第273話 質問
「え〜!?シ、シアナちゃん怖〜い!いきなり剣なんて出しちゃって、どうしちゃったの!?」
大袈裟に驚いた素振りを見せるエリザリーナ。
先ほどまではルクスの前だったため、怒りを感じてもそれを表に出すことはできなかったが……
ここはシアナの自室でルクスも居ないため、シアナは口を開いて言った。
「そう、どうやら苦しんでから死にたいようね……なら、望み通りそうしてあげるわ」
そう言って、シアナは剣を振り上げる。
「えっ!シアナちゃん何してるの!?怖いからやめてよ〜!!」
「……」
どこまでもふざけた態度を取るエリザリーナに対し、シアナは本気で剣を振り下ろす。
そして、その剣がエリザリーナに触れそうになる……直前。
「────ここで私を死なせるのはやめておいた方が良いよ」
エリザリーナが目を虚ろにして無機質な声で言うと、シアナは剣を振り下ろす手を止めた。
「命乞いのつもりなら、聞くつもりはないわ」
「聞くつもりがあるから……ううん、聞くしかないから、今この手を止めたんでしょ?」
相変わらず、こちらの心を見透かしたように話してくるエリザリーナに不快感を覚えながらも。
その言葉通りであることは間違いないため、シアナはその剣をゆっくりと鞘に納めた。
すると、エリザリーナは目を虚ろにするのをやめ、声色も普段通りの声色になって言った。
「うん、やっぱりわざわざ兵士を総動員して私の部屋を中心に守らせて、私が王城に居るように見せたのは成功だったね……もし私が今日ここに来るのがバレてたら、いくらでも対策なんてできただろうし」
王城内であれば。
仮に警備がどれだけ厚かったとしても、逆に警備さえ突破してしまえばあとはシアナの自由にすることができる。
────私とバイオレットの二人が居れば、仮にどれだけ兵士が居たとしても、突破できるという確信もあった……けれど。
その実力と確信を見抜けないエリザリーナではない。
むしろ、エリザリーナはその実力と確信を利用する形で、シアナたちに自らが王城に居ると誤認させることにして、堂々とロッドエル伯爵家までやって来た。
王城内なら第三王女の権限でいくらでも後始末ができるものの、ロッドエル伯爵家ではそうはいかない。
近くにルクスが居る手前荒事は行えず、万が一強引に荒事を行おうものなら、それによって被害を被るのはエリザリーナだけではなく、シアナも致命傷を受けることになる。
だから、エリザリーナは、シアナやバイオレットが居ることを知った上で、このロッドエル伯爵家の屋敷までやって来た。
「それで?私のお相手してくれるって言ってたけど、もしかして今ので終わりじゃないよね?これだけで戻ったら、ルクスにも説明付かないし」
「えぇ……エリザリーナ姉様には、色々と聞きたいことがあるけれど────」
第一に、と続けて。
「さっきは、ルクスくんとベッドの上で一体何をしようとしていたのか、答えてもらうわ」
「何って、ルクスの顔が赤くなってたから、体調を確認するために服を脱がせてあげようとしてたんだよ……まぁ、そもそもルクスの顔が赤くなっちゃったのは、私が胸元パタパタさせたからなんだけどね」
その発言を聞くと同時に、その光景をも想像したシアナは、反射的に再度鞘から剣を抜いてエリザリーナの首元に突きつける。
だが、エリザリーナは先ほどのように大袈裟に驚いたリアクションはせず普段通りの様子で言った。
「じゃあ、次は私がフェリシアーナに聞きたいこと聞く番ね!」
「いいえ、エリザリーナ姉様に質問権は無いわ」
手に持っている剣を、少しだけエリザリーナに近づけて言うシアナ。
だが、エリザリーナは全く動揺せずに言う。
「え〜?それはフェアじゃないよ、こういうのはちゃんと交互に聞き合わないと!」
「……」
現状、斬られる可能性が限りなく低いとはいえ。
首元に剣を突きつけられているにも関わらず、いつも通りな様子のエリザリーナの様子に、シアナはいつも通り嫌悪感を抱く。
そして、そんなシアナに対して……エリザリーナは、真剣な面持ちで聞いた。
「早速だけど────フェリシアーナは、自分がルクスのことを幸せにできると思ってるの?」
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