第217話 刺客
◇ルクスside◇
馬車が街に到着すると、僕とレミナさんは馬車から降りて街の中を歩き始めた。
そして、いつも通り活気な街並みを見ながら、僕はふと気になったことをレミナさんに聞いてみる。
「そういえば、レミナさんとカティスウェア帝国で初めてお会いした時、他国から来たって言ってましたけど、今日もそうなんですか?」
「いや、私は君と同じく、この国の人間だ」
「え!?そ、そうだったんですか!?」
「あぁ……私も、初めてそのことを知った時は、とても驚き強烈に運命を感じたものだ……無論、それは今もだがな」
僕がとても驚いていると、レミナさんは僕には聞こえない声で何かを呟いた。
初めてカティスウェア帝国でお会いしたレミナさんが、僕と同じ国の人だったなんて……こんな偶然もあるんだ。
「そういえば、あれからパンの食べ方に困ることはありませんか?」
「あぁ、パンを初めて食べたという話を妹にしたら、あれから定期的に渡してくるようになってな……君に教えてもらったおかげで、それらをしっかりと食すことができている」
「お力になれていたなら良かったです!……レミナさんの妹さんと言えば、確かお二人いらっしゃるんでしたね」
「そうだ」
確か、三女の人が真面目で振る舞いもしっかりしていて、レミナさんがいずれその力を世界に示せるとまで言っている人で、次女の人が服選びに付き添ってくれたり能力面も優秀だけど、性格に難があるという話だったはずだ。
「私にパンを渡してくるのは次女の方だが、どこから仕入れてくるのかなかなか美味しくてな……またいつか、君とも一緒に食べたいものだ」
「っ!レミナさんがそう思ってくださってるなら、いつかじゃなくて、今からでも一緒に食べに行きましょう!」
「……良いのか?」
「もちろんです!僕も、また一緒にレミナさんとパン……というか、美味しいものを一緒に食べたいので!!」
僕が心の底から明るく伝えると、レミナさんはそんな僕のことを見て少し間を空けてから言った。
「……君が良いと言ってくれるなら、行こう」
「はい!」
何となく街の中を歩いていた僕とレミナさんは、パン屋を目的地に定めて再度足を進め始める。
そして、あと少しでパン屋さんに到着しそうになったところで────
「おい」
一人のとても筋肉質な男性が、僕たちの前を阻むようにして立ち塞がった。
そして、僕の顔を見ながら言う。
「お前、ルクス・ロッドエルだろ?」
とても威圧的な態度の人だったため、僕は一歩前に出るとレミナさんの前に腕を出してそれ以上前に出ないよう静かに伝える。
「っ……」
レミナさんはそうされたことに驚いた様子だったけど、僕は一度そのことは気にせずに口を開いて言った。
「そうですけど……僕に何か用事ですか?」
僕がそう聞き返すと、男性は僕の顔を少しの間見てから、鼻で笑うようにして言う。
「……はっ、こんなガキが剣術大会で準優勝たぁ、この国も落ちたもんだぜ」
剣術大会……
「……確かに、僕も自分があの剣術大会で準優勝できたことに、今でも驚いています……でも、あの剣術大会で僕と剣を交えた人や、僕を応援してくれた人のことを考えれば、今の言葉は見過ごせません」
「なら、俺と一本勝負しろ、レザミリアーナみたいな化け物ならともかく、お前みたいなガキなら一振りで────」
「命が惜しいなら、そのぐらいで口を閉ざしておいた方が身のためだ」
男性の言葉を遮るように、レミナさんは信じられないほど気迫と力強さ、重みの込められた声でそう言い放った。
「なっ……あ、あぁ!?何だテメェ!!」
そのレミナさんの言葉の重みに一瞬怯んだ様子の男性だったけど、それを隠すようにして大声で返す。
が、レミナさんは力強い目で男性を見据えると、腰に携帯している剣の柄に手を置いて、またも重みの込められた声で言い放った。
「それ以上彼を貶めるような発言をすれば……私が、お前を斬る」
そのレミナさんの表情や雰囲気からは、圧倒的な風格や存在感のようなものが感じられて、隣に立つ僕ですら思わず息を呑んでしまうほどだった。
そして、僕はそんなレミナさんのことを見て、一つ疑問が浮かんだ。
────レミナさんは、一体何者なんだろう……と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます