第225話 シアナと添い寝

◇ルクスside◇

「ご主人様!」


 僕の部屋のドアがノックされると、大きな声で僕を呼ぶシアナの声が聞こえてきた。


「入っていいよ」


 僕がそう伝えると、シアナはドアを開けて部屋の中に入ってきた。


「おかえり……少し遅────」


 僕がそう言いかけた時。

 シアナは、僕との距離を縮めてくると、突然僕のことを抱きしめてきた。


「シ、シアナ!?ど、どうしたの?」


 本当に突然のことだったため僕が驚いていると、シアナは続けて僕と顔を向かい合わせて、心配した様子で言った。


「ご主人様!大丈夫ですか?どこもお怪我などはございませんか?」

「え?け、怪我?どうしてそんなことを聞くの?」

「それは……ご主人様が、剣を持った方に襲撃されたとお聞きしたので……」

「っ……!」


 あの時周りに人は居ないと思ってたけど、僕が気づいていないだけで誰かが居て、シアナはその話を街で買い物をしているときに聞いたのかな……

 それで、僕のことをここまで心配してくれて……そういうことなら。

 僕は、これ以上シアナのことを心配させるわけにはいかないと思い、口を開いて言う。


「心配させてごめんね、僕は大丈夫だよ……たまたまその場に一緒に居た人が、全て対処してくれたんだ」

「そうだったのですね……本当に良かったです」

「……」


 心配して僕のことを抱きしめてくれているシアナのことを、僕も優しく抱きしめ返す。

 それからしばらくの間二人で抱きしめ合っていると、シアナが言った。


「ご主人様……本日は添い寝をさせていただくという約束を、覚えておいでですか?」

「っ!う、うん、もちろん覚えてるよ」


 添い寝と言われて少し恥ずかしくなってしまいながらも答えると、シアナが言った。


「では、本日は共にお風呂に入り、そのまま共に眠りませんか?」

「え!?お、お風呂も一緒に入るの!?」

「はい……本日は、ご主人様とずっと一緒に居たいのです」


 二人でお風呂に入るなんて、やっぱり少し恥ずかしいけど……

 シアナが優しさでこう言ってくれているのに、それを断るなんてことはできない。


「わかった、今日はそうしようか」

「っ!ありがとうございます!」


 その後、僕とシアナは二人で一緒にお風呂に入ると、シアナが僕の体を後ろから洗い始めてくれた。

 そして、体を洗い始めてくれてから少しした時。


「ご主人様……もし、ご主人様の身に何かあったかもしれないと考えれば……本当に、本当にご無事で良かったです……!」


 シアナは、僕のことを後ろから抱きしめてきた。


「っ!?シ、シアナ!?ふ、服を着ていない時に抱きしめられると、色々と問題があるっていうか、えっと……」


 なんて、とてもじゃないけど今のシアナにそんな理由で抱きしめるのをやめてなんて言えるわけもないため、僕はどうにか背中から感じる柔らかな感触から意識を逸らすことに専念した。

 それから、一緒にお風呂に浸かると、僕たちは二人で楽しく話して────僕の部屋。

 二人で一緒にベッドの上に上がると、一緒に布団を被り、シアナは僕のことを抱きしめてきて言った。


「ご主人様……こうしてご主人様がお眠りになられる夜までご主人様にお仕えすることができて、私はとても幸せです」

「シアナ……僕も、こうしてシアナと夜まで一緒に居られて、とても嬉しいよ」


 僕がそう伝えると、シアナは嬉しさを表すように僕を抱きしめる力を強めてくる。


「……」


 今日も色々なことがあって、相変わらずまだまだ考えないといけないことはたくさんあるけど……

 シアナに抱きしめられていると、フローレンスさんの時とはまた違う安心感や居心地の良さを感じることができて……

 僕は、そのままゆっくりと眠りへと落ちて行った。



◇シアナside◇

 抱きしめているルクスが隣で小さく寝息を立て始めた頃。

 シアナは、頬を赤く染めながら────


「いけないわ、いくらルクスくんが無防備で可愛い寝息を立てているからって……我慢よ、我慢するのよ、私……!」


 必死に自らのことを自制する戦いを行なっていて、その戦いはその後もしばらく続いた。

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