第200話 お泊まり会

◇ルクスside◇

「ご主人様!お荷物をお持ちしました!」

「ありがとう、シアナ」


 ────放課後の学校帰り。

 今日はフローレンスさんとお泊まり会をする日で、どちらのお屋敷でお泊り会をするのか話し合った時に、フローレンスさんが前の祝勝会のお返しがしたいと言ってくださったから、お泊まり会はフローレンスさんの屋敷で行うことになった……そして。


「シアナは、もう準備できてる?」

「できております!」


 僕だけでなく、シアナもお泊まり会に参加することになった。

 それは、シアナが僕と一緒に居たいと言ってくれたことと、フローレンスさんとも久しぶりにお話がしたいからということで、僕がそのことを伝えてお願いしてみたところ、フローレンスさんが快く引き受けてくださったからだ。


「お泊まり会……楽しみだね、シアナ」

「はい!とても楽しみです!」


 笑顔でそう言うシアナと一緒に、僕は荷物を持って馬車に乗ると、フローレンス公爵家の屋敷へと向かい始めた。

 すると、少ししてからシアナが聞いてくる。


「……ご主人様は、今まで他の貴族の方のお屋敷に宿泊するといったことはして来ていなかったとおりますが、どうして今回はそれを行おうと思われたのですか?」


 フローレンスさんは「将来ルクス様と結ばれることを考えた時に、今のうちから一日という時間を通してルクス様と時間を過ごさせていただきたいと思ったのです」と言っていたけど、婚約のことについて他の誰かに相談する前に、まずは僕一人だけで答えを出したいからシアナにもまだ話せない。


「フローレンスさんとは貴族学校でもいつも一緒に居るぐらい仲が良いからだよ、フローレンスさんとならお泊りをしてもとても楽しそうだしね」


 婚約のことは伏せているけど、それ以外の本当のことを伝えると、シアナは少し間を空けてから言った。


「そうなのですね……でしたら、もしフローレンス様以外が今回のようなお話をお誘いをして来ていたら、ご主人様はその誘いに乗っていましたか?」

「フローレンスさん以外……」


 フローレンスさん以外というのは範囲が広すぎて、僕がどう答えれば良いかを考えていると、そんな僕のことを見たシアナが言った。


「例えば、第三王女フェリシアーナ様などから今回のようにお泊まりのお話をいただいていたら、ご主人様はいかがされていましたか?」

「フェ、フェリシアーナ様!?」


 僕が婚約の話をいただいているフェリシアーナ様の名前が出たことと、あのフェリシアーナ様とお泊まりという言葉に少し驚いてしまったけど、僕はしっかりと考えてから言う。


「フェリシアーナ様とお泊りをするってなると、とても緊張してしまうと思うけど────フェリシアーナ様のことをもっと知ることのできる機会になると思うから、緊張しながらもお泊まりさせていただいてたと思うよ」

「っ……!そうなのですね!!」


 シアナは嬉しそうに頬を赤く染めて、大きな声でそう言った。

 その後、何故か嬉しそうにしているシアナと一緒に馬車に乗っていると、馬車がフローレンス公爵家の前に到着したため、僕たちは馬車から降りる。

 すると────


「お待ちしておりました、ルクス様、シアナさん」


 そこには、フローレンスさんが立っていて、僕たちのことを出迎えてくれた。


「フローレンスさん!お出迎えしてくださってありがとうございます!」

「いえ、大層なことではありませんのでお気になさらないでください……それはそれとして────ルクス様、それにシアナさんも、本日はよろしくお願い致します」

「はい!よろしくお願いします!」

「……よろしくお願いします」


 それから僕とシアナは、フローレンスさんに連れられる形でフローレンス公爵家の中へと入った。

 僕はシアナとフローレンスさんの二人と過ごしていて楽しいし、シアナとフローレンスさんも仲が良い。

 そんな二人と一緒のお泊まり会が今から始まるということに、僕はとても胸を躍らせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る