第25話 魔法の会得?
朝になり、宿屋の前でカサネと合流してから近くの食堂で今後のことについて話すことにした。
「カサネはどこに向かう予定だったんだ?」
「特に目的があるわけではないのですが、王都は一度見に行こうと思っていました。ここからそう遠くないらしいですし」
王都か。一日経っているしミア達と襲撃者の件も落ち着いているだろうか?
俺達も特に目的はなかったし、危険がなさそうなら向かっても良いかもな。
「王都か、俺も行ったことがないからちょうどいいかもな。念のため冒険者ギルドや商業ギルドで情報収集して問題なさそうなら向かおうか」
「そうしましょう。そういえば昨日宿の人から聞いたんですが、街の北の方で黄金竜が出たらしいですよ。知ってました?」
「あ~うん。一応。その話についてもついでに聞いてみようか」
あまりその話を信じていない俺は微妙な反応しか返せなかった。
カサネはその様子を不思議そうに見てきたがここで話すようなことでもないので、適当に別の話題を振って流すことにした。
食事を終えてまずは冒険者ギルドに向かう。
受付で王都方面の動向を伺うとやはりミア達と襲撃者の衝突があったらしい。
「なんだか高貴な方がお忍びの旅から戻る途中だったらしくて、そこに盗賊一味が襲撃を仕掛けて結構な大捕り物になったらしいですよ」
「高貴な方達の方は無事だったんですか?」
「さぁ?詳しいことまでは。盗賊側はほとんどが捕まったらしいので、護衛をしていた人達が倒したのではないかと思いますが」
「なるほど。ありがとうございました」
それだけ聞いて受付から離れる。
「なんだか大変なことが起きていたようですね。気にされてい様ですが、もしかしてお知り合いだったりするんですか?」
「うん。ちょっとね。あとで話すよ」
そう言って、今度は商業ギルドの方へ向かった。
受付で黄金竜のことについて聞いてみる。
「あ~黄金竜ですか。あれはやっぱりデマだったみたいですよ。調査したところこの街も含めて近辺の村や町でも黄金竜を見た人は居なかったらしいです。いったいどこからそんな情報が流れたのやら。人騒がせな話ですよね」
やはり、どちらかが南側から人を遠ざけるために流した噂だったらしい。
受付の人の話に適当に相槌を打って、礼を言ってからギルドを出た。
「黄金竜の噂、偽情報だったんですね。見たことがないから見てみたかったんですが、残念です」
「仮に本当だったとしても竜を見るにはどこに向かったかを追跡しないといけないし、なかなか難しいんじゃないかな」
「確かにそれはそうですね。でも、この近辺に住んでるかもっていうだけでも夢は持てるじゃないですか」
「夢かぁ。俺も見れるなら見てみたいとは思うけど、竜なんて絶対ヤバそうだからなぁ」
冒険者ギルドでも竜の討伐依頼なんて全く見かけなかったし。この世界では希少な存在なんだろう。
「カサネさんは普通の竜はみたことあるのか?」
「いいえ。大陸の方でも竜はほぼ見ませんね。山峰近くの村では偶に山に住み着いた竜の討伐依頼が出たりするらしいですが、Aクラス以上のパーティじゃないと達成は難しいらしいです」
「やっぱり強いんだ。できれば今後も遭遇しない様に願いたいな」
「意外とアキツグさんなら話し合いで解決できるかもしれませんよ?」
「どうだろう。竜が取引に応じてくれるとは考えにくいけどなぁ。ともあれ、必要な情報は得られた。街の南側も今は落ち着いているらしいし、予定通り王都へ向かおうか」
「えぇ。この街の魔道具店もなかなか興味深かったですが、王都がどんなところか楽しみです」
そういえば、途中ロンディさんへの挨拶も兼ねて魔道具店に寄ったのだが、そこではカサネさんがいくつか魔道具を購入していたようだった。
「魔道具って魔力の補充に結構魔力が必要みたいだけど、カサネさんは魔力高い方なの?」
「あれ?言ってませんでした?私、魔導士なんですよ」
言われてみると彼女の格好は魔導士っぽい。今は杖を持っていないが、森で会った時は右手に杖のようなものを持っていた気がする。
「あぁ、ごめん。今まで護衛して貰ったのが剣士とか斥候の様な人達だったから、カサネさんもてっきり同じようなタイプだと思い込んでいたよ」
「いえいえ。小規模の護衛の場合は近接職の方が多いみたいですからね。勘違いしてもしょうがないと思います」
そんな話をしながら南の検問を通って街を出る。
