第8話 貴族学校入学式

 貴族学校入学式当日の朝。

 僕は必要なものを革製の鞄に入れると、屋敷の外に出てその前に止まっている馬車の前まで来た。

 すると、そこでもう待機していたシアナが僕に話しかけてきた。


「ご主人様、いよいよ本日からですね」

「うん、今日から頑張ってくるよ……シアナも、もしかしたら僕が居ないことで今までと少し勝手が違うこともあるかもしれないけど、何か困ったことがあったらいつでも僕に相談してね」

「ありがとうございます!ご主人様も、何か困り事があればいつでも私にお教えください!」

「ありがとうシアナ……じゃあ、行ってくるね」


 馬車に乗った僕が軽くシアナに手を振ると、シアナは笑顔で僕に一礼した。

 ……シアナの主人として恥ずかしく無いように、僕も今日から改めて頑張らないとな。



◇シアナside◇

「ルクスくん、本当に優しいわ……でも、貴族の中にはあのルクスくんの優しさを利用して邪な考えを企てそうな人間も多いから、そのことだけが心配ね」

「────それをお見過ごしになられるんですか?」


 ルクスが居なくなったことで姿を現した黒のフードを被った長身の少女のその問いに対して、シアナは呆れながら答えた。


「冗談でしょう?もしそんなことがあれば、その貴族の力を奪って社会的に抹殺するわ……とは言っても、入学式初日から他の貴族に何か問題になるようなことをするようなことは無いでしょうし、今日はそのことは考えなくても良い……と思うけれど、あなたは一応今日はルクスくんの方を見張ってくれる?」

「かしこまりました……ですが、お嬢様に何かあった場合の対処は────」

「メイドの時の私ならともかく、この国の第三王女フェリシアーナとしての私に何か仕掛けてくるようなら、その時はそれ相応の対処を私がするから問題ないわ」

「……出過ぎたことを失礼しました」

「良いわ、あなたは早くルクスくんの後を追いなさい」


 シアナがそう言うと、黒のフードを被った少女はシアナの前から姿を消した。

 その後、シアナは一度馬車で王城に向かってドレス姿に着替えると、ルクスの通う貴族学校へと向かった。



◇ルクスside◇

 馬車で十分と少しほどかけて、僕は貴族学校の門に到着した。

 貴族学校というだけあって、門からとても高そうな金の素材で出来ていて、奥に見える校舎と思われる建物には大きな窓がいくつもあって、二階にはテラス、そしてこの辺りではとても有名とされている時計塔もある。

 僕が思わずそれらに見入っていると、とても優しく穏やかな声で後ろから話しかけられた。


「とても素晴らしい建物ですよね、由緒正しき貴族学校と言われるだけのことはあるようです」


 反射的にその声の方に振り返ると、そこには青髪で水色の目をした、とても容姿の整っている優しい表情をした女の人が居た。

 高そうなドレスを着ていて、下のスカートになっている部分にはとても繊細に模様が縫われている……でも、胸元の露出が少し激しく、その大きな胸元が何かの拍子に露出してしまうかもしれないと不安になるほどだった。

 ここで、僕はシアナに気をつけるべきこととして言われたことを思い出す。


『その四、露出度の高い服を着た女性とは関わらないこと』


 ……シアナの言ってくれたことを守るなら関わらない方が良いのかもしれないとも思ったけど、シアナの言っていたのはあくまでも普段の話。

 入学式にそういった服を着てくるのは貴族の人の中では常識とも言えるため、今回は例外で良いだろう。


「はい、とても綺麗で、思わず見入ってました」

「綺麗なものを綺麗と素直に口にできる方には好感が持てます、他の方々を見ているとどうもそれらのことを気にしていなかったようなので少し悲しさを覚えましたが……あなたは、そうではないようですね」


 そう言って、青髪の少女は優しく微笑んだ。

 ……今までに出会ったことがない雰囲気の人だ、マイペースでゆっくりな喋り口調だけど、どこか響くものを感じる。


「あなたとこの場でもう少し話したい気持ちでたくさんですが、入学式がそろそろ始まりますので、私たちも行かなくてはいけませんね」

「そうですね」

「では、ルクス・ロッドエル様……失礼致します」


 そう言って、青髪の少女は僕に一礼して貴族学校の中に歩き去ってしまった。

 どうして僕の名前を知っているんだろうと思ったけど、青髪の少女は歩き去ってしまったためそれを聞くことは出来なかった。

 ……少し不思議な人と話したから緊張感が無くなりそうになったけど、第三王女フェリシアーナ様が来てくださるということを思い出して、僕はまたも緊張感を覚えて入学式が行われるという講堂に移動した。

 その後、数分の間席に座って待っていると、入学式が始まって貴族学校の理事長さんが僕達に歓迎の言葉を送ってくれた。

 そして────


「続いて、第三王女フェリシアーナ様から直接お言葉を賜ります」


 理事長さんがそう言うと、講堂は盛大な拍手で包まれ、その拍手を受けながら────第三王女フェリシアーナ様は僕たちの前に姿を見せた。



 この作品の連載が始まってから、一週間が経過しました!

 ありがたいことに、皆様のおかげでこの作品は今【ラブコメ日間ランキング 2位】【ラブコメ週間ランキング 4位】となっていて、本当にたくさんの方に楽しんでいただけているということを強く感じています!

 この一週間の間にこの物語をここまで読んでくださったあなたの素直な感想をいいねや☆、コメントや感想レビューなどで気軽に教えていただけると本当に嬉しいので、この物語の続きを楽しみにしてくださっている方や現段階でこの作品を好きだと思ってくださっている方は是非よろしくお願いします!

 作者は今後もこの物語をとても楽しく描かせていただこうと思いますので、あなたも引き続きこの作品を楽しんで読んでくださることを願っています。

 今後もよろしくお願いします!

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