第268話 ルクスの部屋

「ここがルクスの部屋なんだ〜!」


 ルクスの部屋に初めて入ることができたエリザリーナは、部屋中を見渡すと、楽しんでいることが声からもわかる声色で声を上げた。

 ────ていうか、本当に嬉しい!ルクスの部屋入れるなんて、幸せすぎるんだけど!!

 なんて思っていると、ルクスがエリザリーナに向けて申し訳無さそうに言う。


「はい……面白いものの一つも無くてすみません」

「ううん!私にとっては、ここが普段ルクスが生活してる部屋で、そんなところに私のことをルクスが招いてくれたっていうだけですごく嬉しいから!」


 ────ていうか、ルクスと一緒に居られるだけで私は幸せだし!

 と心の中で補足しながら、エリザリーナはルクスの部屋の本棚に目を通す。

 ────勉強の本たくさんある!本当に頑張ってるんだ〜!ここにあるやつ全部教えてあげれるから、この中でルクスが苦手なやつとか聞いて、今度教えてあげよ〜!

 また二人で勉強会を行える時を楽しみに思いながら心の中で叫ぶと、続けてエリザリーナは机と椅子を見て言った。


「ルクスは、ここでいつも勉強とかしてるの?」

「そうです、少しリラックスしたいと思った時は、その窓から外を眺めたりすることもあります」

「そうなんだ〜!」


 ルクスの口から窓という単語が出たことで、エリザリーナは自然と窓の方に視線を滑らせる。

 人によって感じ方は違うものの、単純な景色だけで言えば王城からの景色の方が良いと感じる人間がほとんだろうが、エリザリーナはそうではない。

 ────これが、ルクスのいつも見てる景色……!

 ルクスが見ている景色、というだけで、エリザリーナにとってその景色にはどんなにも綺麗な景色よりも勝るほどの価値を持つ。

 そのため、エリザリーナはその景色を目に焼き付けていると、続けてベッドに視線を落とす。


「……」


 ────ルクスの部屋の、ベッド……!

 視界に収めた瞬間、一瞬心臓の脈が強く打ったエリザリーナだったが、そのことをどうにか表には出さずに言う。


「これが、いつもルクスが眠ってるベッドなんだね」

「はい」


 ……こんなことは計画外の行動であるため、するかしないかで言えば間違いなくしない方が良い。

 が、ルクスへの愛情、そして好奇心に抗うことができず、エリザリーナは頬を赤く染めて緊張しながらもルクスに聞いた。


「……座ってみても良い?」

「もちろんです」


 ────良いの!?

 驚いたエリザリーナ、だったが。

 ────ルクスのベッドに座る機会なんて、長い目で見ればルクスと結ばれるのは私なんだから今後無数にあるけど、短い目で見たらまだそんなに無いから逃せない!


「あ、ありがと」


 どこか小さな声で返事をすると、エリザリーナはゆっくりと腰を下ろしてルクスのベッドに座る。

 ────ここが、いつもルクスの眠ってるベッド……

 そう思いながら、エリザリーナは手のひら全体でルクスのベッドに触れ、とても大切に撫でる。

 ────ここで毎日眠ってるルクスとか、想像するだけで可愛い……

 頬を赤く染めてルクスの寝顔を想像していたエリザリーナだったが、一応ルクスに確認しておきたいことがあったため、ベッドからルクスの方に視線を移すと念のために確認しておくことにした。


「ねぇ、ルクス……一応聞いておきたいんだけど、このベッドに他の誰かと一緒に上がったりした?」

「いえ、他の方を上げないといけない状況が無かったので、上げたことは無いですけど……どうかしたんですか?」

「う、ううん!変なこと聞いちゃってごめんね!なんでもないよ!」


 エリザリーナは、安堵しながらも、純真なルクスの目を見て慌ててベッドから立ち上がる。

 ────本当、大好きなルクスと居ると、私が私じゃ無いみたいに変なことばっかり考えちゃう……!でも、今は……

 ようやくルクスの部屋に居るという状況でも落ち着いた思考ができるようになってきたエリザリーナは、一度変な考えをするのもここまでだと自らに言い聞かせると────早速、に向けて、行動を起こすことにした。

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