53. SOUL'd OUT【前編】『SOUL'd OUT』(2003)/『To All Tha Dreamers』(2005)

今回から日本のヒップホップ・グループSOUL'd OUTを2回に分けて取り上げます。


(始めにお断りしておきますが、筆者は当時リアルタイムで聴いておりました)


門外漢の筆者からすると、ヒップホップ/ラップの文脈で語られているのを見かけない、不思議なグループという印象です。


一方で、2MC+1DJという形態がヒップホップに見えるだけで、実質的にはファンクに近いのではないかとも感じています。


洒脱でスペイシーな感覚もPファンクに通ずるところがありますし、幅のある音楽性の一端にはJAMIROQUAIやINCOGNITOといったアシッドジャズとも重なる部分が見て取れることもその理由です。


とはいえ、小難しいことを考えずとも、聴いているだけで気持ちのいい音楽であるという一点こそが最も重要です。



◆SOUL'd OUT『SOUL'd OUT』(2003)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/4OPFFTMtuxRCnwC1yyIUzV?si=OK9MkWmPSMiVLsu5pqAt-w


まずは順に1stアルバムから。すでにこの時点で、他にテイストの似たアーティストが思い当たらない、唯一無二の独創性が打ち出されています。



☆「ウェカピポ」


https://www.youtube.com/watch?v=2IZbzRj3CJk


彼らの代名詞でもあるデビューシングル。キャッチーなフロウとファンキーなトラックの相乗効果が心地良く。字面通り人々への奮起を促す激励と捉えるなら、サビ前の一節がBob Marleyを彷彿ほうふつとさせるのも気のせいではないはずです。



☆「Dream Drive」


https://www.youtube.com/watch?v=1riYj3DXxmY


爽やかな夏風を感じさせる軽快なナンバー。陽気な人生讃歌の中にも、どこかしみじみとしたおもむきが漂っていて味わい深いです。20年経った今はノスタルジーも加わって、より一層切なさがき立てられます。




◆SOUL'd OUT『To All Tha Dreamers』(2005)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/3TMAEqi4cwPuu9yTMcNMve?si=fTw42QaYQoWo9Ph-s42sxw


2nd。幕間を挟みつつ進行するアルバム構成を前作よりも推し進めつつ、曲調もさらなる多様性を獲得。正当な進化ぶりを見せています。



☆「1,000,000 MONSTERS ATTACK」


https://www.youtube.com/watch?v=X_TF2U-cDrc


イントロ&アウトロで連呼されるDiggy-MO'の掛け声(鳴き声?)みたいなのが歌詞に含まれていることに驚きを隠せません。一方で、言葉遊びの中に忍ばせた確固たる哲学には尊敬の念を覚えます。



☆「To All Tha Dreamers」


https://www.youtube.com/watch?v=9M6AtfXf6rI


夢を諦めず歩み続ける全ての人へ贈る、ダンサブルでエモーショナルな応援歌です。どの曲でも鍵盤類がツボを熟知した心憎い仕事をしていますが、この曲ではピアノソロすら飛び出しています。




彼らの楽曲を紐解いていくと、自分らしくあろうとする人の心を鼓舞したり、日々を懸命に生きる人々へ寄り添ったりと、ポジティブな内容が多いことに気付かされます。


反面、多くのラッパーがするようなディスりや、露骨なスラングでワルを気取ったりといった態度は全くうかがえません。


自分たちの音楽そのものに対し真摯に向き合い、独自の美学を貫く揺るぎないスタンスが、ヒップホップに馴染みのないリスナーにも訴求し、現在でも人気を博しているのだと思われます。



以降、後編へと続きます。

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