おもちゃ箱

シン

 就職が内定した。


 実家を出て行く事になった。


 部屋を整理していたら、押し入れの奥から箱が出てきた。


 始めは何の箱かわからなかった。


 開けてみた。


 おもちゃが入っていた。


 おもちゃ箱だ。


 そこで気付いた。


 あー、そんなんあったな。


 箱の中身を全部確認する。


 どれも見覚えがある。


 記憶に残っていた。


 良く取っておいたな。


 大きくなって、テレビゲームで遊びだすような年齢になる前のおもちゃだ。


 大きくなってからは、ゲームばかりしていた。


 いや、テレビゲームの話は、今はいい。


 おもちゃの話だった。


 小さな車を床に接地させて後ろに引く。


 手を離すと、凄い勢いで前に進む。


 ビューーー。


 今でも全然動く。


 俺は嬉しくなった。


 ブロックで作った家が入っていた。


 何回もバラして、色んな形の家を作ったんだった。


 カラフルな家。


 おもちゃ箱があるなら、あれもあるんじゃないか?


 あった。


 プラモデル。


 二等身のロボットのプラモデル。


 何故か、武者とか、ナイトとかいる。


 はは。


 当時はこれが凄くカッコ良かった。


 プラモデルの箱にはナンバーが振ってある。


 今は処分したが、確かそうだった筈だ。


 俺は百番まで全て揃えた。


 番号はその後も続いていたが、全部揃えたのは百番までだ。


 当時俺はロボットが好きだった。


 そのロボット好きは大学まで続き、授業でロボット工学を学んだ。


 俺の思っていたロボットと違った。


 その後は、ロボット工学に興味が無くなった。


 そして、就職に有利な研究室に入り、大きめの会社の内定を貰った。


 入れる会社に入っただけだ。


 仕事内容を気に入っている訳じゃ無い。


 そうやって大人になっていく、と、勝手に思った。


 諦めた。


 子供の頃夢見ていた職業ではない。


 俺の進路にロマンは無い。




 内定は辞退する。


 入れる会社に入っても、好きなことをしなきゃ続かないだろう。


 俺はゲームも好きだったな。


 なんでも良い。


 好きなことなら。


 おもちゃ箱で思い出した。


 俺は好きなことじゃ無きゃ続かない性格だった。


 危ない所だった。

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おもちゃ箱 シン @01sin

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