第271話 刺激的

◇ルクスside◇

「え?だ、大丈夫ですか!?」


 体が熱いと申告してきたエリナさんの言葉を聞いた僕は、慌ててソファから立ち上がると、ベッドに座っているエリナさんと距離を縮めた。


「体調が悪いってわけじゃ無いから、そんなに心配しなくて良いよ……でも、どう?私顔とか赤い?」


 そう聞かれた僕は、エリナさんに顔を近付ける。


「っ……!」


 その時、何故かエリナさんは小さく声を上げたけど、僕は気にせずにエリナさんの顔を見て言う。


「確かに、普段のエリナさんと比べるとお顔が少し赤いような気がします」

「そ、そっか……多分今のでもっと赤くなっちゃった……」


 僕には聞こえない声で何かを呟いたエリナさんだったけど、僕はそんなエリナさんのお顔から自らの顔を離して言う。


「でも、どうして突然エリナさんの体が熱くなってしまったんでしょうか……?」

「それは……男の子の部屋に入ったのが初めて、だからかもしれないね」

「え!?」


 お、男の子の部屋に入ったのが、初めて……!?


「そ、そうだったんですか!?」

「そうだよ?仕事とかで屋敷に行くことぐらいはあるけど、その相手の自室に入ったことは今まで一回も無いよ……だから、男の子の部屋に入ったのは今日が初めて────まぁ、こんな感情になっちゃうのは、ルクスが相手だからなんだけどね……」

「え?何か言いましたか?」

「う、ううん!何でもないよ!」


 最後に小さな声で何かを言っていたような気がするけど、何でもないと首を横に振るエリナさん。

 何でもないと言うなら、これ以上言及する理由は無いけど……

 それにしても、エリナさんほど明るくて、お綺麗で、接しやすい方が異性の部屋に入るのが初めてだったというのは驚────


「っ!?」


 と考えていると。

 エリナさんが服の胸元部分をパタパタとさせ始め、それによってエリナさんの大きな胸の谷間が一定の間隔で少しだけ見える。


「エ、エリナさん!?何をしてるんですか!?」

「ん?ちょっと熱いから、風送ろうと思って」


 平然と言うエリナさんだったけど、その少し見える大きな胸の谷間だけでも、僕には刺激が強すぎるのに……

 加えて、僕は前エリナさんと一緒にお風呂に入った時、そのエリナさんの胸元が直接背中に当たるという経験をしているため、エリナさんの胸元を直接この目で見るとその時のことも思い出してしま────っ!こ、これ以上はダメだ!

 僕は、自らの顔に熱が帯びるのを感じると、同時にエリナさんの方から咄嗟に視線を横に逃した。


「恥ずかしがってるルクス可愛────じゃなくて……!」


 何かを呟いたエリナさんは、そんな僕に顔を近づけて来て言った。


「あれ?ルクスも顔赤くなってるよ?」

「ぼ、僕のこれは、その……大丈夫なので、気にしていただかなくても────」

「そういうわけにはいかないよ、ルクスが心配して私のこと見てくれたように、私もルクスのこと見てあげる!」


 そう言うと、エリナさんは僕の腕を引いて、僕のことをベッドに座らせた。


「エ、エリナさん!?」

「お互いに座ってた方が見やすいでしょ?」


 そして、僕に体を近づけようとしてくるエリナさん。

 本当に体調不良だったならともかく……

 刺激的なことを思い出してしまったからという理由で顔が赤くなってしまっているなんて、恥ずかしいから今は顔を近くでなんて見て欲しくない!

 心の中で強くそう思った僕は、手を少しだけ押し出すようにしながら言う。


「エ、エリナさん!僕、本当に大丈夫ですから!」

「そんなこと言わないの!ほら、手退けてちゃんと見させて!」


 エリナさんがそう言った直後。

 僕の部屋のドアが開いたかと思えば────


「ご主人様!ただいま買い出しから戻りま────」


 部屋に入ってきたシアナは、ベッドの上に二人で居る僕とエリナさんのことを見て目を見開くと……

 その次の瞬間には、目元を暗くしていた。

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