第49話 本音
◇シアナside◇
「────そう」
バイオレットが、ルクスに本来の自分の姿を見せたことや、それを見た上でルクスがバイオレットに感謝したことや綺麗と言ったこと────そして、バイオレットがルクスに魅入ってしまったことをバイオレットの口から聞いたシアナは、そう短く返事をした。
そして、続けて言う。
「遅かれ早かれ、こうなるかもしれないことは想定していたけれど……そうね、今回のことは素直に驚いたわ……まさか、あのバイオレットが誰かに恋愛感情を抱くなんて、少し前なら想像もできなかったもの」
「……申し訳ありません」
「良いわ、ルクスくんのあの純粋さを直接受ければそうなってしまうのも当然でしょう、それに────あなたが幸せを見つけることができて、私は嬉しいわ」
シアナは、少しだけ微笑んで言った。
「お嬢様……」
バイオレットは、そのシアナの表情を見てシアナの優しさを改めて感じた。
シアナは「でも」と続けて言う。
「その幸せがルクスくんへの恋愛感情というのは捨て置けないわね……あなた、これからどうするつもり?」
「……どう、とは?」
「決まっているでしょう?あなたも、私やフローレンスがそうしているように、ルクスくんと幸せになるために行動を移していくのかどうかよ」
そう言われたあと、バイオレットは少しだけ間を空けて言った。
「本音を言えば、私もロッドエル様と幸せな未来というものを築いてみたい気持ちはあります……が────私は何よりも、お嬢様とロッドエル様が幸せになられているお姿を目にしたいのです……なので、お嬢様に背くようなことは致しません」
「……本当に、それで良いのね?」
「はい」
バイオレットは即答する。
「それなら、今まで通り私の指示通りに動いてくれるということなのかしら?」
「はい」
バイオレットは、続けて即答する。
「仮に、私が居ない時にルクスくんとイチャイチャできそうなタイミングがあったとしても、イチャイチャしてはダメよ?」
「……はい」
「────今の間は見過ごせないわね」
さっきまで間を空けずに即答していたバイオレットが少し間を空けて答えたことに不信感を抱いたシアナは、そう言って続ける。
「あなた、本音をまだ全て言っていないわね?あなたの本当に望んでいることを言いなさい」
「……やはり、お嬢様には見抜かれてしまいましたね」
バイオレットは少し口角を上げながらそう言って観念すると、シアナの目を見て続けた。
「ロッドエル様とお嬢様が幸せになられているお姿を目にしたいというのは、嘘偽りなく本当です……そして、私がお嬢様に背くようなことをしないというのも……ですが────私の本当の望みは、お嬢様とロッドエル様が幸せになられているところで、その生活の合間に少しだけ私にもロッドエル様との幸せを許していただけるお時間をいただきたいのです」
「もし、私がそれを嫌だと言ったら?」
「申し訳ありませんが、その部分だけはお嬢様の目を欺くようなことになったとしても、お譲りすることはできません……それだけ、ロッドエル様は私の中で大きな存在となってしまったのです」
シアナの目を見て真っ直ぐとそう言うバイオレットのことを見て────やはり、嬉しいと感じた。
バイオレットがようやく、自分以外の存在ではなく自分自身の幸せを見つけたことに……
シアナがそう感じていると、バイオレットは続けて言う。
「────そして、それを実現するためにはロッドエル様のことを王とすることが必須条件となりますので、私は今後お嬢様とロッドエル様、そして私自身のためにも、第一王女様と第二王女様のことを下し、ロッドエル様のことを王とすることに全力を尽くしたいと思います」
「今あなたが言ったのはルクスくんが王になれば複数の女性、この場合だと私とバイオレットと日頃から過ごしていても良くなるという意味でしょうけど、私としては少し複雑ね」
「ですが、お嬢様もロッドエル様のことを王とした方が都合がよろしいはずです……そうでなくとも、お嬢様はロッドエル様のことを王にしたいとお考えだったのでは?」
「……はぁ、やっぱりあなたのことは敵に回したくないわね」
バイオレットは、シアナのことを下手をすればシアナ以上に熟知している。
そのため、シアナにとってはもし敵に回すとなれば間違いなく天敵となる。
そんなシアナの言葉に対して、バイオレットは言う。
「私などお嬢様の足元にも及びませんのでご警戒なされることはありませんが、ロッドエル様を王にするためにも、ロッドエル様が王になられるまでの間はお嬢様とロッドエル様の関係構築を最優先とさせていただき、今まで通りお嬢様の指示なされた通りに動きますのでご安心ください……ただ、それに支障が出ない程度に、隙を見て少しだけロッドエル様と過ごすお時間をいただくことはあるかと思いますので、その点はご了承ください」
「了承できないわ!」
その後、シアナとバイオレットは、今までとは少し変わった形────だが、確実に今までよりも縮まった距離感で少しの間言い合いを行った。
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