第139話 違和感

 お風呂場でシアナのことを待っていると────しばらくしてからお風呂場のドアが開いて、そこからタオルで胸元を押さえている、湯煙に包まれたシアナが姿を現した……湯煙があるから普段と同じ感覚でシアナのことを視認できているというわけでは無いけど、それでもシアナのことを確かに視認することはできた。

 色白で細く、くびれのある体に、女性としてとても大人びた体つき……それに加えて、どこかしなやかな指は────


「ご主人様……?どうかなされましたか?」

「っ!?う、ううん!な、なんでもないよ!」


 シアナは、僕がその場に立ち尽くしてシアナのことをずっと見ているのを不思議に思ったのかそう聞いて来たため、僕は慌てて首を横に振ってそう言うと、シアナは「そうでしたか……」と相槌を打ってくれると、続けて頬を赤く染めて言った。


「でしたらご主人様、その……私は、いかがですか?」

「……え?」


 私は、いかがですか……?


「ど、どういう意味かな?」


 僕がそう聞くと、シアナは普段よりも高い声で慌てた様子で言った。


「も、申し訳ございません、言葉足らずでした……!改めてお伝えさせていただきます……ご主人様、私は────ご主人様にとって、女性として魅力的な容姿をしているでしょうか?」

「……え?……え!?」


 僕は、今までシアナとほとんど────というか、シアナ以外だとしても、僕はあまりそういった話、それも服を着ていない状態でそんなことを聞かれるのは初めてだったため思わずとても動揺してしまった。

 でも、シアナも僕がそれを聞いたら動揺することをわかっていたのか、間を空けずに言った。


「突然このようなことをお聞きしてしまい本当に申し訳ないのですが、ご主人様には私が女性として魅力的な容姿かそうで無いかだけをお答えいたただきたいのです……!どうか、ご主人様が私に抱いたお気持ちをお教えください……!」


 シアナが女性として魅力的かどうか……従者のシアナに対してこんなことを思っても良いのかわからないけど、その答えは見た瞬間から決まっていた。

 ────シアナの容姿は、女性としてとても魅力的だと思う。

 というか、髪型や雰囲気、口調はシアナそのものだけど、メイド服を脱いだだけで胸元の大きさや脚の長さ、他にも様々な要素からいつもは可愛いと感じるシアナがとても大人びて綺麗に見えて、今までに無い感情になった。

 ……今僕はここまでシアナのことを魅力的だと思っているのに、それを言葉にしなかったらシアナが今後そのことを気にしてしまうかもしれないため、僕は思い切って正直に伝えることにした。


「とても、女性として魅力的……だと思う、よ」

「っ……!ご主人様、ありがとうございます……!」


 思い切って、と言ってもその言葉は僕が照れてしまっていることによってとても弱々しくなってしまった……だけど、シアナが本当にとても嬉しそうな表情をしているから、僕はそれでも伝えて良かったと感じられた。

 すると、シアナは僕に近づいてくると言った。


「私も、ご主人様のことを男性としてとても魅力的だと思います!」

「え……!?そ、そんな事無いよ、僕なんて本当に────」

「この言葉だけは、例えご主人様本人であったとしても絶対に拒むことは私が許しません!ご主人様は間違いなく、この世界のどの男性よりも魅力的なのです!」


 シアナは強くそう言い切った。

 この世界の、どの男性よりも……とても大きな言葉だけど、従者のシアナが主人の僕のことをそこまで言ってくれるなら、僕もそのシアナの期待を裏切らないようにこれからも努力していかないといけな────


「あれ……?」


 僕は、シアナの顔を見てふと何かの違和感を抱いた。


「ご主人様……?私の顔に、何かついておりますか……?」

「ううん、そういうわけじゃないんだけど……」


 この違和感の正体を確かめるために、僕はシアナに顔を近づけると、余計にその違和感は強まって、僕はシアナに言った。


「気のせいかな……シアナの顔が、誰かに似てるような気がするんだけど……」

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