54. SOUL'd OUT【後編】『ALIVE』(2006)/『ATTITUDE』(2008)

前回に引き続いてのSOUL'd OUT特集、後半に参ります。


SOUL'd OUTの素晴らしさは、何と言ってもメンバー三人の才能が生み出す化学反応にあります。

ほぼ全楽曲を作編曲、豊かな曲想を如実にょじつに具象化するShinnosukeの貢献度については異論の余地はありません。SOUL'd OUTサウンドの要です。


個性的な声質と情緒ある歌心に優れたDiggy-MO'と、ヒューマンビートボックスとキレのあるラップで畳み掛けるBro.Hiとの対比は、互いの持ち味を引き立て合う位置関係にあります。

ロックやメタルに例えれば、メロディ派ギタリストと技巧派シュレッダーが並び立つ、ツインギターのような関係性です。


……というのは少々こじつけが過ぎるかもしれませんが、ヒップホップ以外のリスナーにも幅広く受け入れられるポテンシャルを秘めた、奥深い音楽性を持っていることに疑いはないでしょう。



◆SOUL'd OUT『ALIVE』(2006)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/6p8Hb9VQLTo1HyYkn4OHGd?si=Fi5SB-PqTJSq-5WIg9QruQ


3rdアルバム。それまでのヒップホップ・サウンドは維持しつつ、より普遍的なポップ/ロックのテイストを取り入れた歌モノへと近接しています。



☆「ALIVE」


https://www.youtube.com/watch?v=EiQlBiGet1s


強烈に耳に残る「ピョッピョッピョ」を含めての親しみやすさは、数あるシングル曲の中でも随一です。地に足のついた歌詞が優しく、力強く勇気付けてくれます。しんぜんの何たるかを自問するヒップホップなんて前代未聞です。



☆「TOKYO通信 ~Urbs Communication~」


https://www.youtube.com/watch?v=SO51jyCs3PA


情報過多におぼれないための心構えを説きつつしゃの利いた歌詞と、みつに作り込まれたトラックが絶妙にからみ合う出色しゅっしょくの出来映えです。合いの手のコーラスも相まって、とびきりファンキーに仕上がっています。




◆SOUL'd OUT『ATTITUDE』(2008)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/4fbM691lryWXTahy7rOB5E?si=dEKPFIT1SEyPIgxQLVMc3w


メンバー各自ソロ曲も収録の4th。次作はEDM方面へと大きくかじを切ることになりますので、おなじみのSOUL'd OUTサウンドとしては本作が集大成といった様相です。



☆「COZMIC TRAVEL」


https://www.youtube.com/watch?v=ZZIur_FcAOw


印象的な決めフレーズ=若草物語からの引用を始め、歌詞の端々に深い教養をうかがわせる、文学的かつ壮大な世界観が魅力です。緩急をつけた効果的なトラックメイキングによるドラマティックな演出もばっちりハマっています。



☆「Starlight Destiny」


https://www.youtube.com/watch?v=coH3lzoE3QE


ともするとクサい歌詞を、ごく自然体でさらっと歌ってみせるのが本当に格好良くて胸がじんと熱くなります。とりわけ強く響くのがサビの一節です。心地よい余韻にひたれるよう、プレイリストの最後に配置しておきたい名曲です。




特集はひとまずここまでです。

より沢山の音楽を経験してきた人にこそ分かる凄みが、SOUL'd OUTの楽曲には込められているように感じますし、含蓄がんちくのある歌詞もリスナーの見識が試されます。


その一方で、たとえ何も知らず聴いたとしても、格好良くて気持ちいい音楽であることに変わりはありません。

どのような聴き方も受け入れてくれる懐の深い音楽性こそSOUL'd OUT最大の魅力なのだと、今回振り返るに当たって再確認させられました。

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