第228話 判断
「即答、か」
二人が、死刑という言葉を即答したことに対し小さく呟いたレザミリアーナに対し、エリザリーナが言った。
「ルクスが危害を加えられるって話をしてるんだから、即答ぐらいするよ」
「ロッドエルというのは、あくまでも仮定の話だが……まぁいい」
続けて、レザミリアーナはシアナの方を向いて言う。
「エリザリーナはロッドエルと友人だという話だったから、今の話で死刑だと即答するのは私情も含め法的にも納得できるが、フェリシアーナは何故死刑だと即答したんだ?
────ルクスくんに危害を加える愚か者なんて、生きている意味が無いから。
というのがシアナの本音。
だが、レザミリアーナに自らとルクスの間に繋がりがあることを伝えれば、最悪父にもそのことが伝わってしまうかもしれないため、ここは穏便な回答をしておくことにした。
「同国の貴族に仇を為そうとするものは、この国には不要だからです」
「そうか……では、エリザリーナのようにロッドエルからの私情では無いということだな」
「はい」
本当は大方がルクスへの私情による回答だったが、わざわざそんなことは明かさない。
が、シアナの嘘を聞いたエリザリーナは、小さく口角を上げて言った。
「そうそう、フェリシアーナはルクスと何も関係ないから!無関係!私はルクスと友達だけど、フェリシアーナはルクスと何も無いもんね!」
この場では自らとルクスが無関係だということにした方が都合が良いのは間違いない。
だから、見方によってはこのエリザリーナの言葉はシアナにとって良いと捉えることもできる……が。
「……」
そのエリザリーナの表情は明らかに善意などでなく悪意に満ちた笑みを浮かべており、ここぞとばかりに自らの方がルクスと関係性が進んでいることを主張しているようだった。
「……はい」
表面的には頷くしか無いシアナがその言葉に頷くと、エリザリーナは面白そうに小さく笑う。
────エリザリーナ姉様……本当に、覚えておきなさい。
心の中で殺意を抱きそう呟くと、レザミリアーナがまとめるようにして言った。
「では、もしラーゲ一派が本国の貴族に危害を加えようとした時は、各自の判断で死刑にして構わない……ただし、ラーゲ一派以外の者が行った場合は、死刑ではなく身を拘束する程度に留めるように」
「え、それって仮にルクスが誰か別のやつに危害加えられても死刑にしたらダメってこと?」
「あぁ、お前たちが優秀であることはわかっているが、無用なトラブルを避けるためにも死刑にしたいと思った時は、まず私の判断を仰いでくれ」
それから、シアナとエリザリーナは同じ間沈黙した。
おそらく、考えていたことは同じだろう。
────レザミリアーナ姉様には悪いけれど、ルクスくんに危害が加えられたら、私は独断でその愚か者を死刑にするわ。
だが、その内心とは反対に、少しの間を空けてから二人は頷いて言う。
「わかりました」
「は〜い、私もわかったよ〜」
その答えを聞いたレザミリアーナは頷くと、二人に向けて言った。
「今日の王族会議は、これで以上とする……各自、それぞれの職務に当たってくれ」
そう言うと、レザミリアーナはこの会議室から去って行った。
すると、二人になった会議室でエリザリーナが口を開いて言う。
「いくらレザミリアーナお姉様からの言いつけでも、ルクスが危害を加えられてるのに身を拘束するだけなんていうのは無理な話だよね〜」
「そうね」
「普段は全然感じないけど、こういうところはやっぱり私たちって姉妹なのかな?」
「どうでしょうね、大体、姉妹と言ったらレザミリアーナ姉様だってそうでしょう」
「そうだね〜、じゃあ、そこに姉妹なんて関係ないのかな……それとも────」
言いかけると、エリザリーナは口を閉ざして、鼻歌を歌いながら楽しそうに会議室から出て行った。
「……」
シアナも、そんなエリザリーナに続く形で会議室を後にした。
◇レザミリアーナside◇
会議室から出たレザミリアーナは────父の呼び出しによって、玉座の間に向けて足を進めていた。
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