淡雪

第1話世界(ハコ)

“この世界は一種の箱のようなものだ”


 少女は、最近そんなたわいないコトに気付く。


 いつからだろうか?


 自分の回りが偽物のように感じたのは。


 「ああ、確か……」


 少女は、何かを思い出すかのように、今にも消えそうな声を発する。


 「不意に、知らない人に話しかけられたの」


 記憶の欠片が一つまた一つと浮かび上がったが、その刹那再び暗闇へと落ちていった。


 それはまるで“今必要ではないものだ”と言われているようで。


 彼女にとっては“必要なもの”でも、その者にとっては“要らないもの”に違いない。


 それを強制するのは如何なものかと少女は思ったのだが、男とも女ともとれない声に耳を傾けざるを得なかった。


 その者は彼女の“誰?”という問いかけに“神”と答える。


 今の世界はある種転換期に入っているらしく、人の意識が変わらない限り、破滅の道を歩むのだという。


 他者を評価し、自分自身を評価し、落ち込み、時には蹴落とし……


 そんな所謂イワユル負の感情よって“他者”と“自分”を分ける“分離”をすることが、今までのこの世界のやり方だった。


 しかし、時代は時をかけて変わっており、今は他者も自分も認め、受け入れなければならないのだという。


「そう……言われても……」


 少女は得体の知れぬ声に抵抗してみるも、身動きがとれないことも感じていて……


 “明るい未来を選びたくば、箱に閉じ籠らず飛び出せ”

「……」

"このままでいいのなら、閉じ籠れ”

「急に選択を迫られても」


 少女の中のもう一人の自分エゴが騒ぎ出す。


”真のキミは何と言っているのか?”

「真の心……」

“本当の世界には、過去も未来もなく、あるのは今のみ”

「……今だけしかない」

“ならば、必然とそうなるであろう”


 そう告げたその声は、少女のモトを去ったのだろう。


 問いかけても返事はない。


 ただ、少女の勘が“自分が変われば、他者も変わる”と訴えているように感じたのは確かだ。


 “これが真の自信なのか”と悟った少女は、気持ちを落ち着かせるかのように、深呼吸をしてみる。


「私は……」


 少女がどちらを選んだのかは、神のみぞ知るということだろう。


お仕舞い


令和6(2024)年3日8日~10日7:40作成

 






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淡雪 @AwaYuKI193RY

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