しばらく行くと、道の先に何かの焦げ跡や周囲の草木が荒らされている一帯が見えた。近くには何かを調査しているような人達の姿も見える。恐らくあそこが戦闘のあった場所なのだろう。
邪魔をしない様に少し避けてそばを通り抜ける。
「あの様子だと結構な人数同士での戦闘があったみたいですね」
「そういうの分かるんだ?」
「えぇ、戦闘のあった場所の広さとか傷のつき方とかでなんとなくですけどね」
その時、横になっていたロシェがすっと立ち上がった。
『何か近づいてくるわ。野生動物かしら、2,3匹だと思うけど気を付けて』
「分かった。カサネさん野生動物か何かが2,3匹近づいているらしいです」
「えぇ。ここは私に任せて下さい」
そういうとカサネさんはポーチの様なものから杖を取り出し、近づいてきた動物たちに構えた。
「アイシクルアロ-」
その声に反応して杖の先から数本の氷の矢が生み出され、放たれた矢は正確に動物たちを貫いた。
「おぉ、すごい!」
「?・・・」
何だろう?何だかカサネさんの様子がおかしい。矢を放った姿勢のまま困惑したように固まっている。
「あのアキツグさん・・・・どうしましょう?」
「え?何がですか?」
「えっと、その魔法の交換に同意しますかって聞かれているんですが」
「えっ?」
慌ててスキルを確認してみると、スキルレベルが上がっていた。
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スキル:わらしべ超者Lv5
(解放条件:特定条件下で相手が交換に同意する)
自分の持ち物と相手の持ち物を交換してもらうことができる。
自分の持ち物と各種サービスを交換してもらうことができる。
手持ちの商品を望む人に出会える。
条件を満たした相手と知識を交換できる。ただし相手からその知識は失われない。
※相手が同意したもののみが対象となる。
条件を満たした相手と魔法を交換できる。相手が交換に同意した場合、相応の代価を交換材料として交渉できる。
交換レートはスキルレベルと相手の需要と好感度により変動する。
スキル効果により金銭での取引、交換はできない。
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「スキルレベルが上がってる。魔法が交換できるようになっている?」
「ま、魔法を交換できるって、聞いたことないですよ!?これ、同意したらどうなるんですか?」
「ちょっと待ってくれ・・・えっと、知識と違って相手から失われないって記載がない。てことは交換したらカサネさんからは失われるのか?」
「えぇ!?それは困ります。申し訳ないですが拒否していいですか?」
「あぁ、それはもちろん。魔法の交換にどんな対価が必要なのかも分からないし、カサネさんを困らせる気もないから」
「それでは拒否っと。あ~びっくりしました」
「俺もだよ。まったく、俺の許可もなく相手にいきなり同意確認するのは何とかならないのかな」
「う~ん。それなんですけど、もしかしてアキツグさんのスキルを部分的にでも知っているとか、アキツグさんを一定以上信用しているとかが条件に含まれているんじゃないでしょうか?見知らぬ人にいきなりそんな取引持ちかけても断られるに決まってますし」
「スキル情報と信用か。そういえば、好感度って今までよく分かってなかったけど、信用とかに関わってそうな気はするな。スキルにも条件を満たした相手って記載されているし」
「でも、凄いですね。人と魔法を交換できるなんて。魔導士の私からしたら喉から手が出そうなほど欲しいスキルですよ」
「確かにすごいんだろうけど、これ使えるのかな?さっきカサネさんが困ったみたいに魔法ってその人にとって大事な能力の一つだろ?よほどのことがないと手放したりしないと思うんだけど」
「うっ!それは確かに。すごく可能性はあるのに勿体ないスキルって感じですね。。」
「まぁ、必要としていないのに持っているっていう人ももしかしたらいるかもしれないし、あって困るものじゃないからレベルが上がっただけ良かったと思っておくか」
そのあと、何だか微妙に喜べない気持ちのまま、カサネさんと倒した動物たちの素材回収を回収した。
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