第281話 褒め合い
鳴り響き続けていた拍手が、やがて鳴り止むと。
各々が、エリザリーナ様の仰ったように、盛大に祝うようにして楽しそうに話し始めたり食事を食べ始めた。
「エリザリーナ様のお話、凄かったですね」
「そうだね」
隣に居るアシュエルさんは、僕の言葉に頷いてくれると続けて言った。
「ここに居る公爵家とか侯爵家、伯爵家の人とか、そうじゃない人たちも、情報的な部分で力を持ってる家が多いみたいだから、この話は明日にでも国中に回るんじゃないかな」
「なるほど……!一目見ただけで、ここに居る人たちの素性までわかるなんて、凄いですね!」
「ロッドエルくんに褒められた……!!」
目を見開いて僕には聞こえない声で何かを言ったアシュエルさんは、続けて言った。
「あとあと!こんなに情報に強い家がたまたま集まったりするなんてこと有り得ないから、きっとエリザリーナ様が意図的に集めたんだと思うよ!!」
「そういう見方もできるんですね!やっぱり、アシュエルさんは凄いです!!」
「っ……!ロッドエルくんの、笑顔……!!」
それから、アシュエルさんは目を輝かせて、明るい表情で何かをずっと呟いていた。
ど、どうしたんだろう……?
アシュエルさんは、時々貴族学校でお会いする時もこういったことがあって、一緒に居たフローレンスさんに相談したところ。
フローレンスさんからは────
「無視して即座に離れることをお勧め致します」
とだけ言われた。
けど、せっかくこの場でお会いすることができたのに、無視して離れるなんてことはしたくない。
……そうだ!
「アシュエルさん!」
「────のに優しくてっ!?な、何っ!?ロッドエルくん!!」
「エリザリーナ様も仰っていたように、ここは祝いの場ということらしいので、良かったら一緒にここにある料理を美味しく食べませんか?」
「ロッドエルくんと!?た、食べる!!」
「ありがとうございます」
僕の提案を受け入れてくださったアシュエルさんと一緒に。
テーブルの上に並べられている料理をお皿に取り分けていくと、僕たちはそれぞれ同時に料理を食べた。
「美味しい……!」
「そうだね!」
それからもアシュエルさんと二人で感想を言い合いながら食事をしていると、僕はふと思ったことを口にした。
「剣術大会で見たアシュエルさんの剣、本当にお強かったですね」
「え!?」
僕がそう言うと、アシュエルさんは驚いた声を上げてから、首を横に振って言った。
「う、ううん!私なんて、ロッドエルくんに比べたら全然だよ!!」
「そんなことありません!準決勝のお相手がフローレンスさんだったということが巡り合わせが悪かったかもしれませんけど、もしアシュエルさんの準決勝の相手が今大会で優勝したフローレンスさんじゃなかったら、アシュエルさんは決勝戦まで残れていたかもしれません!!」
それだけ、アシュエルさんの動きは洗練されていて、日頃からずっと鍛錬を積んできていることがよくわかる人の動きだった。
そのため、僕が心から思ったこととして言うと、アシュエルさんは少し言葉を詰まらせて。
「フ、フローレンスなんかに私が負けたのはたまたまだけど……とにかく!ロッドエルくんの方が凄いよ!ずっと言ってるけど、私剣術大会で初めてロッドエルくんの剣見た時、思わず目奪われちゃったぐらい綺麗だと思ったから!」
「そ、そんなことは────」
「ううん、ルクスの剣は、思わず目を奪われちゃうぐらい綺麗な剣だよ」
「……え?」
突然、後ろからアシュエルさんではない、別の女性の優しい声。
それも、つい先ほどまで聞いていた女性の声が聞こえてきたため、僕はその声の方向に振り向く。
「そうそう!そうなの!よくわかってるじゃな────え?」
僕の後ろに視線を送ったアシュエルさんは、困惑の声を上げた。
けど……僕は、困惑に収まらず。
その人物の姿を見て、驚愕の声を上げた。
「エ、エリザリーナ様!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます