第208話 就寝前
◇シアナside◇
ルクスの体を洗った後。
三人で一緒にお風呂に浸かりある程度の時間が経つと、ルクスからお風呂を出ることになった。
よって、ルクスは今脱衣所で服を着ているため、今このお風呂場にはシアナとフローレンスの二人だけが残っている。
そんな中で、シアナが言った。
「ルクスくん、大丈夫かしら……最初からそうだったけれど、最後の方は特に私たちのことを見て緊張していた様子だったわ」
二人の容姿や体の密着などによる刺激か、もしくは純粋にお風呂場の熱気によるものか、その両方なのか。
ルクスは、このお風呂場に居る間ずっとどこか緊張している様子だった。
「あの状態で一人で服を着られるかわからないから、私は手伝ってくることにするわね……フローレンスはここで待っていてちょうだい」
「お待ちください」
そう言ってお風呂場のドアの方を向いて移動を始めようとするシアナのことを声で止めると、フローレンスは続けて言った。
「そうして、ルクス様とお二人になろうとしていることなどわかっておりますので、それを許すわけには参りません」
「……」
その言葉を聞いたシアナは、ドアの方を向くのをやめると、再度フローレンスと向かい合って言った。
「はぁ、どうして私がルクスくんとじゃなくて、あなたと二人でお風呂になんて入っていないといけないのかしら」
「それは私も思っていることですが、この状況では仕方ありません……時に第三王女様、最近第二王女様が何やら動かれているご様子ですが、あれは王族の方々の総意によるものなのですか?」
「エリザリーナ姉様が……?初耳ね」
「そうでしたか……フローレンス公爵家には声が掛かっておりませんので詳しいことは知らないのですが、どうやら第二王女様が公爵家の貴族を中心として接触しておられるようです」
────エリザリーナ姉様が、公爵家の貴族を中心として接触……?調停のため、とは考えづらいわね……もしそれが揉め事なら、直接声を掛けられていないフローレンスの耳にも入るほど問題を大きくしてしまう失態を、あのエリザリーナ姉様が見せるわけがないもの。
となると、国とは関係なく、エリザリーナの私情による行動。
────前に王城で会ったときはそんな動きをしているようには思えなかったけれど……念のために、探っておく必要がありそうね……フローレンスだけでも厄介なのだから、エリザリーナ姉様にはもう少し大人しくしておいて欲しいところだわ。
心の中でそう願ったシアナだったが────その願いは、エリザリーナによって、最悪な形で裏切られることとなる。
◇ルクスside◇
二人の刺激的な姿とか、お風呂場という場所の熱気によって、お風呂に浸かっている時の最後の方は頭がぼんやりとしていた。
けど、着替えている間にどうにか元の意識に戻って来て、着替え終えた僕とシアナ、フローレンスさんの三人で今日それぞれが眠る部屋のある廊下までやって来た今では、ほとんどぼんやりとしたものも無くなっていた。
「では、ルクス様とシアナさんは、本日この屋敷に来てから最初に荷物を置いたお部屋でお眠りになられてください……それぞれの部屋の前には護衛の方も居ますので、安心してお眠りになることができるかと思います」
「ありがとうございます、フローレンスさん!」
「いえ、このくらいは当然のことです……では、本日はおやすみなさいませ、ルクス様、シアナさん」
「おやすみなさい!」
「……おやすみなさい」
僕たちは互いにおやすみを言い合うと、それぞれの部屋に入った。
部屋には高級そうな家具や大きなベッドが置いていて、とても客人用の部屋とは思えないほどの部屋だった。
「……」
時計を見てみると、僕がいつも眠る時間までまだ時間があった。
そのため、少し読書をしてから眠ることにして、ソファに座って読書をしていると────部屋のドアがノックされた。
「こんな時間に誰だろう……」
そう呟きながらもソファを立って、ゆっくりとドアを開けると……そこに立っていたのは、フローレンスさんだった。
「ルクス様……入らせていただいても、よろしいでしょうか?」
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