第63話 恋
◇ルクスside◇
フードを外したことにより覗かせたエリナさんの顔は────とても魅力的な顔だった。
目はパッチリと開いていてまつ毛は長く、鼻は小さくて唇には艶がある。
そして、色白で顔が小さく、少しだけフェリシアーナ様を思わせるような綺麗な顔立ちをしていたけど、どこか可愛さのようなものも感じられる顔だ。
加えて、二つ括りにされている明るいピンク色の髪は、まるでエリナさんの性格を表しているような色合いだった。
……でも────どうして、エリナさんは悲しそうな顔をしているんだろう。
それに、小さな声だったから僕の聞き間違いだったかもしれないけど、ばいばいって────僕がそんなことを考えていると、エリナさんが言った。
「……どうかな?ルクス、私の顔」
気になることはあるけど、ここは思ったことを正直に伝えよう。
「とても魅力的だと思います!」
「っ……!」
僕がそう伝えると、エリナさんは何故か目を見開いて驚いた様子になった。
「……エリナさん?」
「う、ううん、なんでもない」
そう言いながらも、エリナさんは少し動揺している様子だった。
前に、確か自分の容姿を可愛いと言っていたから、容姿を褒められたことに対して驚いたりはしないと思ったけど……どうしたんだろ?
◇エリザリーナside◇
ルクスにはなんでもないと言ったエリザリーナだったが、その心中はとてもなんでもないと言える状態では無かった。
エリザリーナは魅力的だと言われることには慣れていて、ルクスにもそう言われることぐらいは想定していたためその言葉によって動揺しているわけではない……今ルクスの放った言葉には全く下心が無く、そこには純粋に魅力的なものを褒めているキラキラとした瞳があるだけで……エリザリーナは、そのことに驚いていた。
────容姿の良い女を見れば、男の子なら少しはそういった下心を抱くものじゃないの?どうしてルクスはそんなに綺麗な目で私のことを見られるの?本当は私のことを魅力的だと思ってないから?ううん……違う、私の勝手な考えで、このキラキラとした目を否定したらいけない……ルクスが嘘なんて吐いてないことなんて、私が誰よりも分かる。
今まで経験したことの無い矛盾。
予測できないこと。
────違う、私が本気になれば、ルクスだって……お願いだから、期待させないで!どうせ夢なんだから!!
心の中でそう叫びながら、エリナは笑顔を作り、ルクスに対して上目遣いをして言った。
「ルクス……私、可愛い?」
表情、声のトーン、微細な動作、全てが男なら無意識に魅力を感じ恋に落ちてしまうものでそう言った。
────ルクスだって私が本気で落とそうと思えば、簡単に落とせるんだから……王子様なんて、居ないんだから。
内心ではそう思いながらも、そのことは全く表情に出さない……これで少しでも、ルクスが今までとどこか違う反応を見せれば、結局ルクスも他の男と同じ────表面しか見れない人間、ということでエリザリーナが今までルクスに見てきた夢を終わらせることができる……が。
「はい!とっても可愛いと思います!」
「っ……!」
そう言われたエリザリーナは、自分でも気付かない間に頬を染めていた。
────ど、どうして!?どうして私が逆に顔を熱くしてるの!?
この瞬間、エリザリーナは自覚した……先ほどルクスのキラキラとした瞳を見た時、その瞳を見て驚いたと思っていたが────あれは驚いていたのではなく、その瞳に惹かれていたのだと。
心臓の鼓動が今までに無いほど高まっていたエリザリーナだが、ルクスはそんなエリザリーナに言う。
「あの……エリナさん、僕の気のせいだったら気にしなくて良いんですけど、さっきはどうして悲しそうな顔をしてたんですか?」
────私のことを気遣ってくれてる!容姿っていう表面的なものじゃなくて、本当の意味で私のことを……!
そんなルクスのことを心配させるわけにはいかないと思ったエリザリーナは、すぐに言った。
「なんでも無いの!気にしなくて良いから!」
「そうですか……?あと、ばいばいって聞こえたような気がしたんですけど────」
「それも気にしなくて良いから!……もう、ばいばいなんてしないよ」
エリザリーナは、最後にそう小さく呟いた。
────ルクスが嫌って言っても、ばいばいなんてしてあげない……やっと見つけた王子様には、ずっと私の傍に居てもらわないとね!
「……」
ルクスはまだエリザリーナの悲しそうな表情のことや、ばいばいと聞こえたことを気にかけている様子だったが、今のエリザリーナの嬉しそうにしている表情を見て、エリザリーナが何を嬉しいと感じているのかはわからなかったが、エリザリーナの言う通りもうそれらのことは気にしなくても良いと判断した。
そして、ルクスはとても優しい笑顔でエリナの顔を真っ直ぐと見ながら言う。
「僕、エリナさんの顔が好きです」
「……え?」
「可愛くて綺麗で魅力的なのはそうなんですけど────それ以上に、エリナさんが普段から自分の顔を大切にしていることが伝わってきて」
「っ……!ルクス……!」
そのルクスの言葉に、ただでさえ高鳴っていた胸のドキドキを抑えることができず、エリザリーナはルクスのことを抱きしめた。
────物語みたいな王子様は、もう要らない……私には、それよりも素敵なルクスが居るから!
これが、エリザリーナがルクスに恋をした瞬間だった。
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