第54話 嫌悪感

◇ルクスside◇

 ────休日。

 今日は、フローレンス公爵家の屋敷内でフローレンスさんと過ごさせていただけるということで、僕とシアナは一緒にフローレンス公爵家へとやって来ていた。

 シアナに関しては、シアナも僕について来たいと言っていることをフローレンスさんに伝えると、快く受け入れてくれたので、僕について来ている。

 そして、フローレンス公爵家へと向かっている馬車の中。


「……ご主人様、本日は共にお茶などをして過ごすだけなのですよね?」

「うん、僕はそう思ってるよ」

「かしこまりました」


 改めて確認しないといけないようなことかな……とも思ったけど、シアナはきっと僕に仕えてくれている上で、僕以上に僕のことを考えれてくれているだろうから、僕にシアナの考えを推し量ることなんてできないだろう。

 その後、僕とシアナが雑談を交えていると、馬車がフローレンス公爵家に到着したので僕たちはその馬車から降りる。

 すると、フローレンスさんが僕たちのことを出迎えてくれて言った。


「ようこそルクス様……と、シアナさん、二度目の来訪ですね」

「はい、今日は僕とシアナの来訪を認めてくださってありがとうございます!」

「私の方こそ、来ていただきとても嬉しく思います……早速ですが、屋敷内へご案内します」


 そう言うと、フローレンスさんは僕たちの前を歩く形で僕たちのことをフローレンス公爵家の屋敷内へ案内してくれた。

 僕たちはその玄関に入り、廊下を歩き始める。

 そもそも、フローレンスさんの屋敷に入らせていただくことになった最初の理由は、フローレンスさんが僕の屋敷の装飾を褒めてくれて、今度はフローレンスさんの屋敷の装飾を見てみるといった流れだったと思うけど……


「やっぱり、すごいですね……僕の屋敷よりも、廊下の壁や天井の装飾がとても綺麗に施されていて、フローレンス公爵家の建築力がよく見えます」

「ありがとうございます……と言っても、この廊下はお父様がデザインなされたものなので、私が自慢できるようなことでもないのですが」

「そうなんですね……フローレンスさんのデザインされた場所などはあるんですか?」

「はい、以前お茶会をさせていただいた庭や、私の部屋、そしてリビングの一部などは私がデザインさせていただきました」

「あ、あの庭はフローレンスさんがデザインなされたものだったんですか!?」

「はい」


 そう言って、フローレンスさんは優しく穏やかに微笑んだ。

 ……あの花に包まれた素敵な空間をデザインできるなんて、流石はフローレンスさんだ。


「ですが、庭に置けるものというのはやはり限りがあるので、配置の場所は選べても配置出来る物の選択肢は少ないのです……ですが、私の部屋は全て私がデザインしましたので、よろしければ後ほど私の部屋を見ていってはいただけませんか?」


 フローレンスさんのデザインした部屋……とても興味があ────る!?

 と思った時、僕は咄嗟に後ろから殺気を感じたため後ろを振り返る。


「どうかなさいましたか?ご主人様」


 だが、そこには笑顔のシアナが居るだけで、少なくとも殺気を感じられるようなものはなかった。


「う、ううん、いきなり振り向いてごめんね」


 気のせい……だったのかな。

 ひとまずそう結論づけて、今の僕とシアナのやり取りを静かにみてくれていたフローレンスさんの方を向いて言う。


「すみません、変なことを言ってしまって」

「いえ、お気になさらないでください……先ほどのお話のお返事をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろん、フローレンスさんのお部屋に行かせていただきたいです!是非後でフローレンスさんの部屋へ行かせてください!」

「はい、ありがとうございます、ルクス様」


 そう言って嬉しそうに笑顔を見せてくれたフローレンスさんに客室へ通してもらい、僕がソファに座ると、フローレンスさんは一つのカップに紅茶を淹れて、それを僕の前に差し出してから言った。


「ルクス様、私は少し廊下でシアナさんとお話したいことがありますので、そちらのソファで紅茶をお飲みになりながらお待ちいただいていてもよろしいでしょうか?」


 フローレンスさんがシアナと話したいことってどんなことなんだろう……紅茶の話とかかな?

 それとも、おそらくフローレンスさんもシアナと同じで庭の手入れとかをしているだろうから、その話とかかな?

 どちらにしても、二人が仲良く話をしてくれる分には僕に嫌なことはないし、むしろそれは嬉しいことなため僕は頷いて言う。


「わかりました、僕のことは気にしなくて良いので、ゆっくりと話して来てください」

「ありがとうございます」

「シアナも、失礼の無いようにね」


 僕がそう伝えると、シアナは元気に「はい!」と言ってくれた。

 そして、二人は一度僕に頭を下げてから客室から出て行った。

 二人がどんな話をするのかはわからないけど、僕はフローレンスさんに言われた通り、フローレンスさんの淹れてくださった紅茶を飲みながら、大人しく二人のことを待つことにした。



◇シアナside◇

 フローレンスと一緒に廊下へ出てきたシアナは、フローレンスに聞く。


「フローレンス様……私と話したいことというのは、一体どのようなことでしょうか?」


 ひとまず、フローレンスの思惑を探るためにそうきいたシアナだったが……そんなシアナに対して、フローレンスは言った。


「……あなたには本当に嫌悪感が絶えません、そんな姿でルクス様のことを騙してまで、ルクス様に近づこうとするとは」

「……何のことでしょうか?」

「最初から、あなたにはどこか嫌悪感があったのです……ルクス様とは違い、自分を偽っている存在のあなたに……今までは、その答えを掴もうとしても、雲を掴むような感覚に陥るのみでしたが────先ほど、私はそれを掴むことができました」


 そう言うと、フローレンスはシアナの目をハッキリと見て言った。


「ですから、あなたはもうルクス様の傍に居ることはできないのです、シアナさん────いえ、第三王女フェリシアーナ様」



 いつもこの物語をお読みいただきありがとうございます!

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