第216話 その時

◇シアナside◇

 王城にやって来たシアナとバイオレットは、エリザリーナが自分たちの知らないところでどのような動きをしているのかを探るべく記録を漁っていた。


「フローレンスの話だと、エリザリーナ姉様は公爵家の貴族を中心として接触しているという話だったから、その辺りの記録を見れば何かわかるかと思ったけれど……何も残っていないわね」

「はい、調停などであればまだしも、その接触理由というのがエリザリーナ様の独断であられるのであれば、わざわざ記録に残す必要は無いと考えたのでしょう」

「記録に残っていないなら、公爵家の貴族たちに聞きに行くしか無いのかしら」

「そうですね……ですが、そうなるとお相手の公爵家の貴族の方の不審を招いてしまう可能性があります」


 シアナが「最近エリザリーナ姉様と会ったかしら?もし会ったなら、どんな理由であったのかを教えてちょうだい」と言った場合。

 それを受けた公爵家の貴族は、どうしてフェリシアーナがそんなことを聞いてくるのか、もしくはエリザリーナの行っていることを知らないのか、どうして今こうして一人で探っているのかを不審に思う可能性がある。

 バイオレットがそのことを指摘すると、シアナは少し間を空けてから言った。


「そうね……それに、貴族たちがエリザリーナ姉様によって口止めをされているという可能性もあると考えると、リスクが大きすぎるわね」


 第三王女のフェリシアーナでは、第二王女であるエリザリーナに権限として勝つことができないのは過去から学んでいるため、口止めされていた場合、口を無理やり開かせることは難しい。


「無駄足となってしまったけれど、今日のところは帰りましょうか」

「承知しました」


 バイオレットが返事をすると、二人は一緒に資料室から王城の廊下へと出た────直後。


「あ!フェリシアーナとバイオレット!やっぱりここに居た〜!」


 そんな声が聞こえてくると、資料室前廊下の奥から渦中の人物であるエリザリーナがシアナたちの前へとやって来た。


「……エリザリーナ姉様」

「ご息災なようで何よりです、エリザリーナ様」

「うん!それはもうとっても元気だよ!」


 シアナにとって、今のエリザリーナが元気であることは不気味にしか感じられなかったが、エリザリーナの言葉の中に少し気に掛かったことがあったためそのことを聞いてみることにした。


「ところで、やっぱりここに居た、とはどういう意味かしら?」

「あぁ、それは、ついさっき兵からフェリシアーナが王城に帰って来たっていう話を聞いて、フェリシアーナがルクスの元を離れてまでわざわざ王城に来るってことは、私のやってることを嗅ぎつけたんだろうな〜って思ったの……で、私のやってることを嗅ぎつけたんだとしたら、それを探るために一番最初に来るのは、やっぱり資料室かなって思っただけだよ」


 軽い口調で言っていたエリザリーナだったが、その的確さにシアナは我が姉ながら少し驚いた。

 が、それを表情には出さず、むしろそこまでバレているのならと、開き直るようにして言う。


「そう……なら聞くけれど、エリザリーナ姉様は貴族たちと接触して何をしようとしているのかしら?」

「それはまだ教えてあげられないかな〜、それに、が来たら嫌でも知ることになると思うから、そんなに焦らなくても大丈夫だよ」

「……」

「妹からそんなに怖い目で見られちゃうなんて、お姉ちゃんショックだよ〜!……でも、今から一つだけ約束してあげられることがあるから、それだけは教えてあげる」


 明るい雰囲気から一転した落ち着いた声色で言ったエリザリーナは、続けてシアナに近づいてくると耳元で言った。


「ルクスのことは私が幸せにしてあげるから、フェリシアーナは安心していいよ」

「っ!ふざけ────」

「あ!私そろそろ職務に戻らないと〜!二人ともまたね〜!」


 シアナから離れて明るい声で言ったエリザリーナは、そのまま楽しそうな足取りで二人の前から去って行った。

 シアナはエリザリーナによって不機嫌にさせられながらも、今そんなことを考えていても仕方ないため、別のことを考えて口にする。


「……エリザリーナ姉様が何を企んでいるのか具体的にはわからないけれど、あの口ぶりからして自分とルクスくんが結ばれるための行動であることだけは間違いなさそうね」

「そのようですね……いかが致しますか?」

「とりあえず、エリザリーナ姉様の言うというのがいつなのかを、貴族たちの動向や噂といった間接的なものから探ることにするわ……それを特定できたら────その時、が来るまでの間に、どんな手段を使ってでもエリザリーナ姉様の計画を阻止するわ」

「……承知致しました」


 シアナの言うどんな手段を使ってでも、という言葉の意味を理解したバイオレットは、その言葉に静かに頷いた。

 ────ルクスくんを幸せにするのは、エリザリーナ姉様でもフローレンスでも無いわ……ルクスくんを幸せにするのは、私よ。



 この物語の連載を始めてから七ヶ月が経過しました!

 この七ヶ月の間に、この物語を第216話までお読みくださり、本当にありがとうございます!

 あなたがいつも、もしくは過去に一度でも押してくださったいいねや☆、送ってくださったコメントの一つ一つに本当に常に感謝しています!

 この機会に、ここまでお読みくださっているあなたがこの物語を楽しんでくださっているのであればいいねや、この物語の好きなところなどををコメントなどで教えていただけるととても嬉しいです!

 作者は今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、是非あなたも最後までこの物語をお楽しみください!

 今後も応援よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る