第211話 殺意
◇ルクスside◇
シアナ……!?
まずい……!
フローレンスさんと一緒にベッドで横になっているところなんて見られてしまったら、絶対何か誤解されてしまう……!
とにかく、シアナの誤解を解かないと!
「違うんだ、シアナ!これは誤解で────」
そう言いながら僕が勢いよく起き上がると、それによって布団が捲れた。
「……」
布団が捲れたことにより、フローレンスさんが僕のことを抱きしめている光景がシアナの目に映る。
「こ、これも違うんだ!僕たちは、ただ────」
「ご主人様には、今まで何度か女性関係には気を付けられるようにとお伝えして参りましたが、私の言葉はあまり伝わっていなかったのですか?」
「ち、違うよ、シアナ!僕は────」
そう言いかけた僕の前までやってくると、シアナは僕とフローレンスさんのことを引き離して言った。
「お話は後ほどさせていただこうと思いますので、ご主人様には少々このお部屋の前で待っていただきたく思います」
「シ、シアナ……怒ってるの?」
「いえ、ご主人様には怒っておりません……ですが、後ほどしっかりとお話ししたいことはありますので、お時間をいただきたく思います」
「……わかったよ」
シアナは前から僕が女性と関わることに敏感で、それはきっと僕のためなんだと思うけど、今回はシアナに黙って……というつもりはなかったけど、フローレンスさんと添い寝なんてしてしまったから、怒ってしまっているのも仕方ない。
僕は、シアナに申し訳なく思いながらも、ベッドから降りると、シアナが僕のことを見送ってくれる形でこの部屋を後にした。
◇シアナside◇
ルクスが部屋の外に出たのを見送ったシアナは、内側から部屋に鍵を掛けると、その直後────目を虚にして、体を起こしたフローレンスの座っているベッドの方へと向かう。
「とても良い時間でしたので妨げられてしまったのは悔やまれますが、昨夜の時点でこのお泊まり会の目的を遂げることができましたので、ひとまずはこれで満足と致しま────っ」
そう言いかけたフローレンスに対して、シアナは懐から短刀を取り出すと、殺意を持って容赦無くフローレンスに攻撃を仕掛ける。
フローレンスは立ち上がってそれを避けて言った。
「……今の攻撃は、私が避けなければ致命傷となってしまっておりましたよ」
「えぇ、私はここであなたの命を奪うつもりなのだから当然よ」
「命を奪う、ですか……第三王女様にとって不快なことが起きてしまったとはいえ、そのようなお言葉を口にするような方はルクス様に相応しく────」
「黙りなさい」
無機質な声で言うと、シアナは俊敏な動きでフローレンスに斬りかかる。
が、フローレンスはシアナから距離を取ってそれを避ける。
「何をそんなに怒られているのですか?いくら第三王女様とはいえ、この場で私の命を奪うというのは後先を考え────」
「黙りなさいと言っているでしょう……ルクスくんとは、私がするはずだったのよ、私が……それを、あなたは私から奪ったのよ……絶対に許さないわ……」
ルクスにも色々と言わないといけないことはあるが、それ以前にシアナにとってまず許せないのはルクスを誑かしたであろうフローレンスのことだ。
その怒りをフローレンスに向けるように言うと、フローレンスは少し間を空けてから言った。
「なるほど……状況だけ見れば誤解なされてしまうのも仕方ありませんが、私とルクス様は第三王女様がご想像なされているような────」
「何度言ってもわからないようだから、直接黙らせてあげるわ!」
そう言って、シアナはフローレンスに斬りかかる。
つい先ほどまでルクスとベッドの上に居たフローレンスは武器を携帯しておらず、反撃することができないためシアナの攻撃を避け続ける。
流石の反応速度を持っていたフローレンス……だったが、ずっと攻撃をされ続けたことによって、一つの隙が生まれた。
「っ……!」
「あなたは、ここで消えなさい」
無機質な声でそう告げたシアナが、フローレンスの隙を突く形で間違いなく致命傷となる攻撃を加えようとした────その時。
同じく短刀によってシアナの攻撃が受け止められると、そのシアナの攻撃を受け止めた黒のフードを被った少女、バイオレットが言った。
「────お嬢様、お気持ちはご理解できますが、どうか一度落ち着きになられてください」
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