第61話 再会
◇ルクスside◇
休日が終わった三日後、貴族学校での時間を終えた僕は、その帰りに街に寄ってみることにした。
僕はそもそも、基本的に人々が賑やかで明るい場所である街が好きだからその街並みを見たい……というのも、僕にとって街による大きな理由の一つだけど、今日はどちらかといえばそっちの方ではなく、一週間ほど前に出会ったエリナさんと出会えるかもしれないと思ったからだ。
「なんて言っても、エリナさんだって毎日街に来てるわけじゃ無いだろうから、会える確率はかなり低いんだけど……」
エリナさんと会うための待ち合わせ場所とかを決めておけば良かったかな……そうだ。
「前エリナさんと出会った洋服店に行ってみよう」
ようやく捻り出したこの案でも、エリナさんと出会える確率は低い……けど、僕にとってこの街でエリナさんと出会える場所としてまだ一番可能性があるのは今のところあの洋服店しかない。
そう思ってあの洋服店へ向かった僕がその通りに到着した時────見え覚えのある赤のフードを被った人がとてもゆっくり歩いていた。
「ルクス……どこに居るの……お願いだから、出てきてよ……」
そして、かなり小さな声で何かを呟いている……見覚えのある赤のフードだけど、雰囲気からして少なくとも僕の思っている人物と同一人物とは思えない。
でも、誰であったとしても、あの人はどこか苦しそうな雰囲気だから、僕に力になれることがあるなら力になりたい。
そう思った僕は、その赤のフードを被った人に後ろから近づいて声をかける。
「すみません、大丈夫ですか?何か困っていることがあれば────」
「……その声」
僕が何か困っていることがあれば力になります、と言おうとした時、赤のフードを被った人は小さな声でそう言った。
さっきは距離があったから何を言っていたか聞こえなかったけど、今はしっかりと聞こえた────その言葉の意味を僕が聞くよりも早くに、その赤のフードを被った少女はさっきまでのゆっくりとした動きからは信じられないほどに早く僕の方に振り向くと……
「ルクス!!」
そう僕の名前を呼んで、僕のことを抱きしめてきた。
「ルクス、やっとまた会えた……!」
「え……?え……?」
突然名前を呼ばれて抱きしめられたことに、僕は思わず動きを固めてしまった。
どうしてこの人は、僕の名前を知っているんだ……?
違う、それよりもどうして僕は今突然抱きしめられているんだ?
そう思った僕だったけど────どうして名前を知っているのか、それについては、この人の声を聞けばわかった。
「もしかして……エリナさん、ですか?」
「そう!そうだよ!もう!私ずっと探してたんだから!今までどこに居たの!?」
僕が聞いたことに、赤のフードを被った人────エリナさんは、嬉しそうな声でそう言った……でも。
「ずっと探してた……?」
その言葉の意味がわからずに思わずそう聞き返してしまうと、エリナさんは悲しそうな声で言った。
「うん、本当にずっと……ずっと探してたんだよ?ルクス……朝も昼も、夜になるギリギリの間まで、ずっと……」
……突然のことで状況が理解できないけど、ここまでエリナさんが感情を動かしてくれているなら、僕のすべきことは一つだけだ。
「僕のせいでエリナさんのことを困らせてしまったみたいなので、何かの形でお詫びをさせていただきたいと思います」
「お詫び……?……それなら!今から一緒に私とご飯食べに行こうよ!」
「……え?そんなことで良いんですか?」
「うん!ほら、早く!」
そう言うと、エリナさんは僕の手首を掴んでとても楽しそうに足を進めた。
僕のせいで困らせてしまったお詫びがエリナさんと一緒にご飯を食べることで良いのかと少し悩んだけど、目の前の楽しそうなエリナさんを見ていると、それでも良いような気がしてきて、僕はエリナさんと一緒にご飯を食べに行くために足を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます