作っています!」
「確実と言ええぇ!私はいいが、世に出回るとなるならワンチャンでは済まされないんだぞ!」
「確実です!保証します!た、ただ…」
「ただ…?なんだ、副作用だの、何だのあるのか?そんなのバッチこいだと…」
「違うんです!先生の最期まで間に合うかどうか…。分からないです!全ての病気に対応できる薬となると、かなりの時間を費やす事になりますから…」
「私が死んだ後だとしてもさせ!効果抜群だったら生き返ってやる」
「せ、先生〜 」
「泣くな!泣く暇のあるなら早く完成させろ!」
「は、はい!」
クソ…!結構強がっているが、辛い…。
私はそうして意識が無くなるように倒れた。
『ん…ここは?』
謎の白い空間。
『あぁ、私死んだんだな』
すると目の前に誰かが。
『…?えっ、は、白斗君!?』
『久しぶり』
『久しぶり。会えるとは…。つまり私もここまでということか』
『いや、まだ三途の川の一歩手前…。いや、片足を突っ込んでる状態だな』
『そうなんだ。じゃ、渡ろっと』
『おい待て 』
『なんでよ。私は早く白斗君の元に行きたい』
『お前…研究員の人とは随分対応違うな』
『まぁ、あれが素だからね』
『俺の前でその対応なのは…』
『好きだからだよ』
『…』
『あれ?白斗君?』
『改めて言われると恥ずかしいな』
『へぇ…』
『いやな顔だな…』
『まぁ、私はぁ?白斗君の痛みとか経験してるしぃ?実質運命の相手だったんじゃないかなぁって』
『お前の痛みはワクチンの副作用も相まってだ。あれより苦しくない。むしろ、よく生きてたな。お前、何歳だ?』
『むぅ…。女性に歳を聞くだなんて、失礼だよ』
『…オバサンが気にするような事だな』
『何か言ったぁ?』
『いや、なんでもない(早口)』
『あはは!こんな話も久しぶりだね』
『そうだな』
『ねぇ、ぎゅーしよ』
『…恥ずかしい』
『いいでしょ!最期のお願い!次は何億回先に会えるか分からないじゃん』
『お前、本当に科学者か?』
『そうだよ。そんな事より早く』
『分かったよ』
私は白斗君とハグをした。
『冷たいね。やっぱり幽霊だからかな?』
『そうだな』
そうして白斗君が離れようとすると、顔が近くにある事に気が付く。
私の視線は唇へと行く。
そうして、キスしようと
白斗君の顔へと近づける。
『ごめん』
白斗君はそうして私の事を突き飛ばす。
私は奈落の底へと行くように落ちていく。
『俺の分まで、生きていてくれ』
「白斗君!」
「せ、先生!ダメですよ!そんな急に起き上がったら!」
「あれ?」
目の前にはいつもの病室。ただ、いつもと違うのは私が寝ている側だということ。
「先生、1度心肺停止したんですよ!そこに、運良くワクチンが届いて…。刺してみたら起き上がって…」
と泣きながら説明してくれる研究員。
「てか、先生さっき砕けた喋り方だったような…」
「忘れろ」
「ひぃ!ごめんなさい!」
「樺乃…、白斗って」
「雪賀谷さん。出てきたんです。白斗君が。多分、戻してくれたんですよ」
「白斗はなんて?」
「俺の分まで生きてくれと」
「あの子が言いそうなことね」
「随分前から思っていたんですけど、その、白斗さんとやらは…何なんですか?」
「私の好きな人だ」
「ええ!?先生に好きな人!?」
「まぁ、今はもういないがな。それが私が研究している理由だ。分かったのなら、ワクチンをもっと安全に。そして、短時間で量産出来るようにしろ」
「は、はい。分かりました!」
そうして、私の作ったワクチンは、あの病気以外にも使われ、世界中に広まり今では、商品化もされている。
私は賞など貰い多額のお金を貰った。
だけど私は今の生活を止める気はなく、全て世界中の人々の為に貢献した。
仕事を定年退職した時も、年金が無いと生活が厳しい状態まで使ってしまった。
ただ、賞を取ったり世界中の人々にお金を使った事で他の人達よりも、年金が多かった。
ただ、必要最低限のお金を使い、余ったお金は貯金として、貯めて私が亡くなったら、夫も子もいないので、また、世界中の人々に渡そうと思う。
だが、白斗君がかけた呪いはとても恐ろしく私は100歳以上生きてしまった。
もう死んでしまったから気にしてはいない。
そんな事よりも白斗君がどこか探さないと。
もしかして、もう何かに転生したのではないか。
なら、私も白斗君にまた会える事を祈って次の生涯を送ろうではないか。
白くて透明でまだ純粋な君へ会いに。
まだ、色の無い君の生涯に私が虹色の生涯を送らせてあげよう。
例え、どんな形になっても。
植物だとしても、動物だとしても、
人間だとしても。
私が、好きだって伝えてあげる。
その時まで待っていてよ。
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