第192話 注目

◇ルクスside◇

 ────今日はフェリシアーナ様と二人で過ごす日。

 僕は、とても緊張しながらも、待ち合わせ時間より少し前に待ち合わせ場所である街の噴水前に到着した。

 すると……そこには、とても高そうで綺麗な服を着た、街の噴水前に立っているだけですごい風格を放っているフェリシアーナ様の姿があった。


「っ!フェリシアーナ様のことを待たせちゃってる……!早く行かないと!」


 僕は、一秒でも長くフェリシアーナ様のことを待たせてしまうわけにはいかないと思い、すぐにフェリシアーナ様のところまで行くと声を掛けた。


「フェリシアーナ様!お待たせしてしまってすみません!」


 僕がそう伝えると、フェリシアーナ様は僕の方を見て優しい声色で言った。


「私が少し早く来てしまっただけだから、気にしなくて良いわ……それよりも、ルクスくん」

「はい」


 フェリシアーナ様は、僕の右手を取ると、僕の目を見て言った。


「剣術大会準優勝おめでとう……私も王族席から見ていたけれど、とても素晴らしい剣技だったわ」

「っ!本当ですか!?」

「えぇ、剣術大会に優勝したのはフローレンスだったけれど、私はルクスくんの実直な剣が一番好きよ」

「フェ、フェリシアーナ様にそう仰っていただけて、とても嬉しいです!」


 僕が心の底から嬉しくなってそう言うと、フェリシアーナ様は僕に微笑みかけてくれてから周りを見て言った。


「……ここで長話をしていると人目を集め過ぎてしまいそうね、お店を予約してあるから、ルクスくんさえ良ければ今からそこに向かわないかしら?」

「っ!も、もちろん大丈夫です!」

「良かったわ、なら向かいましょう」

「はい!」


 ということで、今からお店に向かうことになった僕とフェリシアーナ様は隣り合わせになって、そのお店に向けて隣り合わせになって歩く。


「……」


 フェリシアーナ様……僕は、まだするべきお返事を出来てないのに、こんなに優しくしてくれるなんて……本当に、優しくて良い人だ。

 僕が隣を歩くフェリシアーナ様のことを思いながらそんなことを考えていると、ふと周りからの視線に気が付いた。


「……たくさん見られてますね」

「そうね」

「……フェリシアーナ様は、よく街には来られるんですか?」

「あまり来ないわね……来ることがあったとしても職務でだから、最近はプライベートで来ることはほとんど無いわ……加えて言うなら、この第三王女フェリシアーナが男の子と横並びになって街で歩くのは、職務もプライベートも含めてこれが初めてよ」

「えっ!?」


 プライベートはともかくとしても、職務まで含めて初めて……!?


「だから、当然私が第三王女フェリシアーナだということで皆の注目が集まっているのは事実でしょうけれど、それ以上に私が男の子と隣を歩いているということでも注目を集めているのでしょうね」

「注目……」


 前までの僕だったら、きっと今の言葉を聞いただけでも、かなり萎縮してしまっていたと思う。

 というか、実際、今でも少しそれに近い状態になりそうになってしまっている。

 でも……フェリシアーナ様やフローレンスさんに婚約のお話をされて、色々な人に応援されながら色々な人と剣を交えて剣術大会で準優勝して……そんな僕が────ここで、弱気な理由で萎縮するわけにはいかない!

 そう思った僕は、思わず萎縮してしまいそうになった心をグッと引き締めて、フェリシアーナ様の隣を歩いている者として、今の僕にできる最大限に堂々とすることにした。


「ルクスくん……かっこいいわ」

 

 フェリシアーナ様は、そんな僕のことを見て、言葉は聞き取れないけど温かい感情が込められていることだけはわかる声色で何かを言った。

 ……今の僕がフェリシアーナ様の隣で堂々としようとしても、まだまだ不自然で、フェリシアーナ様のような自然な風格のようなものはなっていないと思う。

 それでも────いつかは、僕を思ってくれる人や、民の人たちのためにも、僕は絶対に立派になってみせる……!

 僕は、今までの決意にさらに積み重ねて心の中で力強くそう言うと、フェリシアーナ様と一緒にお店に向けて歩いた。

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