第291話 王女たちの想像

「ほう、もうそこまで終えているとは……エリザリーナの積極性は、私も見習わねばならないな」

「でしょ〜?その相手の男の子が魅力的であればあるほど、早くプロポーズしないと恋敵に取られちゃうからね〜!」

「恋敵に取られる、か……」


 エリザリーナの恋敵という言葉について少し思うところがあった様子のレザミリアーナ。

 だったが、今のフェリシアーナはそれどころではない。

 ────エリザリーナ姉様がルクスくんの手を自分の両手で握ったり、抱きしめたり、いくらエリザリーナ姉様でもあそこまでするなんておかしいと思ったけれど……あの時、ルクスくんにプロポーズをしていたのね。

 あの時のエリザリーナの行動やルクスの反応を思い出し、フェリシアーナはそのことが腑に落ちた。

 ────じゃあ、今日あんな催し事を開いたのは、ルクスくんと婚約したらすぐルクスくんを次の王として手厚く迎えるためと、そのことをルクスくんに証明するため……かしら。

 それ自体は、フェリシアーナにとっても別に悪いことではない。

 先ほどの話にもあったが、ルクスを王にしたいと考えているのは、フェリシアーナも同じだからだ。

 とはいえ────と考えていると。

 エリザリーナが、口を開いて明るい声で言う。


「そうだ!もし私があの子と結ばれたら、今度はお姉様たちが催し事開いて私とあの子の幸せを祝ってよ!」

「っ……!」


 フェリシアーナは、それに思わず怒りの声を発してしまいそうになるもグッと堪える。

 そして、そのエリザリーナの言葉に対して、レザミリアーナは口を開いて言った。


「当然だ、我が妹が愛する男性と結ばれることになったのなら、その時は国を上げて祝おう」

「ありがと〜!フェリシアーナも、私が大好きなあの子と結ばれることになったら祝ってくれるよね?」

「……」


 エリザリーナからそう声をかけられて、フェリシアーナはますますエリザリーナへの殺意を増していく。

 ────私がエリザリーナ姉様とルクスくんが祝われることになったら祝う?そんなことするはずがないし、二人が結ばれるなんてことを私が許すはずもないわ。

 当然、エリザリーナもフェリシアーナがそう考えていることなど百も承知だろう。

 だが、今はレザミリアーナの手前、フェリシアーナは本音を言うわけにはいかない。


「はい、もちろんです、エリザリーナ姉様」


 そのため、表面上は姉を祝う妹としてそう言うと────


「ありがと〜!フェリシアーナ!可愛い妹が祝ってくれるなら、私が責任を持ってその男の子のことを幸せにするね!」


 エリザリーナは、またもフェリシアーナを挑発するような言葉を返してきた。

 が、フェリシアーナはまたどうにか怒りを堪えると、口を開いて言う。


「しかし、エリザリーナ姉様に突然そんな話を持ちかけられた相手の男性は、かなり困られたのではないですか?」


 ルクスの反応は動きや表情だけでしかわからなかったため、もっと詳細に探るべく聞くフェリシアーナ。

 すると、エリザリーナは笑顔で言う。


「確かにちょっと困ってたみたいだったけど、最後は良い感じだったよ!もし婚約できたら、本当に将来はラブラブになれるんじゃないかな〜!」


 ────この女、本当に斬ってしまっても良いかしら?もう良いわよね?

 もしここが二人きりの場であれば、フェリシアーナは剣を抜いてしまっているところだったかもしれないが……

 ここには、自らの姉であり剣の腕も立つレザミリアーナが居るため、深い殺意だけに留める。

 すると、レザミリアーナが言い慣れないといった様子で呟いた。


「ラブ、ラブ……?」

「そう!ラブラブ!レザミリアーナお姉様も、婚約したいと思ってる男性とイチャイチャラブラブしたいでしょ?」

「な……っ、いや、私は……」


 否定しようとするも、明らかに動揺している様子のレザミリアーナ。

 だが、そんなレザミリアーナの牙城を切り崩すべく、エリザリーナは口を開いて言う。


「ほら、想像してみて?その相手の男の子と身を寄せ合ったり、ご飯食べさせ合ったりしてるところ」


 エリザリーナの言葉通り、レザミリアーナ。

 そして、フェリシアーナとエリザリーナ本人も、自らの想い人を思い浮かべてその光景を想像した。

 すると、フェリシアーナは頬を赤く染めながら小さく口角を上げ。

 レザミリアーナは小さく頬を赤く染め。

 エリザリーナは頬を赤く染めながら、幸せそうに笑みを浮かべていた。

 ────この三人の想い人が同一人物であることは、、誰にも知る由は無かった。



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