第100話 他国旅行
◇ルクスside◇
シアナが、思ったよりも早く帰って来てくれて安堵した夜から三日後の朝。
僕は、二日前突然フローレンスさんから一緒に他国へ旅行に行こうと誘われて、少し驚いたけどその日は休日で、特に用事も無かったので僕はフローレンスさんと一緒に旅行に行くことになった。
今は、フローレンスさんが馬車で僕たちのことを迎えに来てくれるのを待っている。
「シアナ、そろそろフローレンスさんが迎えに来てくれると思うけど、準備は良い?」
僕がそう聞くと、シアナが笑顔で言った。
「はい!大丈夫です!」
「うん、じゃああとはフローレンスさんのことを待つだけだね」
最初は僕とフローレンスさんだけで行く予定だったけど、昨日の夜になってシアナも僕に同行したいと言ってきた。
当然、僕としては問題無いけど、昨日の夜に言われたという事もあって、フローレンスさんにシアナのことを連れて行けるかどうかの確認はまだ取れていないから、その点だけが少し不安だ。
僕がそんなことを考えていると、フローレンスさんが着てくださったみたいだから、僕とシアナは一緒にロッドエル伯爵家の屋敷前に来てくれたフローレンスさんの元へ向かう。
「フローレンスさん、おはようございます!」
僕がそう朝の挨拶をすると、フローレンスさんは穏やかに微笑んでくれながら言った。
「はい、ルクス様、おはようございます」
そして、そう言ったあと、フローレンスさんは僕の後ろに居るシアナに目を向けて言った。
「……ルクス様、どうしてシアナさんがこの場に居るのでしょうか?」
そう聞いてきたフローレンスさんに、僕は慌てて説明する。
「す、すみませんフローレンスさん!シアナが昨日の夜、今日の僕とフローレンスさんの他国旅行について来たいと言ってきて……僕も、できることならシアナの願いは叶えてあげたいのでシアナのことを連れて行きたいんです……事前にフローレンスさんに確認すべきことだと思ったのですが、夜に突然窺うというのは迷惑かなと思い、言えませんでした……でも、もしご迷惑であれば、シアナには屋敷で待っててもらうので、遠慮なく言ってください!」
僕がそう事情を説明すると、フローレンスさんは少し間をあけてから僕に優しく微笑みかけてくれながら言った。
「いえ、一人増えたところで然程問題はありませんので、シアナさんも共に来ていただいて結構ですよ」
「っ……!ありがとうございます!」
そう言って、僕はフローレンスさんに一度頭を下げる。
そして、僕が頭を挙げると、シアナがフローレンスさんに言った。
「私が共に行くことを認めてくださりありがとうございます、フローレンス様」
「先ほども言いましたが、大した問題ではありませんのでお気になさらないでください」
そう言って、二人は互いに微笑み合っていた。
……前にフローレンスさんの屋敷で過ごした時、二人だけで話している時間があったけど、やっぱりあの時のおかげでかなり二人の距離が縮まったのかな。
僕は、やっぱりそのことを嬉しく感じながら、二人と一緒に他国へ向かう馬車へ乗り込んだ。
◇フローレンスside◇
「ルクス様は、他国へ赴かれたことはあるのですか?」
「いえ、お恥ずかしながら今日が初めてなので、とても楽しみです……そういえば、シアナは他国に行ったことがあるの?」
「はい、実は少しだけあります」
「そうだったの!?どんな国に行ったの?」
「それは────」
ルクスとフェリシアーナが雑談を交えているのを横目に、フローレンスはあることを思考していた。
────第三王女様がここまで強引に、私とルクス様が二人で他国へ入ったという記念を無くしにかかって来られるとは。
フェリシアーナが第三王女として他国交渉へ赴かなければならない立場上、ルクスとフローレンスが二人になってしまうのは時間の問題。
それでも、ルクスと初めて他国へ入った異性という記念を、フローレンスだけに得させないために、おそらくフェリシアーナはこの話をフローレンスに持ち出して来た時から予定を変更してまで今この場に居る。
先ほどのフェリシアーナも連れて行きたいという話は「申し訳ありませんが、今回の旅行は二人用で計画しておりまして────」とでも言えば断れた話。
だが────
「そんな国もあるんだね!僕も、今日の他国旅行をきっかけに他国旅行を定期的にしてみようかな……フローレンスさん!僕にこんな機会をくれて、本当にありがとうございます!」
とても嬉しそうな表情でそう感謝を伝えてくるルクスに対し、フローレンスは優しく微笑んで言う。
「私がルクス様と共に他国へ赴きたくお誘いさせていただいただけなので、感謝されることはありません……むしろ、私の方こそお受けくださり感謝をお伝えしたいと思っています」
「……僕、初めて他国旅行に行く相手が、シアナとフローレンスさんで、とても嬉しいです!」
「っ……!」
ルクスのとても明るい笑顔を見て、フローレンスは思わず胸を打たれた。
フェリシアーナのことを連れて行きたいという話は、断れた話だが────もしそれを断ってルクスのことを少しでも悲しそうな表情、残念そうな表情にさせてしまったらと考えると、フローレンスにはとてもじゃないが断ることなどできなかった。
ルクスのことを第一に考えるが故に、自らの理想とするルクスと二人での他国入国を果たすことはできなくなってしまった……が、フローレンスに後悔はない。
「私も、ルクス様と今から共に他国へ赴くのだと考えただけで、胸が高鳴ります」
フローレンスが笑顔でそう言うと、ルクスもとても明るい笑顔を見せた。
────目の前に居るルクス様が、笑顔で居てくださること……それだけで、私はこんなにも満たされるのです。
その後、しばらくの間三人で言葉を交わしていると、今から三人が入国する国。
────経済の中心国、カティスウェア帝国前へ到着した。
◇
この物語は、いよいよ100話を迎えることができました!
作者自身この物語を描いていて楽しく、この物語読んでくださっている皆様もこの物語を楽しんでくださっていることがいいねや☆、応援コメントや感想レビューからもとても伝わってきて、間違いなくそれらも作者がこの物語を楽しく描くことのできている理由の大きなものとなっています!
今後もこの物語の応援よろしくお願いします!
◇
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