第138話 緊張感
「えっと……シアナ?悪いんだけど、今なんて言ったのかもう一度言ってもらってもいいかな?」
僕は、あまりにも衝撃的なシアナの発言に、シアナの言葉ではなく自らの耳の方を疑った……けど、シアナは再度言った。
「よろしければ、本日は私と一緒にお風呂に入りませんか?と申させていただきました!」
僕は、シアナのその言葉を聞いて、僕の聞き間違いでは無かったことを知ると、動揺しながらもシアナに聞いた。
「ど、どうしてシアナは僕と一緒にお風呂に入りたいの?」
僕が降って湧いた疑問をシアナに投げかけると、シアナは言った。
「ご主人様は、剣の練習でお疲れだとお見受けし、実際ご主人様もお疲れだと仰られていました……ですので、少しでもご主人様のお疲れを取るために私もご協力させていただきたいのです!」
僕の疲れを取るために……やっぱりシアナは優しい子だ。
でも────
「シアナの気持ちは嬉しいけど、シアナは女の子だし、僕と一緒にお風呂に入るっていうのは僕も恥ずかしいけど、それ以上にシアナの方が恥ずかしいんじゃないかな?シアナの気持ちは本当に嬉しいけど、無理して僕とお風呂に入ることは────」
「無理などしていません!私は、ご主人様のためでしたら本当に、本当にどのようなことでもでき、同時にして差し上げたいと思うのです!ですからどうか、私がご主人様と共にお風呂に入ることをお許しください!」
シアナの言葉にはとても熱意が込められていて、僕のためならどんなことでもできて、どんなことでもしたいと思ってくれている気持ちに嘘偽りが無いということが伝わってくる……それほど僕のことを思ってくれているシアナのこの提案をそれでも断るなんてことは、間違ってもシアナの主人である僕がしていいことじゃない。
「わかったよ、シアナがそこまで言ってくれるなら、今日は……一緒に、お風呂に入ろう」
「っ……!ありがとうございます!ご主人様!」
そう言うと、シアナは僕に頭を下げた。
……突然シアナとお風呂に入ることになるなんて想像もしてなかったから今でもまだシアナと一緒にお風呂に入るということに現実感が無いというか、衝撃が大きくてまだその衝撃波のようなものが残っている感覚だけど、こう言ってしまった以上はシアナと一緒にお風呂に入る他無い。
その後、僕はシアナとのお風呂のことで頭がいっぱいになりながらもどうにか食堂で夜ご飯を食べ終えると────いよいよ、シアナと一緒にお風呂に入ることになって、僕とシアナは一緒にお風呂場へ向けて廊下を歩き出した。
「幼馴染の人とかが居るとそういう機会もあるのかもしれないけど、僕はそういった人も身の回りに居なかったから女の子とお風呂に入るのは初めてで、シアナの主人の僕がこんなことを言うのも情けないけど少し緊張するよ……シアナは、今まで男の人とお風呂に入ったこととかあるの?」
「いえ、ありません……今後も、ご主人様以外と入ることは無いと思います」
「今後もって、そんなことは無いと思うよ?将来シアナが誰か男の人と婚約したら、その人と入ることだってあるかもしれないからね」
「もちろん存じております……それでも、私がお風呂を共にするのはご主人様だけなのです」
僕は、そのシアナの言葉を聞いて小さく笑いながら言う。
「それだと、僕とシアナが婚約するって意味になっちゃうよ?……なんてね、もうそろそろお風呂場に着きそうだよ」
「……はい」
その後、僕とシアナは一緒にお風呂場前に到着すると、僕が脱衣所で着替えてお風呂に入り、それからシアナがお風呂場に入ってくるのを待つことになった。
僕はシアナのことを待っている間、メイドのシアナにこんな感情を抱いてしまうのはよくないとわかっているけど、それでも異性とお風呂に入るということに対して、異性の人に抱く特有の緊張感を募らせてしまっていた。
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