僕のデザイン、乗っ取らないで!
根本鈴子
このデザインは僕のもの!
1話 僕のデザインは僕のもの
僕のデザインは僕のもの。なのに誰かが僕のデザインを乗っ取る。
僕のデザインするものは、広告なんかが主だけど、本当は違う。僕自身こそが僕のデザインした作品だ。
でも、こんなことを言ったところでわからない人の方が多いし、僕だってデザインする側としては正直訳が分からないとさえ思う。
そんなこと、デザインする側が言ってはいけないのだけれど。何せデザインはアートと違って全てに意味があり、その効果は計算されたものでなければならない。偶然はあってはならないというのが、僕の恩師の言葉だからだ。その通り、デザインされたものはその意図から込められた意味まで全て計算しなくてはならない。それを見た人がどう動くのかさえも、計算して。
そもそもにおいて、デザインとアートの違いとは何か。簡単に言ってしまえばデザインは誰かのためのもので、誰かがこうしてほしいという目的を達成するものを作る。アートは自分の表現したいことを表現して、好きに値段をつけられる。
普段、僕がしているのはデザイン。でも、昔からやりたかったのはアートだった。
元々絵が好きで、それこそ幼稚園の頃からずっと絵を描き続けてきた。でも、まず最初の難関、画家かイラストレーターか漫画家かというところで、僕は画家を目指した。しかし、僕は何故だかその時違和感を持っていた。幼いながらも、自分の気持ちに嘘が混じっていることに気づいていたのだ。
その後、素晴らしい漫画家達による漫画の影響を受け、漫画家になると方向転換。でも僕は、漫画が描けず、イラストレーターになるとさらに方向転換。馬鹿みたいに、コロコロと進路を変えて……。
小学六年生の時、中学受験をした。努力して、美術デザイン科がある中学への進学が決まった。でも、僕はその頃の記憶が曖昧だ。
だって、その頃、僕は一回だけ自殺騒動を起こしている。でも僕は知らない。何故だかわからないけれど。
それから両親は腫れものを扱うかのように僕に接していたような気がする。
僕はその騒動があってから、登校拒否をした。理由はよくわからない。なんか、気づいたらそうなっていたし、覚えていない。
都合よく生きているのか、悪い部分は覚えていないのが、僕のいいところかもしれない。
まあ、そんな風に生きてきた。でも、そのせいか、今は都合よく生きられない。
気づけばデザイナーという道に進み、平凡な会社員をしている。
そんな僕という存在さえもデザインだと僕は思っている。そうだとしたら、誰がそのデザインを作っているのか。
神様? 親? 教師?
いや、違う。僕は、僕がデザインした唯一の存在。
そう考えている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます