第236話 協力
◇フェリシアーナside◇
ルクスの貴族学校登校前の朝の時間。
シアナとバイオレットは、シアナの自室で話をしていた。
「明日は、いよいよロッドエル様の商業体験当日ですね」
「そうね、商業を営んでいるルクスくんの姿は今まで見たことが無かったから、今回の商業体験でのルクスくんは絶対に見逃せないわ!」
楽しそうに語るシアナに、バイオレットは落ち着いた声色で言う。
「楽しみがあるのは良いことではありますが、どうか油断はなさらないようにしてください……金銭の大きく動く場所では、何が起きてもおかしくありませんので」
諭されたシアナは一度真剣な表情になって、バイオレットと同じく落ち着いた声色で言った。
「えぇ、わかっているわ……」
何が起きたとしても、自分がルクスを守る。
楽しみに思う気持ちはありながらも、シアナのその軸は、この商業体験においても一切ブレることはなかった。
◇フローレンスside◇
「では、ルクス様……私たちは本日、この後で少々用事がありますので、ここで失礼させていただきたいと思います」
貴族学校の放課後。
フローレンスとルクス、アシュエルの三人で廊下を歩いていたが、そう言ってフローレンスは足を止めた。
それに呼応するように二人も足を止めると、ルクスが明るい声で言う。
「わかりました……フローレンスさん!明日の商業体験、二人で頑張りましょう!」
「はい、精一杯、努めさせて頂こうと思います」
笑顔で言うフローレンスの隣で、続けてアシュエルが元気に言った。
「じゃあね!ロッドエルくん!前も伝えたけど、明日の商業体験応援してるから!頑張って!」
「はい!アシュエルさんも、頑張ってくださいね!」
二人に一礼すると、ルクスは二人の前から去って行った。
「では、アシュエル様……お調べいただいた件を、今ご報告いただいてもよろしいですか?」
ルクスに応援の言葉をもらったからかとても嬉しそうな表情をしていたアシュエルだったが、フローレンスに話しかけると、別人のように表情を変えて言う。
「ふんっ!言っておくけど、あんたのためじゃなくて、これはロッドエルくんのためなんだからね!」
「もちろん、承知しております」
「じゃあ……これ」
アシュエルは、一枚一枚にそれぞれ人物についての情報が書かれている紙を五枚フローレンスに渡してきた。
「そいつらが、フローレンスに調べるよう頼まれた、ロッドエルくんを貴族学校内で尾けてた奴らだよ」
「なるほど……いずれも公爵、または侯爵家の人間とは、やはり何かしらの意図を持って行動を起こしているようですね」
フローレンスは考える。
今の所は何も起きていないが、公爵や侯爵の人間が意味もなくルクスのことを尾行していたとは考えづらい。
そのため、このまま商業体験の日を迎えると、間違いなく良くないことが起こる。
「……少々時間はかかりますが、今からこの五人の屋敷を回り目的を聞きに参りましょうか」
「私にかかれば、そんな面倒なこと必要ないよ!」
「……必要が無い、ですか?」
疑問を抱いたフローレンスに対し、アシュエルは答える。
「うん、あいつらの目的も居場所も、私は知ってるから!」
「まぁ、そうなのですか?」
「そうよ!このノーラ・アシュエルにかかれば、そんなことは簡単なんだから!」
「では、お聞かせ願えますか?」
「そんなに頭下げられてお願いされたら断れないし、仕方ないから教えてあげる!」
頭を下げた覚えはなかったが、余計なおことを言ってアシュエルの機嫌を損ねるわけにはいかなかったためフローレンスは沈黙を選ぶ。
すると、アシュエルは続けて自信ありげに口を開いて言った。
「あいつらの目的は、ロッドエルくんとフローレンスの商品のお花を奪って、二人に売上を立たせないようにすること!で、居場所は────」
「なるほど、となると、居場所は商業体験用商品保管用の倉庫、ですか」
「っ!!ちょっと!!私が言おうとしてたのに、なんで先に言うわけ!?」
「ご不快にさせてしまったようで申し訳ございません、つい口に出してしまいました」
「はぁ〜!もう一度言っておくけど、今回協力してあげてるのは、ロッドエルくんのためなんだからね!!」
「承知しております……では、ルクス様のため、共に参りましょうか」
そんな会話を終えると、フローレンスは、不満げでありながらも歩を進め出したアシュエルと一緒に倉庫へと向かった。
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