第255話 商業体験終了
◇ルクスside◇
お昼休憩もそろそろ終わる時間になった……けど。
フローレンスさんも、フェリシアーナ様もお戻りになられていない。
「やっぱり、どうにかして探しに行った方が良いのかな……」
でも、フローレンスさんに任されたお店の方を留守にするわけにはいかないから、先生に報告して────と思っていると。
「っ!フローレンスさん!フェリシアーナ様!」
お二人が僕の前に姿を見せてくれたため、僕は思わず名前を呼ぶ。
すると、お二人は優しい表情で口を開いて言った。
「ルクス様、長い間留守にしてしまい、申し訳ありませんでした」
「待たせてしまったわね、ルクスくん」
「いえ!もしかしたらお二人に何かあったのかもしれないと思ったらとても心配でしたけど、無事に戻って来てくださったなら、僕はそれだけで本当に良かったです!!」
気持ちを込めて伝えると、二人は頬を赤く染めて嬉しそうに口角を上げた。
……そうだ。
「フローレンスさん!そろそろお昼休憩が終わるので、またお店を始めないといけません!」
「そうですね、では、始めましょうか」
「そういうことなら、ルクスくん、お昼休憩明け一人目の客は私でも良いかしら?」
「はい!もちろんです!フローレンスさんも、またよろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします」
穏やかに微笑んでくれたフローレンスさんと一緒に、商業体験を再開した。
「そうね……ルクスくん、このお花をもらえるかしら?」
「はい、わかりまし────」
「お待ちください、ルクス様……第三王女様、そのお花の花言葉は愛、この状況を利用してルクス様にそのような意味を持つお花を手渡させることなど、私が見過ごすわけには参りません」
「あら、私はただ欲しい花を選んだだけよ、その花にそんな花言葉が込められているなんて、初耳だわ」
「見え透いた嘘を────」
最初のお客さんであるフェリシアーナ様とフローレンスさんは、何故か少しだけ言い合っていた。
けど、その後は朝のようなトラブルもなく、順調にお花を売ることができて……
商業体験終了の時間である夕方になるまでの間、僕たちは二人でたくさんのお花を売り続けた。
◇エリザリーナside◇
夕方と夜の境目頃。
「話って何〜?」
レザミリアーナに呼び出されたエリザリーナがそう聞くと、自らの執務室の椅子に座っているレザミリアーナが言った。
「昼に、ラーゲ一派の拠点と思われる場所を特定した」
「へぇ〜!流石!レザミリアーナお姉様だね〜!」
「……そして、ラーゲ一派が今夜その拠点に結集するという話を聞き、今後のためにも早速今夜対処を行おうと思っているが、異論は無いか?」
「え?無い無い、対処ってようは壊滅させるってことでしょ?異論なんてあるわけないじゃん」
────ルクスに害を為そうとする奴なんて、死んで当たり前なんだし。
「そうか、仮にも奴らは公爵や侯爵の貴族たち、それも十名ほど居るため一夜にして無くなるにはエリザリーナの調停の不都合になるかと思ったが」
「あぁ、そういうこと?それなら、尚更問題無いよ……あんな奴らが居なくなったとしても、私さえ居れば平気だからね────むしろ、レザミリアーナお姉様が積極的にそういうこと言ってくれて嬉しいぐらい」
「それなら良い、下がってくれ」
「は〜い」
軽く返事をすると、エリザリーナはレザミリアーナの執務室を後にした。
すると、王城内の廊下を歩きながら呟く。
「なんか、この短期間でレザミリアーナお姉様がかなり雰囲気変わったような気がするけど……」
────ううん、そんな、気がするぐらいのことよりも。
「商業体験も終わったし……いよいよだね、ルクス」
────いよいよ、私の愛を、ルクスに伝えてあげられる時が来るよ。
「その時が来たら、フェリシアーナもフローレンスも関係無くなる……私が、ルクスの────」
その先はあえて口にせず、エリザリーナは頬を赤く染めて口元を結んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます