第214話 再会

◇ルクスside◇

 フローレンス公爵家の屋敷での朝食を終えた後、僕とシアナは荷物を持って、フローレンスさんはそんな僕たちのことを見送りに、帰りの馬車が来ている門前までついてきてくれた。


「フローレンスさん、昨日と今日は本当にありがとうございました!昨日のお料理はもちろんのこと、先ほど食べさせていただいた朝食も美味しかったです!」

「いえ、こちらこそありがとうございました……きっと喜ばれると思いますので、シェフの方にも伝えておきますね……ですが、ルクス様さえ良ければ、本日から休日ですのでもう少し泊まっていただいても構わないのですよ?」

「い、いえ!そんなに長い間お世話になるわけにはいきません!ですけど……とても楽しかったので、また少し日を開けてからお願いしたいです!今度は僕の屋敷で!」


 僕がそう伝えると、フローレンスさんは目を見開いてから嬉しそうに微笑んで言った。


「まぁ、そういうことでしたら、その日を今から心待ちにさせていただこうと思います」

「はい!僕もとても楽しみです!シアナも、楽しみだね!」

「え?は、はい!」


 突然話を投げかけてしまったからか一瞬困惑している様子だったけど、シアナはすぐにそう元気に返事をしてくれた。

 すると、フローレンスさんがシアナに向けて言う。


「シアナさんも、この度はわざわざ足を運んでくださり本当にありがとうございました……是非今後も、ルクス様のとしてルクス様のことをお支えしていただきたいと願います」


 その言葉を受けたシアナは、フローレンスさんの方を向いて言った。


「はい、これからも、ご主人様のでご主人様のことを支えさせていただこうと思います!」

「……」

「……」


 それから二人は少しの間互いを見つめ合うと、フローレンスさんは僕たちに向けて小さく頭を下げて言った。


「では、ルクス様、シアナさん、お帰りの際は、どうかお気をつけになられてください」

「はい、ありがとうございます!行こうか、シアナ」

「はい!ご主人様!」


 シアナが僕の言葉に頷いてくれると、僕たち二人は目の前にある馬車に乗った。

 すると、フローレンス公爵家を背にして、馬車はロッドエル伯爵家へ向けて走っていく。

 その道中、僕とシアナは、このお泊まり会で食べさせてもらった美味しい料理や、ロッドエル伯爵家とはまた部屋やリビングの装飾が違ったことなどについて楽しく話し合った。



◇シアナside◇

 馬車がロッドエル伯爵家に到着して、ルクスとシアナの二人は馬車から降りた。

 直後、シアナが言う。


「ご主人様、少々今から買いに行きたいものがありますので、街に買い出しへ赴かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「うん、もちろんいいよ、いつもありがとうね、シアナ」

「いえ!では、行って参ります!!」


 ルクスに頭を下げると、シアナはそのまま馬車に乗る。

 そして、その馬車が進み始めると────


「お嬢様、本日外に出られるというお話は元々無かったかと思われますが、何かをなされるおつもりなのですか?」


 馬車に並走する形で、バイオレットが窓越しに聞いてくる。

 それに対して、シアナが言った。


「心配しすぎかもしれないけれど、エリザリーナ姉様が妙な動きを見せているらしいから、このまま王城に行って少し探ることにするわ……屋敷には護衛もたくさん居るから、ひとまず今はあなたもこの馬車に乗って私と一緒に王城へ来なさい」

「承知しました」


 そう返事をすると、バイオレットは軽やかな身のこなしで馬車の中へ入ると、つい先ほどまで馬車と並走していたというのに息も切らさず静かに座る。

 すると、シアナは窓の外を見ながら小さな声で呟いた。


「エリザリーナ姉様……今度は何を企んでいるのかしら」



◇ルクスside◇

「僕に客人って、一体誰だろう」


 フローレンスさんの屋敷から帰った後。

 少しの間勉強をしていると、僕に客人の方がいらっしゃったということで、今屋敷の門前で待ってもらているらしいため、僕は門前に向けて歩いていた。


「シアナ……はさっき出て行ったばかりだし、そもそもシアナだったら客人なんて言わないはず……もしかして、僕たちが何か忘れ物をしていて、それをフローレンスさんが届けに来てくれたのかな?」


 頭の中で納得の行く答えを見つけることができた僕は、門前にフローレンスさんが居るのを想像しながら歩き、いよいよ門前に到着した。

 すると────


「久方ぶりだな、ロッドエル」


 そこに居たのは、艶のある長いワインレッドの髪に、切れ長のある赤い瞳をした、凛々しい雰囲気の女性────レミナさんだった。

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