2「命令」
一方、ここは、魂を管理する場所。
魂は生前の姿で、天国と地獄を体験した後に、訪れ、転生を待つ。
管理者の姿は、膝位の赤と黒の格子が入ったプリーツスカートに、黒のカッターシャツを着て、首にはスカートと同じ柄のリボンをし、白色のカーディガンを着て、ルーズソックスにローファーを履いていた。
髪は、膝まであり、緩めのウエーブをした白色で、赤のカチューシャをしている。
顔を見ると、幼くも見えるし、大人にも見える。
そんな管理人は、美術品が好きで、自分の周りには色々な美術品が並べている。
絵画、骨董、漫画、アニメ、浮世絵、ロボット等を眺めてはウットリしていた。
生前、美術品を作成する仕事をしていた人に、仕事場と望む道具を渡して、転生が決まるまで、作成させて、その作品を自分の部屋に飾っていた。
その為、現世の美術品を作成する道具にも詳しくなり、3Dプリンターがお気に入りである。
今は、漫画家や小説家が物語を作成し、アニメーターが動きを作り、声優が声を当て、楽器製作者が楽器を作り、その楽器で演奏する作曲家が音を作ったアニメを、電気工学科の人が作った教室の黒板位あるテレビに、アニメが再生できる機械も作って貰い、映して、自分の自室で家具職人が作ったフワフワでありながら身体に合っているソファーに座って見ながら、鍛冶屋が刃物とフライパンを作り、その刃物で切った肉を料理人がフライパンで料理し、農家の人が育てた野菜や果物、それに香辛料もフルで使った料理を、家具職人が作った移動が出来て収納も簡単に出来るソファーの高さにピッタリの机に置いて食べていた。
着ている服も、デザイナーの人が「是非、着て見てください。」というので、着ているし、この現場に配属された時の服装以外は、全てデザイナーの人が作ってくれた物で、家具職人が作ったクローゼットや箪笥に入っている。
デザイナーから見ると、最初の服装は、薄い布を身体に巻き付けている服?であったし、くしゃみをして寒そうだった。
急いで、羽織る物を作って着させて見たのが始まりである。
服が増えてくると家具職人が収納しきれないだろうといい、家具を作ってくれて、その他が増えてくると部屋に入りきらないだろうといい、大工が家を広く作ってくれて、この美術品はここへ置くようにと、パソコンで資料を作っていた人がラベルを作ってくれて、引き出しやら本棚やらに貼ってくれた。
結構、ここにくる魂は、とても楽しく、管理者で遊んでいるのである。
管理者は、目に見える物全てが美術品と認識している。
見えない物でも、資料として本状態になっていれば、見える状態になるから、そういう職業についていた人は、資料作成をして、管理者に見せている。
資料を見ると、管理者は新たな知識を得られる喜びに浸り、とても楽しく、その資料を読んでいた。
内容が分からないものでも、管理者は一度読んでしまえば、記憶が出来るが、記憶が出来るだけであって、内容が全て分かるかと聞けば、分からないものはわからないのである。
しかし、この資料を作るまでに至った経路になった気持ちは、本を通じて伝わる。
中央に、管理者の家があり、ギリシアにあるパルテノン神殿を思わせる建物だ。
内部は、とても快適な温度で保たれている。
周りは、パリの放射状に広がる道路みたいになっていて、その領地は水平線になっても見えない程である。
その中で家が密集して建てられているが、それらの建物も日本家屋、ビル、倉庫、神殿、アパート、長屋、テント、ゲル、イグルーなど、現世の建物がそのまま反映されて、地球丸ごと凝縮されているみたいな所だ。
ここに来た魂は、自分が気に入った建物に住めて、自分の力を発揮できる制作が出来る。
なんせ、ここは、魂の場所。
寝なくてもいいし、食べなくてもいいし、排せつもないし、怪我も病気もしないし、いつも身体は綺麗のままだから、作品に思いっきり自分の力を発揮できる。
ただ、現世の生活が影響している人に配慮して、風呂やトイレも設置し、料理人が作る店で飲んだり食べたりしても良かった。
この地では、お金の概念がなく、材料は管理者に願えば、貰える。
要は、管理者に作品を提示すれば、自由に過ごせる場所である。
管理者は、一つ、思いついたことがあった。
それは、生きている子ども達へ美術能力の強化だ。
もしも、美術を志している子どもが亡くなった場合、現世である程度学んでいないと、自分の目の前に素晴らしい作品が拝めなくなる。
だから、今、この場に留まっている美術品を作成する人に、現世へ行って子ども達の能力強化を命令した。
対象の子どもは、子どもを卒業し、大人になる準備をし始める年齢。
十二歳から十四歳、丁度、中学生の年齢である。
期間は、夏休みの間に設定された。
夏休みといえば、自由研究があるし、将来の職業や、自分の興味持っている力を発揮する方法を教えて欲しいなど、色々な悩みを抱えている子がいるから、その手助けをしてやってもよいとした。
二人一組になって、一人の子どもに能力強化をする為に憑く。
ペアは、くじ引きで決定された。
早速決まっていくペア。
漫画家と湯呑、浮世絵と絵画、刃物と書道、アニメーターと彫刻、楽器とロボット、農業と建築、デザイナーと骨董など、違う分野で決まっていくペアや、同じ分野で組むペアもいる中、どよめかせたペアがいた。
名前は、ヨハネス・フェルメールと、ハン・ファン・メーヘレン。
「よりにもよって、この二人か。」
管理者は、複雑な顔をしたが変更しなかった。
その時のメーヘレンは、冷や汗を欠いていた。
フェルメールは、何故、周りがどよめいているのか分からなかった。
憑く相手もくじ引きで決めると、不破芽衣となった。
憑く時の注意事項がある。
一つは、ペアになった人と喧嘩しないこと
二つは、憑く人と同じ目線に立つこと
三つは、生前のことは話さないこと
これが、注意事項だった。
やり遂げた時のご褒美として、転生を早める約束をした。
現世時間で言うと、七月二十日から八月三十一日まで。
国によって時間のずれはあるが、グリニッジ標準を基準にして、イギリス・ロンドンが七月十五日になった瞬間に、行くことになった。
現世へと行く時に、管理者は魔法をかけた。
「今、皆の言葉を、現世のしゃべり方、憑く人と同じ目線での言い方、憑く人の国の言葉、憑く人のイメージで、話が出来るようにした。だから、どんな性格の子どもでも、意思疎通出来るし、その子にあった自分らしい教育の方法に自然となるぞ。」
子どもにも、教師にもストレスのないようにした。
それぞれの人が、少し声を出して見ると、自分の過ごしていた国の言葉ではなく、憑く人が暮らしている国の言葉になっていた。
フェルメールもメーヘレンも、声を出して見ると、日本語で話せていた。
それに、本来、自分のしゃべり方ではなく、違った感じになっていた。
「現世へ行く時には、光となり、憑く人の迷いの色となっているのじゃ。光のままでは大変だと思うので、憑く人が普段身に着けている物に、説明の後、宿るといい。分からないことがあったら、願えば教えするからの。では、ご武運を。」
管理者が、手を挙げると、美術家達は魂の状態になり光って、現世へと向かった。
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