第7話 姉妹とゴドー

「本当に…本当に助かりました」


「あたしたちを助けてくれてありがとうです、その…お兄さん? 」


「ああ、えっと後藤だ、俺の事は後藤と呼んでくれ」


 深々と頭を下げる少女たち相手に、なんと自己紹介すべきか迷い咄嗟に口を突いて出た言葉は本名の後藤だった。


「まあ! ”ゴドー”様。 あなたがゴドー様なのですね! 」


「えっ? 」


「やっぱりそうだったんだレイナお姉ちゃんっ、狩人さんは無事だったんだよ! 」


「いや、俺の名前は後藤―― 


「はい、存じております。 狩人協会からカカオコ村に派遣されてきた狩人のゴドー様ですよね」


「あたしたち、ゴドーさんが乗ってきた飛空艇が墜落したって聞いて二人で村を飛び出してきたんだっ」


「ええ、ですがまさかそのゴドー様に私たちの方が助けられることになるなんて」


「えへへ、ほんとビックリだよね。 って、いけない! お父さんたちも心配してるだろうし早く村に戻らなきゃ」


「そうですね、あまり時間が経つとまたお父様が無茶をしでかすかもしれませんし」


「ほら、いこっゴドーさん」


「お、おう…。 と、そうだ。 怪我をしていたようだが、もう歩けるのか? 」


「うん! まだちょっと痛むけど、大丈夫そうだよっ」


「ナナポは昔から頑丈ですからね」


「えへへっ」


「そ、そうか」





 ◇◆◇






「~~♪ 」


「ほらナナポ、よそ見してると転びますよ」


「はーい、分かってますよーだ」


「まったく…」


「……」


(どうなってやがる? )


 何度か言い直してみたものの、彼女たちは俺の名前をゴドーとして認識し。


 狩人協会からカカオコ村に近々派遣される事になっていた狩人のゴドーだと思い込んでいるようだ。


(正直、言葉が通じないかもしれないって不安もあったから会話が成り立っただけでもありがてえってもんだが)


 狩人協会に所属する狩人としての記憶も、ゴドーという一人の男として生きてきた記憶も。


 何一つ持ち合わせていない今の俺が果たしてこのまま狩人のゴドーを名乗っていいものなのか。


「ゴドーおにいさーん! 」


「こちらです、村まで私たちが案内しますからついてきて下さいね」


「おう! 了解だ」


(ってごちゃごちゃ考えててもどうにもならねえか。 今はとりあえずこの流れに身を任せよう)

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