72. 台湾メタル特集【メタル】CHTHONIC/CRESCENT LAMENT/BLOODY TYRANT

今回は特別編です。エクストリーム・メタルの攻撃性と、民族楽器や民謡メロディの情緒性が織り成す、台湾産メタルの魅力に迫ってみようと思います。


筆者選りすぐりの3組とも、台湾や日本の歴史に造詣が深く、豊かな知性がその作風にも色濃く反映されています。


まずは、押しも押されもせぬタイワニーズ・メタルの代表格CHTHONIC(閃靈)の出世作からお送りします。



◆CHTHONIC『Takasago Army』(2011)※下記リンクはシングル


https://open.spotify.com/intl-ja/album/7glfZgP5xm6Gmm6O13SKoH?si=dYYDgipGRTiV4P_IQiVVxA


今や代議士も務めるFreddy Lim(Vo.)を中心に結成されたベテランの代表作。公私ともにパートナーのDoris Yeh(Ba.)はそのヴィジュアルでも注目を集めます。本作は太平洋戦争の前後を台湾高砂たかさご族の視点から歌った叙事詩的なアルバムです。



☆「Takao」


https://www.youtube.com/watch?v=e_UkowmQs30


激しいバンドサウンドと民族調を見事に調和させた、オリエンタルメタルのお手本を全世界に示す名曲。台湾語で歌い上げるコーラスは勇猛かつ悲壮感に満ちており、歴史を同じくする日本人リスナーの心にも深く沁み入ります。




続いては、以前に別エッセイでも取り上げたCRESCENT LAMENT(恆月三途)です。



◆CRESCENT LAMENT『噤夢』(2020)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/5d4m01doYpeszqqNP5ICeO?si=pdo6btS5QumxtNO8GxY99Q


台湾語の女性ヴォーカルを軸に、ゴシック/シンフォニックの色合いも感じさせるフォークメタルです。二十世紀台湾での悲恋を綴ったこの3rdフルは、二胡や箏の音色をフィーチャーした叙情的な仕上がりとなっています。



☆「孤燈微微」


https://www.youtube.com/watch?v=TNqA6eHiLVc


曲冒頭からチャルメラの旋律が強烈な印象を刻み込む演歌メタル。切々と語り聞かせるようなMuer(Vo.)の歌声が胸に迫ります。全方位から泣きのメロディが押し寄せてくる感覚は、アルバムのクライマックスに相応しく圧巻です。




3組目は、近年成長いちじるしいBLOODY TYRANT(暴君)を紹介します。



◆BLOODY TYRANT『HAGAKURE II』(2023)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/3eZmNKfKE58MyoGaoaCb0G?si=L5_7iZ0HQXSgI-DsSukgfA


前作から大幅なメンバーチェンジを経て発表された4曲入りEP。攻撃性と叙情性が高レベルで両立する洗練された音楽性は、前2組の中間ぐらいのテイストと言えるでしょうか。全編を通して響き渡る琵琶ピパの音色が何より特徴的です。



☆「劍士皆亡 Kenshi Subete Heyru」


https://www.youtube.com/watch?v=MwpKZtPBIEQ


漫画『シグルイ』に影響を受けた無常かつ凄絶な世界観を、クリーン/グロウルの二刀流ヴォーカルが巧みに表現しています。郷愁をあお琵琶ピパの響き、フラッシーでエモーショナルなギターと、聴きどころしかない出色のナンバーです。



BLOODY TYRANTの2024年新作は次の機会に取り上げる予定です。

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