第162話 決勝戦進出
◇ルクスside◇
────元々百人近く居た剣術大会の参加者も、残り四人にまで絞られた。
僕とフローレンスさんと、他の二人……ここまでの数試合は、フローレンスさんやバイオレットさんと剣の練習をしていたこともあってかなり順調だったけど、この準決勝まで来るとレベルはかなり高くなるはずだ。
最悪の場合、ここでフローレンスさんと当たってしまってどちらかを蹴落とすような形になってしまうかもしれない。
それだけは避けたいと心の中で願い、心の中で緊張感を募らせていると、レザミリアーナ様が言った。
「準決勝第一試合、公爵家からフローリア・フローレンスと、同じく公爵家からノーラ・アシュエルの二名は、速やかに闘技場の中央へ移動するように」
その言葉を聞いた僕の隣に座っているフローレンスさんは、立ち上がると僕の方を向いて微笑んで言った。
「ルクス様と準決勝で蹴落とし合うようなことにはならないようで、とても安心いたしました」
「っ!僕も今、ちょうど同じことを考えていました!」
フローレンスさんが同じことを考えてくれていたことに少し嬉しくなりながらそう言うと、フローレンスさんが言った。
「では、私は先に決勝戦へのチケットを受け取らせていただこうと思います」
「が、頑張ってください!」
僕がそう言うと、フローレンスさんはいつも通り穏やかな表情のまま闘技場の中央へと歩いて行った。
こんなに大きな大会の準決勝なのに、全然緊張していないみたいだった……というか、どちらかと言えば今からのフローレンスさんの試合には僕の方が緊張しているぐらいかもしれない。
僕は、そんな緊張感を抱きながらも心の中で叫ぶ。
────応援してます!フローレンスさん!!
◇フローレンスside◇
闘技場の中央へ移動したフローレンスは、横目にルクスの方を見る。
すると、ルクスが自らにとても熱い視線を向けているのを感じた。
────ルクス様の応援が直接胸に響くようです……ご安心ください、ルクス様、私はこのようなところでは敗北など致しません。
「この準決勝の舞台で目の前の相手じゃなくて観客席の方を見るなんて、随分と余裕みたいじゃない」
そう話しかけてきた対戦相手であるノーラに向かい合うと、フローレンスは言う。
「これは失礼致しました、決してそのようなつもりはありませんよ」
「っ!私がフローレンス家のあんたのことを倒して、アシュエル公爵家の名前をこの国中に轟かしてやるわ!!」
「なるほど……でしたら存分に、その剣技をお見せください」
「言われなくてもやってやるわよ!!」
その後、レザミリアーナが両者に剣を構えるよう言うと────
「始め!」
という合図を出した。
そして、その次の瞬間、ノーラはフローレンスに距離を縮めると正面から剣を振る────と見せかけて、裏を取った。
「もらったわ!!」
そう言って剣を振るったノーラの剣を読んでいたフローレンスは、剣を背に構えてその剣を受け止めて言った。
「体の動きだけなら見事なフェイントと言えますが、私との距離を縮めている間の剣の構え方によってそれを台無しにしてしまっているように思えます」
「うるさい!たった一回見切ったぐらいで!!」
その後も、ノーラはフローレンスに連続で攻撃を行う。
フローレンスは、それらを全て最低限の剣の動きで受け流しながら言った。
「公爵家の方、それもここまで勝ち残って来られている方というだけあって、基礎だけでなく応用的な部分も熟知されているご様子……ですが────残念なことに、私の方が上手のようです」
そう言ったフローレンスがノーラの剣を受け流すと、その受け流した勢いでバランスを崩させ、その隙を突いてノーラの首元に細剣を突きつけた。
「っ!」
「あなたの剣も、良い剣でしたよ」
「────そこまで!勝者、フローリア・フローレンス!」
レザミリアーナのその声と同時に、観客席からは歓声が上がる。
すると、フローレンスはそっと細剣を下ろして鞘に納め、ノーラも剣を鞘に納めるとフローレンスに言った。
「……今回は負けといてあげるけど、いつかフローレンス公爵家の立ち位置はこの私の家のアシュエル公爵家がもらうんだから!覚悟してなさいよね!!」
「楽しみにしております」
フローレンスがそう返事をすると、アシュエルはこの闘技場を去って行った。
その背中を見届けたフローレンスも、剣を新しいものに変えてから自らの席に戻ると、その隣に居るルクスが言った。
「決勝進出おめでとうございます!フローレンスさん!」
「ありがとうございます……次はルクス様の番ですね、応援しております」
「っ!ありがとうございます!」
◇ルクスside◇
────準決勝第二試合で、相手の人と剣を交えながら僕は思う。
僕はここで勝って、決勝戦に行かないといけない……それは練習に付き合ってくれたフローレンスさんやバイオレットさんだけじゃなくて、シアナやエリナさんのためにもだ……だから、絶対に勝つんだ!!
そのことだけを考えて剣を交え続けると────僕は段々と相手の人の癖を掴めてきて、剣を弾き飛ばして剣を突き付けた。
「そこまで!勝者、ルクス・ロッドエル!そして、この時点で決勝戦は公爵家からフローリア・フローレンス、伯爵家からルクス・ロッドエルで決定した!」
レザミリアーナ様がそんな声を上げた瞬間、闘技場は今までに無いほどの歓声に包まれた。
やった……!決勝戦だ……!!
僕も、その歓声に当てられて胸の中に高まりを感じながら剣を取り替えに観客席下にある廊下に入ると────
「ご主人様!決勝戦進出おめでとうございます!」
「シ、シアナ!!」
そこにはシアナの姿があって、シアナの姿を見た瞬間────僕は、今の感動の勢いでシアナのことを強く抱きしめた。
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