第70話 当日

◇フローレンスside◇

 ────早朝。

 フローレンスは、家を出る準備を整えながら言った。


「第三王女様の性格や、ロッドエル伯爵家にメイドとして忍び込んでいることを考えれば、本日の夜から行動を起こす可能性が高いと思われますが……万が一、早朝や昼から行動を起こすという可能性も捨てきれませんから、今のうちに三人の男子生徒の現在の所在地を見張ることと致しましょうか」


 その後剣を携えたことで準備を全て終えたフローレンスは、早朝から一人フローレンス公爵家の外へ出て行った。


◇ルクスside◇

 ────休日の昼前。

 今日は、日頃から僕のために色々としてくれているシアナへのサプライズとして、シアナと一緒に出かける日だ。

 シアナには本当にいつも苦労をかけているから、今日ぐらいはいっぱい楽しんで欲しいな。

 僕は、街へ出る準備を済ませると、屋敷の前でシアナの準備が終わるのを庭を見ながら待つことにした。


「本当に、いつも庭をこんなにも綺麗な状態にしてくれているシアナには、感謝しないといけないね」


 僕がそんなことを呟きながらシアナのことを待っていると────少ししてから、庭を見ている僕に後ろから声がかけられた。


「ご、ご主人様!お待たせいたしました!」


 そう声をかけられた僕が後ろを振り向くと────そこには、普段のメイド服とは全く違う服を着ているシアナの姿があった。

 白と水色のグラデーションで編み込まれた服に、白の短いスカート……そして、その白に近い銀髪を一括りにしている。

 シアナは、普段メイド服しか着ていないのが勿体無いほどに容姿が整っていることは知っていたけど……改めてしっかりとメイド服以外の服を着ているところを見ると、そのことを強く認識できる。


「……」


 僕がそんなシアナの姿に見惚れていると、シアナが言った。


「い……いかがですか?ご主人様」


 今、いかがですかと聞かれたら、答えは一つしかないため、僕はそれを伝える。


「とっても似合ってるよ!やっぱり、シアナは本当に可愛いくて綺麗だね!」

「あ、ありがとうございます!」


 シアナは、嬉しそうに頬を赤く染めて微笑んだ。


「この服は、シアナが自分で選んだの?」

「はい、私に似合うかはわかりませんでしたが、とても好みの服でしたので」

「本当に似合ってるよ!それに、髪の毛の雰囲気が変わるだけでなんだか一気に雰囲気が変わるよ!可愛いとか綺麗とかっていうのはいつも通りなんだけど、その種類が変わるっていうか……なんだか、今のシアナは凛々しくて綺麗に見えるよ!」

「わ、私が凛々しいなどと、そのようなことは……」


 そう言いながらも、シアナは口元を結んで嬉しそうにしている。

 本当に、シアナは従者として、そして一人の女の子として可愛い。

 僕は、そんなシアナの頭を撫でて言う。


「シアナ、今日は僕からシアナへのサプライズだから、僕に遠慮せずに、シアナはただ楽しむことだけを考えてね」

「は……はい!」


 明るい声でそう返事をしてくれたシアナのことを見て、僕は嬉しくなってシアナに向けて微笑んだ。

 そして、僕とシアナは二人で一緒に街へ出た。



◇エリザリーナside◇

 エリザリーナは、得た情報によって三人の男子生徒の現在の所在地はその三人の男子生徒が万が一の時に備え用意していた街外れにある建物であることと、処理可能日が本日からであることを把握していた。


「街外れにあるなら、昼に処理しに行っても夜に処理しに行っても一緒だから、今からもう処理に行っちゃおっかな……はぁ、今までこの国のために色々なことをしてきたけど、今までしてきたどんなことよりも、直接ルクスのためになることをできる今日の方がとってもやりがいがありそうだよ……ルクスは安心して、全部私に任せてね」


 エリザリーナは、遠くに居るルクスへ優しくそう伝えると、処理のための行動を開始した。

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