第289話 王女の食卓
王城に帰宅したフェリシアーナは、メイド服から王族としての正装に着替え。
エリザリーナが帰って来たと同時に、今日ルクスとどんな話をしたのかを問い詰めるべく。
王城のエントランスで、エリザリーナが帰ってくるのを待っていた。
「それにしても、ルクスくんの手を両手で握るだけじゃなくて、ルクスくんのことを抱きしめるなんて……」
フェリシアーナは、その時の光景を思い出して思わず目を虚ろにする。
もしあの時、エリザリーナのことを斬り伏せてしまっても何も問題が無い状況であれば、迷わず斬り伏せていた。
それほどの怒り。
そして、その怒りを今にも帰ってくるであろうエリザリーナにぶつけようと思っていた────その時。
「っ……!」
足音が聞こえてきた。
その一瞬、エリザリーナが帰って来た。
と思ったフェリシアーナだったが、その足音は王城の外ではなく王城内からしているもの。
「ん?」
その足音の人物は、フェリシアーナに気が付いたのか小さく声を上げると。
そのまま、フェリシアーナに近づいてきた。
「フェリシアーナ、会うのは少し久しぶりだな……こんなところに立って、何をしていたんだ?」
「レザミリアーナ姉様……」
フェリシアーナは、レザミリアーナと顔を合わせる直前に虚ろな目をやめると。
ここでレザミリアーナと会ってしまうという予定外の状況に動揺しながらも、続けて口を開いて言った。
「エリザリーナ姉様に確認したいことがあり、ここでエリザリーナ姉様の帰宅を待っていました」
「そうか、日も落ちて来た頃合いだ、確かにエリザリーナもそろそろ帰ってくるだろう……ちょうど、私もそう思い食堂へ向かおうとしていた」
「……食堂へ、ですか?」
「あぁ、今日はエリザリーナの催し事が終わり、エリザリーナが帰宅したら食卓の場で何か問題が起きなかったかを確認することになっている」
────それは……厄介ね。
フェリシアーナとしては、エリザリーナと二人きりの状況でないと思うように聞き出したいことを聞き出せないため。
できれば、エリザリーナと二人きりの状況が好ましいと思っている。
そして、この状況でエリザリーナと二人きりの状況を作る方法は一つ。
「なるほど……そういうことでしたら、私も後で食堂へ向かうのでレザミリアーナ姉様は先に────」
自らはこの王城のエントランスに残り、レザミリアーナには先に食堂に行ってもらう。
そうすることで、後でこの王城のエントランスにやって来るであろうエリザリーナと二人きりになることができる。
と思い、その旨を言葉にしようとしたフェリシアーナ……だったが。
「あれ〜?レザミリアーナお姉様とフェリシアーナだ〜!二人がこんなところで一緒に居るなんて珍しいね〜!」
「っ……!」
フェリシアーナにとって、最悪のタイミングでエリザリーナがこの王城内のエントランスにやってきた。
そのことに、フェリシアーナはつくづくエリザリーナに対して怒りを抱いたが。
レザミリアーナはそんなフェリシアーナの心情など全く知らず、普段通り口を開いて言う。
「帰ったか、エリザリーナ……今ちょうどフェリシアーナのことを食堂へ誘おうとしていたところだが、お前も問題は無いか?」
「うん!私は予定通りで大丈夫だよ〜!」
元気良く言いながら、近づいてくるエリザリーナ。
「フェリシアーナはどうだ?」
「……」
────こうなってしまった以上、私に選択肢は無いわね。
そう思ったフェリシアーナは、そのレザミリアーナからの問いに返事をする。
「私も、姉様たちと共に食堂へ向かいます」
「そうか、ならば行こう」
「三人で食事するの久しぶりだね〜!楽しいことになりそうな予感〜!」
「……」
本当に、いつでも変わらない様子のエリザリーナに対し。
フェリシアーナは、今日エリザリーナがルクスにしていたことを思い出し殺意を抱きながらも……
姉二人と共に食堂へと向かい……やがて、食堂に到着すると。
────三人の王女たちは、食卓を囲むようにして席に着いた。
◇
いつもこの物語を読み、いいねや応援コメントなどをくださり本当にありがとうございます!
是非、今後もこの物語をお楽しみいただけると幸いです!
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます