6「絵具」

また、夢に令子が、芽衣の手を早速取り、話しかけた。


「今日は、何の話をしようか?」


お題を決めて話をする。

令子との話は、とても面白い。

中でも月の話をする令子は、とても楽しそうだ。


「月って、裏側、結構ボコボコなんだよ。」

「そうなの?どうして?」

「地球に落ちて来る隕石を守っているの。」

「えっ、本当に?痛くないのかな?」

「痛いと思うよ。でも、月は地球と一緒にいるから、仕方ないね。」

「なら、月があることに感謝をしないとね。」


芽衣は、上を向いて、手を合わせた。


「ありがたやーありがたやー。」


その言い方に令子は、笑った。


「何、その言い方。」

「周りの大人がやっているから、もし、月の中に都市があって、住んでいる人がいたら、隕石が衝突する度に大変そうね。だって、家だったら屋根に隕石が衝突するんでしょ?私だったら、怖いと思うわ。」

「そうね。でも、月って、思ったよりも丈夫だから、安心していいよ。」

「そうなの?」

「うん。この地球で言うと、竹みたいに丈夫だよ。」


竹と聞いて、芽衣は、少しだけ寒気があった。


「芽衣ちゃん、大丈夫?」

「えっ、うん、大丈夫、少し寒気がしただけだから、エアコン消して寝たと思うんだけど、つけっぱなしだったかな?」

「風邪曳かないように、気を付けてね。」

「ありがとう。」


また、音が鳴っている。

この音は、朝を告げるスマートフォンのアラーム機能が発してくれる音だ。

音が鳴ると、意識が現実へと戻される。


現実になると、やはりエアコンがついていた。

消したはずだったのだが、親に甘えた反動で隙ができたみたいだ。

心に引き締めなくてはと思った瞬間、少し身体が火照っているのを感じた。


スマートフォンの操作をして、父と母に「おはよう」だけメッセージを送ると、洗面

台の上にある収納棚から、救急箱を取り出し、熱を測った。

熱は、三十七度で、微熱だ。

救急箱の中にある葛根湯を、朝ごはんの前に飲んだ。


今日は、ラジオ体操は行くのを辞めて、朝ごはんを作った。

炊飯器の中にあるご飯を確認すると、丁度、一人分があった。

冷蔵庫の中から卵を取り出し、鍋にだし汁を入れて沸騰させてから、ご飯を入れて少し煮立て、卵を溶いて円を書くように入れる。

雑炊が出来た。


雑炊を食べ終わると、鍋とレンゲを洗い、冷蔵庫の中からペットボトル状のスポーツ飲料を持って、部屋へと行く。

その時に、フェルメールとメーヘレンが、異変に気付いた。


ラジオ体操に行っていない。


「芽衣、体調悪いのか?」


メーヘレンが声をかけると。


「微熱だから、大丈夫。薬飲んだし、食事も摂れたからね。午前中は、寝ているよ。午後から美術がんばるから、教えてね。」


芽衣は、スポーツドリンクをゆっくり二、三口飲むと、ベッドへ入り、横になる。

横になると、意識が飛んで、また、夢に入った。


すると、また、令子にあった。


「え?まだ、夜じゃないよね?風邪、やっぱり曳いていた?」


芽衣は、素直に風邪を曳いていたと言うと、令子は芽衣の手を取り、自分の胸に抱きしめた。

そして、頭をゆっくり撫でると、落ち着いて来た。

夢の中でも眠った。


深く。


深く。


眠っていく。

すると、自分の中に月があるのを感じた。


瞬間、一気に目を覚ました。


目の前には、二人の男性がいたと思った。

けど、それは感覚であり、目をこすって、もう一度見ると、自分の部屋だ。


「私……。」


どこかで音が聞こえる。

それは、スマートフォンだった。

表示は、父だった。


「はい。」

「芽衣、大丈夫?」

「え?」

「だって、今の時間、いつもならおやすみなさいってメッセージ来るから、心配で。」


一度、スマートフォンを耳から離して時間を確認すると、20時となっていた。


芽衣を起こしたのは、スマートフォンの音がしていて、フェルメールとメーヘレンが声を掛け続けてくれたのだ。


「うん。風邪曳いてたみたいで、朝、薬飲んで寝ていたの。時間、すごい経っているね。」

「風邪!今から、俺、帰ろうか?」

「大丈夫だと思うけど……、来てくれるとありがたいな。」


大丈夫って言いそうになったが、ふと、ヘアピンが目に映ったからだ。

だから、少し、甘えた。

すると、裏で愛と保は会話をしていて、保が行くことになった。


「今から向かうからな。」


それから、保が来てくれて、色々と話をしてくれて、料理も作ってくれた。

愛は、研究で手が離せなかった。


「芽衣、明日の朝、また、仕事にいかなくてはならないんだ。それまで、自分の部屋にいるから、何かあったらスマフォを鳴らしてくれ。」

「うん、来てくれてありがとう。」


次の日になって、保が芽衣の熱を体温計で測ると、三十六度五分になっていた。

下がってホッとした。


「お父さん、今から仕事でしょ?」

「うん。本当に大丈夫?」

「大丈夫。お父さんこそ、私の風邪移ってない?」

「移ってないよ。まだ、大変なら、ゆっくりと寝てろ。電話、一回、夜、するから。」

「うん。ありがとう。」


保を玄関で見送ると、施錠して、部屋へ行く。

保がいたから、言葉を発しなかったフェルメールとメーヘレンは、芽衣の様子を訊いた。

芽衣は、すっかり、体調を良くしていた。


「心配かけてしまったわ。フェルメールさん、メーヘレンさん。」

「いいんだよ。無理しないように。」

「今日は、ゆっくりしよう。」


すると、芽衣は、微笑み、早速、朝食を食べて、昨日の遅れを取り戻すかのように宿題をスピード上げて終わらせた。


今回、終わらせた宿題は、世界の国と首都の場所を書き込むプリントと、理科の小学生の時に習った理科で使用する道具の使い方と注意点のおさらいプリント、好きな花の特徴や色などの説明を調べて書く。


あと、数学と英語が残っているだけである。

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