おもちゃ箱
シン
★
就職が内定した。
実家を出て行く事になった。
部屋を整理していたら、押し入れの奥から箱が出てきた。
始めは何の箱かわからなかった。
開けてみた。
おもちゃが入っていた。
おもちゃ箱だ。
そこで気付いた。
あー、そんなんあったな。
箱の中身を全部確認する。
どれも見覚えがある。
記憶に残っていた。
良く取っておいたな。
大きくなって、テレビゲームで遊びだすような年齢になる前のおもちゃだ。
大きくなってからは、ゲームばかりしていた。
いや、テレビゲームの話は、今はいい。
おもちゃの話だった。
小さな車を床に接地させて後ろに引く。
手を離すと、凄い勢いで前に進む。
ビューーー。
今でも全然動く。
俺は嬉しくなった。
ブロックで作った家が入っていた。
何回もバラして、色んな形の家を作ったんだった。
カラフルな家。
おもちゃ箱があるなら、あれもあるんじゃないか?
あった。
プラモデル。
二等身のロボットのプラモデル。
何故か、武者とか、ナイトとかいる。
はは。
当時はこれが凄くカッコ良かった。
プラモデルの箱にはナンバーが振ってある。
今は処分したが、確かそうだった筈だ。
俺は百番まで全て揃えた。
番号はその後も続いていたが、全部揃えたのは百番までだ。
当時俺はロボットが好きだった。
そのロボット好きは大学まで続き、授業でロボット工学を学んだ。
俺の思っていたロボットと違った。
その後は、ロボット工学に興味が無くなった。
そして、就職に有利な研究室に入り、大きめの会社の内定を貰った。
入れる会社に入っただけだ。
仕事内容を気に入っている訳じゃ無い。
そうやって大人になっていく、と、勝手に思った。
諦めた。
子供の頃夢見ていた職業ではない。
俺の進路にロマンは無い。
内定は辞退する。
入れる会社に入っても、好きなことをしなきゃ続かないだろう。
俺はゲームも好きだったな。
なんでも良い。
好きなことなら。
おもちゃ箱で思い出した。
俺は好きなことじゃ無きゃ続かない性格だった。
危ない所だった。
おもちゃ箱 シン @01sin
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