99. YES『Drama』(1980)

 プログレッシヴ・ロックの代表的バンドといえば、KING CRIMSONかPINK FLOYD、あるいはYESが定番でしょう。


 5thアルバム『Close To The Edge』(1972/邦題「危機」)はプログレ史に残る名盤中の名盤です。個人的にも不動のNo.1フェイバリット・アルバムであると、自信を持って断言します。


 その前作『Fragile』(1971/邦題「こわれもの」)もプログレ入門者にとって必聴盤です。アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』のエンディング曲として「Roundabout」がリバイバルヒットしたのは記憶に新しいところです。


 しかし、あえて注目度の低い(かつ筆者がお気に入りの)アルバムにスポットを当てるのが、このエッセイの意義でもあります。


 こちらは「Video Killed the Radio Star」(邦題「ラジオスターの悲劇」)で有名なTHE BUGGLESからTrevor Horn(Vo.)とGeoff Downes(Key.)が合流した、ディスコグラフィの中でも特異な立ち位置の10thアルバムをピックアップします。



◆YES『Drama』(1980)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/0HoF3Ir1IYbIkvrxXrLGOB?si=UbojhBouShiP2ODnaauKzg


 Jon Anderson(Vo.)とRick Wakeman(Key.)脱退により狂気度が不足していますが、絶妙なソングライティングはそれを補って余りあります。BUGGLESコンビの(相対的な)お行儀良さを活かした、教科書的な作風です。



☆「Into The Lens」


https://www.youtube.com/watch?v=qXhYsMEjsZ8


 B面冒頭。ニューウェイヴ風シンセやボコーダーの使用でポップ感を漂わせつつ、劇的な場面転換の多用はプログレ以外の何物でもなく。ここまで来ると、初聴でもAnderson不在への疑念は大方取り払われていることでしょう。



☆「Tempus Fugit」


https://www.youtube.com/watch?v=vzxZzIiO84Y


 ドライブ感あふれるラストナンバー。3分付近のスピーディなパートは痛快です。Steve Howe(Gt.)とChris Squire(Ba.)によるコーラスワークは間違いなくYESそのもの。実際「イエス!」って歌ってますし……(笑)。



【おまけ】


◆『Fly From Here: Return Trip』(2018)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/3FzEOaK1v879HU2YgQI6bx?si=AZrY3qRCTniolos0Lb98gg


 『Drama』から30数年、奇しくも同メンツでレコーディング・発表された『Fly From Here: Return Trip』は、同作に比肩する名盤でした。Hornプロデュースによる『Fly From Here』(2011)のリメイク盤でもあります。



◇「Fly from Here, Pt. I: We Can Fly」


https://www.youtube.com/watch?v=FKB29OEuf_w


 「危機」に代表される往年のYESを彷彿とさせるサウンドに、Hornの癖のないヴォーカルが加わり、より透明度が増した印象。Howe/Squireのユニゾン/インタープレイにも実家のような安心感を覚えること請け合いです。

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