第246話 衝突

◇フェリシアーナside◇

 公爵の男と二人で路地裏まで歩いてきたフェリシアーナが足を止める。

 同時に、公爵の男も足を止めると、周りを見渡しながら言った。


「こ、このような薄汚い場所で話すのですか?我々には、もっと相応しい場所が────」

「いいえ、あなたにはここで十分よ」

「なっ……?」


 友好的に接してきていると思っていたフェリシアーナから、突然雑言とも取れる言葉を放たれ困惑の声を上げる男。

 だが、フェリシアーナは一度大きくため息を吐くと、続けて冷たい声色で言った。


「ルクスくんが居ないから、ようやく思いのまま伝えることができるわね……あなたには、言いたいことがいくつもあるわ」

「い、言いたいこと……?」

「えぇ……まず、ルクスくんのことを愚かだと評したことについてだけれど────」


 続けて、目を虚ろにして無機質な声で告げる。


「愚かなのはあなたよ、ルクスくんを愚かなんて言ってしまったせいで、あなたは死ぬことになるのだから」

「し、し、死ぬ!?な、な、何を、仰られておられるのか!」

「そうね、少し訂正するわ、あなたが死ぬ理由は他にもいくつかあるもの」

「ほ、他に……?」


 顔から冷や汗を流し、先ほどまでとは打って変わって表情に余裕を無くして聞き返してくる男。


「さっき、あなたはルクスくんに教育をしていたと言っていたわね」

「そ、そうです、貴族制度というこの国の土台とも言える制度を理解していない、私よりも位の低い伯爵家の子供が居るのであれば、公爵としてそれを教えてやるのが筋というもの……大体、どうしてフェリシアーナ様があんな伯爵家の子供にそこまで────」

「良いことを教えておいてあげるわ」


 力強く言うと、フェリシアーナは目の奥にどこまでも虚ろを広げて、男との距離を一歩近づけて言った。


「爵位なんて関係無く、この国ではルクスくんが一番よ……そのルクスくんを害してしまったから、あなたはここで死ぬことになるのよ」

「な、な……にを、言っている!俺が、あんな伯爵家の子供のせいで死ぬなんてことがあっていいものか!……そ、そうだ」


 男は、身振り手振りをしながら必死にフェリシアーナの機嫌を取るようにしながら言う。


「フェ、フェリシアーナ様、ここは取引と行きましょうぞ、私があの伯爵家の子供が一生賭けても払えないような額をお支払いするので、どうか命だけは助けてくださいませんか?そして、あの伯爵家の子供のことなど捨て、今日出会えたことを機に今後は私と良い関係を────ひぇっ!?」


 フェリシアーナが男の首元に剣を添えると、男は恐怖の声を上げる。

 が、フェリシアーナはそんな男の反応など全く気にした様子も無く、無機質な声で言う。


「私がルクスくんを捨てるなんて、こんなにも怒りを覚えたのは久しぶりね……ここまで私のことを怒らせるということは、早く死にたいということで良いのかしら?なら、長々と話すのではなくて、最初から死にたいとだけ言って欲しいものね────望み通り、今から死なせてあげるわ」

「ま、待て!ほ、本気で、この俺の命を奪うというのか!?」

「えぇ、そもそも王族の私に割って入っただけでも十分重罪なのに加え、さっきの発言の数々……それでいて、あなたはラーゲと繋がっていて、ルクスくんにこれ以上活躍させまいと躍起になって、あんな下らないことをしたのでしょう?救いようが無いわ」

「っ……!お……おっ、お許しを────」

「血筋こそ絶対、と言っていたわね?私にその考えは理解できないけれど、あなたがそう考えているのなら、王族の私に命を奪ってもらえることを光栄に思いながら死になさい」


 そう言うと、フェリシアーナは一度男の首元から剣を離し、剣に勢いをつけて男のことを斬り伏せようとした……が。

 剣先が男に当たる直前────


「第三王女様……!このようなこと、私が居る限りは絶対に許しません!」


 男に向けて振られたフェリシアーナの剣を、フローレンスが受け止めて力強くそう言った。



 この物語の連載を始めてから八ヶ月が経過しました!

 八ヶ月の間に、この第246話までお読みくださり本当にありがとうございます!

 物語を読む、いいねや☆、応援コメントを送ってくださるなど、どのような形であれ、あなたが今までこの物語を応援してくださったことに、深く感謝しています!

 是非、この機会にあなたがこの物語に抱いている気持ちをいいねや応援コメントなどで作者にも教えてください!

 気が向いた方は、下にスクロールして感想レビューなども送っていただけると本当に嬉しいです!

 今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、あなたも最後までこの物語をお楽しみいただけると幸いです!

 今後も応援よろしくお願いします!

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