第226話 感想
◇バイオレットside◇
翌日の朝。
ルクスが貴族学校へ行く身支度をしている時間。
シアナの部屋に居たバイオレットの元に、とても幸せそうな表情をしたシアナがやって来た。
「ロッドエル様との添い寝は、とても満足の行く結果を得られたようですね」
表情から察したことを口にすると、シアナは明るく言った。
「えぇ……はぁ、可愛いルクスくんと一緒に眠ることができて、本当に幸せな時間だったわ……本当だったらその感想について数時間ほどあなたに聞かせてあげたいところだけど、今日は先に真面目な話をしないといけないわね」
シアナの言う数時間というのが比喩表現ではなく、本当に数時間であることをバイオレットは今までの経験から知っている。
そのことやそれらの理由からも今の話を聞いて少し思うところはあったものの、真面目な話をすると言われたためバイオレットが切り替えると、シアナも切り替えて真剣な様子で言った。
「今日は王族会議がある日で私は王城に行くことになるけれど、昨日のこともあるからあなたは普段通りルクスくんの周囲を警戒しておきなさい」
昨日のこと、というのはルクスがラーゲ公爵の刺客によって襲撃されたことだ。
「かしこまりました」
「そして、もしルクスくんに危害を加えようとする人間が居たら────」
続けて、目を虚ろにして声は冷たくして言う。
「私の判断なんて待たなくて良いから、すぐに命を奪いなさい」
「承知致しました」
バイオレットが普段通り頷くと、シアナは一度目を閉じる。
そして────再度目を開くと、先ほどまでの虚ろな目は影もなく、シアナは目を輝かせて言った。
「まだルクスくんが貴族学校に登校し始めるまで時間があるから、あなたにルクスくんとの添い寝の感想を教えてあげるわね!ルクスくん、ベッドの上に上がって布団の中に入ったら子供のように早く眠ってしまって、そこも可愛いのだけれど、ルクスくんが眠っている時の寝息も本当に可愛いのよ!どのぐらい可愛いかと言ったら、本当に可愛くて色々と自制できるかどうかが大変だと思えるぐらいよ!それで、眠っている時じゃなくて朝起きた時の反応も可愛────」
相変わらずなシアナの変わり身に少し呆れたものを覚えながらも、バイオレットは楽しそうにしているシアナの話を相槌を打ちながらどこか微笑ましく聞き続けた。
◇ルクスside◇
昨日の夜一緒に眠って、翌日の今日起きたら隣で眠っていたシアナに思わず感情を動かされた僕は、そんな朝を経ながらも身支度を整えて貴族学校に登校した。
「おはようございます、ルクス様」
「おはようございます、フローレンスさん」
隣の席のフローレンスさんと挨拶を交わすと、僕は着席する。
すると、フローレンスさんが言った。
「お泊まり会ぶりですね」
「そうですね……あのお泊まり会、本当に楽しかったです!」
「改めてそう言ってもらえて何よりです……私も、あの日ルクス様と一度添い寝をさせていただいてから、一人で眠ることに少々寂しさを覚えるほどには、あのお泊まり会に思いを馳せております」
「えっ!?」
「ふふっ、冗談です」
添い寝という言葉によって、僕が昨日から今日にかけてシアナと添い寝をしたことと、お泊まり会の時にフローレンスさんと添い寝をしたことも思い出して顔に熱を帯びさせていると、フローレンスさんは小さく微笑んでそう言った。
それから少しの間普段通り二人で談笑していると、先生が講義室に入って来たため、僕たちを含め講義室に居る生徒たちは静かになった。
「皆さん、おはようございます……本日からは、貴族である皆さんが将来領地運営を行う上で重要となる商業について理解を深めていただくべく、短期間ではありますが────商業体験を行っていただこうと思います」
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