第6話 復讐

 ボコボコに殴られている彼女の元カレが1人、殴った彼氏が1人、それを目撃した彼女が1人。


 傍から見たら、完全に修羅場だった。


「こいつがストーカーして、陽姉を奪うって言ったからそれをさせないようにした」

「えっ……その、大丈夫なの?」

「うん、ちょっと痛めつけたくらいだから」

「それならいいけど……ってか、空?」

「よっ、陽奈、久しぶり」

「だっ、大丈夫なの?」

「陽姉、その男に触らないで!!」

「えっ」

「そいつ、陽姉のことずっとつけてたストーカーだよ?危ないって」

「そ、そっか。でも、」

「でもって、このストーカーのこと庇うの?」

「い、いや、なんでもない。行こっか」

「うん」


 ストーカーの正体を突き止め、俺たちはデートに戻った。


 その場には、ボロボロになった青木と粉々になった恋敵狩り権が残されていた。


 ◇


 念願の、あのテーマパークに俺たちは来ていた。


 あの時行けなかった思い出を取り戻しに。


 まず、国内最大級の温水プールに行くことにした。


「でっかいウォータースライダー!!!!」

「何メートルあるんだこれ!!」

 長さ何メートルか分からない超巨大スライダーを体験した後、波のプールや流れるプールに行った。


「波のプールも流れるプールもでかい!」

「人も多いなあ」

「やっぱり、ここはプール人気すごいねー」

「ここは、ナイトプールエリアらしいね」「ナイトプールもする?」

「いやーさすがに、アトラクション行きたいかな」

 陽姉はそう答えた。

「OK」

 次はアトラクションに向かうことにした。


 ◇


 俺たちは、敵の的を銃で撃ちまくるアトラクションに乗った。


「凄い普通に乗ってるだけでも楽しい!」

「コースターとしても爽快感あるね!!」

「でも、メインは銃で撃つことだからね」

「点数競う?」

「うん。やろ!」

 煌々と光るアトラクションのキャラクターの的に俺と陽姉は狙いを定めがら、銃を構え、撃ちまくっていた。


 そして、アトラクションは終わった。

「どうだった?」

「37650だったよ。陽姉は?」

「私は、42000くらい。私の勝ちだね」

「うわぁーまじかァ、悔しい」

「へへ、私にいいとこ見せたかった?」

「うん。見せたかった」

「じゃあ、も1回やる?」

「お、いいの?」

「望むところだよ。普通に楽しかったからもう一回やってみたいし」

「今度は負けないぞ」


 俺たちはもう一度、そのアトラクションに乗ることになった。


 2回目なので、初見と違い、的の動きやどの的が点数が高いかなどを知った状態で挑める。明らかにさっきより的を銃で捉える回数が多くなっていて、手応えがあった。


「よし、、じゃあ何点か発表ね」

「俺は、56850点」

「私は54650点」

「よし!勝った!」

「うわぁー負けた〜」

「ちょっとはいいとこ見せれたかな」

「ふふ、別に光は普段からいいところだらけだよ」

 陽姉はサラッとそう言ってのけた。

 その言葉に俺はドキッとした。

「でも、すごいねこれ、125000点が最高らしいよ」

「全弾命中したらでしょ?それはヤバすぎる」

「ラスボスの的とか速すぎるし、方向予測できない動きするもんね」

「そうそう!」

 俺たちは、あの頃のように子供のように笑いあった。


 ◇


 アトラクションも様々な種類を乗った後、陽姉はお腹がすいたらしく、売店でお菓子を買うことにした。


 チュロスと、色んな味の入った豆型のグミを買った。


 そしてそれを食べ歩くことにした。


「それ、めっちゃ不味い味入ってない?」

「あーこの色々フレーバーグミ?うん。ドロ味とかゴミ味とか結構やばめなの入ってる」

  「よくそんなの食べれるなぁ」

「いやいや!このスリルが楽しいんじゃん!美味しいやつは美味しいし、食べてみ?もちろんランダムで見ないで取ってね」

「じゃ、じゃあ1個だけ」

 俺が取ったのは黄色いグミだった。


 レモン味か?それともバナナ味?パイナップル味という説もあるか?


「あーそれ、Pー」


「うげえええええええ、、そ、それ以上はいけない。うぷっ、、」


 俺は、即座にP味グミをティッシュに吐き出した。鼻や口から刺激の強い匂いが俺を苦しめていた。


「あはは、はいはいチュロスで口直し口直し」

 でもまた、こういう刺激も、いい思い出として残るからありだなと思った。


 その瞬間だった。


 事件は一瞬のあいだに起こった。


 ひとつの黒い影が、陽姉目掛けて走り出した。


 俺はそれを庇い、脇腹にナイフが刺さった。


 熱い。腹が波打つようにドクドクいっている。


「きゃああああああああああああああ」


 陽姉が、叫び声を上げると、周りにいた大人達が協力し、黒いフードの男を、取り押さえていた。


 俺は薄れゆく視界の中、そいつの顔を覗き見た。


 お前は、、、、!


 その顔は、復讐に狂い、歪んでいた。


 俺はその歪んだ狂気の顔を見上げながら、意識が混濁し、そして、気を失った。

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