29. SNOW『12 Inches Of Snow』(1993)

ロック音楽を中心にお送りしてきました当エッセイですが、今回はガラリと角度を変えてお届けします。どうか驚かないでくださいね。


さて、1990年代といえば、オルタナティヴ・ロックの隆盛がいちじるしい一方で、ヒップホップやR&Bといったブラックミュージックが、本格的にチャートをにぎわせ始めた頃でもあります。


ジャマイカからはダンスホール・レゲエのアーティストたちが次々と全米進出を果たし、ムーブメントに彩りを添えます。この流れに、実はカナダからの追い風も働いていたことを、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。



◆SNOW『12 Inches Of Snow』(1993)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/6bNWz7bHK8M0xPfAPmFSRW?si=KmytA8kDTD-RIBxBDjp4dg


本国カナダやアメリカを始め、当時多くの国々で大ヒットを記録したラガヒップホップ・アルバムです。特にビルボードNo.1にも輝いたシングル曲「Informer」は、ジャンルの垣根を越えて人気を博しました。



★Snow - Informer (Official Music Video) [4K Remaster]


https://www.youtube.com/watch?v=TSffz_bl6zo


リズミカルにまくし立てられるジャマイカン・パトワ(なまり)の語り手は、トロントのジャマイカ人コミュニティで育った白人ディージェイSnowです。


歌詞の内容は、でっち上げの密告で誤認逮捕された経験をつづったものですが、日本のリスナーには「兄貴ボンボンだ!」の空耳でおなじみかもしれません。キャッチーな節回しは一度聴いたら忘れられないほどに印象的です。



◇「Champion Sound」


https://www.youtube.com/watch?v=kFRP7HMqNIQ


アルバムの中でもヒップホップ感の強めなトラックです。こちらも某・空耳アワーに取り上げられた曲だったりしますが、少々お下品な内容ゆえ、調べるのは自己責任でお願いします(筆者は爆笑しました)。



◇「Girl I've Been Hurt」


https://www.youtube.com/watch?v=lvFZlJ2LJOg


セツナ系ラガR&B。恋人との不和を歌った英語の歌詞もそう難しくはないので、共感はしやすいはずです。こうして聴くとSnowは今で言うシングジェイ(歌手とディージェイ≒ラッパーの二刀流)スタイルを初期から確立していますね。



2ndアルバム以降は、サウンドも徐々にレゲエ色が濃くなっていきます。これはSnow自身がそれまで未踏だったジャマイカ本土を実際に訪れた経験も関係しているのだと思います。


ちなみに日本限定リリースの4th『Cooler Conditions』収録曲「Hard Life」には、米国のプログレッシヴ・ロック・バンドKANSASの代表曲「Dust In The Wind」のサビが大々的に引用されています。以上、豆知識でした。



【おまけ】


「Informer」は四半世紀を経て、プエルトリコ出身のレゲトン・アーティストDADDY YANKEEに「Con Calma」としてカヴァーされました。同曲およびMVには何と、Snow自ら客演までしています。


★Daddy Yankee & Snow - Con Calma (Video Oficial)


https://www.youtube.com/watch?v=DiItGE3eAyQ


https://open.spotify.com/intl-ja/album/1otwHKoQ5KPaiekpYk4tWh?si=jsKNS8VGQHOPCW21UMgLfg


どんなジャンルであれ、名曲というのは容易く時を越えるものなのですね。

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