第282話 仲良し
「図書館ぶりだね!ルクス!」
普段と変わらない様子で言うエリザリーナ様だったけど、僕の心情は今それどころではない。
そのため、僕は今抱いている疑問を、そのままエリザリーナ様に伝える。
「そ、そうですね……でも、どうしてエリザリーナ様が僕のところにいらっしゃったんですか?」
今日は、エリザリーナ様のことを拝見することができても、こうしてお話しできる可能性はほとんど無いと思っていた。
何故なら、この場には公爵の人が大勢来るという話は事前に聞いていたし、実際にこの場に来てみてもその通りだった。
だから、エリザリーナ様が僕以外の人とたくさんお話しをして、僕なんかとお話しする機会は無いと思っていたのに……
そういった考えから出た大きな疑問を投げかけると、エリザリーナ様は口を開いて言った。
「どうしてって、それはもちろんルクスと話したいからだよ!」
「え?ぼ、僕と、ですか?」
「うん!それとも、ルクスは今アシュエルと話してたみたいだから、私は邪魔だったかな?」
「い、いえ!そんなことはありません!」
エリザリーナ様が僕の元に来てくださったことに対して驚いたのは、紛れもない事実……だけど。
だからと言ってエリザリーナ様が僕の元に来てくださったことを邪魔だとは全く思っていないため、そのことはすぐに否定する。
そんな僕とエリザリーナ様のやり取りを隣で聞いていたアシュエルさんは、驚いた様子で言った。
「ロ、ロッドエルくんとエリザリーナ様って、知り合いなのっ!?」
僕は僕でとても驚いていたけど、アシュエルさんもアシュエルさんで、今の僕とエリザリーナ様のやり取りを聞いたら驚いてしまうのは当然のことだろう。
僕が、変な誤解を生んでしまわない形で口を開いて返事をしようとした……その時。
「知り合いっていうか、私とルクスはすごく仲良しって感じかな!」
「え!?」
僕が口を開くよりも早く、エリザリーナ様がそう言った。
そんなエリザリーナ様の言葉を聞いた僕は、すぐに改めて口を開いて言う。
「エ、エリザリーナ様、僕なんかがエリザリーナ様と仲良しなんて恐れ多────」
「流石ロッドエルくんだねっ!まさか、あのエリザリーナ様とも仲良しなんてっ!」
「そ、そんなことは……エリザリーナ様がお優しい方で、良くしてくださっているだけなので……!」
僕がそう言うと。
エリザリーナ様は、少し間を空けてから、アシュエルさんに向けて言った。
「アシュエル、ちょっとルクスくんと二人で話したいことがあるから、二人にしてもらっても良い?」
僕と、二人で話したいこと……?」
そのエリザリーナ様の言葉に僕が疑問を抱いているも、アシュエルさんは頷いて。
「わかりましたっ!じゃあロッドエルくん、また後でねっ!」
「っ!はい!またお会いしましょう!」
疑問を感じていて一瞬反応が遅れてしまったけど、僕は先ほどのアシュエルさんと同様に頷いて言った。
すると、アシュエルさんは僕たちに綺麗な金髪の後ろ姿を向けて、この場から去って行く。
そのアシュエルさんの背中を見届けると、僕はエリザリーナ様に向けて言った。
「エリザリーナ様……僕とお話ししたいことというのは、どういったことなんでしょうか?」
第二王女であるエリザリーナ様から話したいことがあると言われ、緊張しながらもそう聞くと。
エリザリーナ様は、周りを見渡しながら。
「もちろん話すつもりだけど────ここだと人が多いから、ちょっと場所変えよっか」
「場所を、ですか?」
「うん……二人きりになれる場所に、ね」
エリザリーナ様が、これから僕にどんなお話しをなされるつもりなのかはわからないけど……
「わかりました」
エリザリーナ様の表情からはとても真剣さを感じることができたため、僕は頷いて答えた。
すると、僕は小さく微笑んでくれたエリザリーナ様に連れられる形で、エリザリーナ様と二人きりになれる場所へと足を進めた。
────エリザリーナ様は、僕とどんなお話しをなされるつもりなんだろう。
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