第288話 閉幕
エリザリーナ様から、伝えたいことというのを聞き届けた僕は。
エリザリーナ様と一緒に催し事の会場の目の前に戻ってきた。
すると、エリザリーナ様が明るい声色で言う。
「────じゃあね!ルクス!色々と混乱させちゃったかもしれないけど、とにかく私はルクスのことが大好きだから、それだけは忘れないで!あと、せっかくの催し事だから、いっぱい美味しいもの食べて楽しんでね!」
「は、はい!ありがとうございます!」
僕がそう言うと、エリザリーナ様は僕に手を振ってから会場の方に戻って行く。
「……」
本当にたくさん考えないといけないことはあるけど。
今は、エリザリーナ様も仰られていたように、せっかくの催し事。
この場で考え込んでいるだけというのはあまり良くないと思った僕は、ひとまずこの催し事の時間を楽しむために元居たテーブルのところに戻った。
「……あ!」
直後。
そんな声が聞こえてくると────
「ロッドエルくん!おかえりっ!」
僕が戻ってきたことに気づいたらしいアシュエルさんが、僕の元まで歩いてきた。
「アシュエルさん……ただいまです」
「っ……!ロッドエルくんと、おかえりとただいまのやり取りしちゃった……!!」
アシュエルさんは小さく何かの声を上げていたけど、すぐに首を横に振って言う。
「ちょっと時間経ってから見たら、ロッドエルくんもエリザリーナ様もここに居なくなっちゃってたからちょっと心配だったけど、あの後二人で別の場所に行ってたの?」
「はい、そこで少しお話しさせていただきました」
「あのエリザリーナ様に興味持ってもらえるなんて、やっぱりロッドエルくんはすごいよ!」
「そ、そんなことは……」
僕がどう答えるべきか悩んでいると────
「もしや、ロッドエル伯爵?」
「……え?」
知らない男性に声をかけられたため振り返ると、男性は一度頷いて言った。
「やはりそうだ……ロッドエル伯爵、それにアシュエル公爵も、以前の剣術大会での剣は非常に見事でしたな」
「っ!?え、えっと、ありがとうございます!」
突然褒められたことに驚きながらも感謝を伝えると、アシュエルさんが口を開いて言う。
「よくわかってるじゃない!ロッドエルくんの剣、本当に凄かったでしょ!」
「えぇ、それはもう、フローレンス公爵やアシュエル公爵以外にもこれほど剣を扱える若者が居るとは驚きでしたな」
「でしょでしょ!?ロッドエルくんの剣の魅力と言えば────」
それから、アシュエルさんは僕の剣の魅力について語り出したけど……
二分ぐらいしたところで僕の方が恥ずかしくなってしまったため、その男性に頭を下げてから、アシュエルさんと一緒に別の場所に移った。
そして、落ち着いた様子のアシュエルさんに向けて、僕は口を開いて言う。
「……エリザリーナ様の催し事に招待されるような人の中にも、僕なんかのことを知ってくださっている人も居るんですね」
「当たり前だよ!剣術大会はあのレザミリアーナ様が主催してる催し事で、国中が注目してるんだから!観客席からだとハッキリ顔が見えない人も多いと思うけど、名前だけならもう結構の人がロッドエルくんのこと知ってると思うよ?」
「僕の、ことを……」
そのアシュエルさんの言葉に、今まで感じたことのない不思議な感覚になりながらも。
そして、色々と考えないといけないことが頭の片隅を巡りながらも。
僕はアシュエルさんと一緒に料理を食べたり、音楽を楽しんだりして過ごし。
エリザリーナ様の催し事の時間が終わると、アシュエルさんとは別れて、馬車に乗るとロッドエル伯爵家の屋敷へ帰った。
◇シアナside◇
────エリザリーナ姉様と話している時。
そして話し終えてからも、ルクスの様子はどこかおかしかった。
その理由をエリザリーナ本人に直接確認するべく。
シアナは、エリザリーナの催し事が終わった直後。
バイオレットにルクスの護衛を任せて一人馬車に乗ると、そのまま一直線に王城へと向かった────
◇
いつもこの物語を読み、いいねや応援コメントなどをくださり本当にありがとうございます!
是非、今後もこの物語をお楽しみいただけると幸いです!
◇
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