第12話 休日だそうですよ③

 ︎︎本当は別のところに行く予定だったらしいけど、シアが目を輝かしてゲームセンター見てたから雫先輩が予定を変更してゲームセンターで遊ぶことになった。シアからしたらほとんどの物が初めて見る物だからね、それにせっかくの休みだしシアには色んなものでを知って楽しんで欲しい。

 ︎︎ちなみに妹はゲームセンターに来てすぐに音ゲーをしに行ったので今この場には居ない。


「ここには不思議な物がいっぱいですにゃ。魔道具でもないのにここまで動かせる人間って凄いですにゃ!」


「シアからしたら機械より魔道具の方が馴染み深いもんね。でも機械の方が色んな人が作れるし便利だよ」


 ︎︎スキルを持ってる人なんてちょっとしか居ないし、スキルを持っていてもできることは冒険に役立つ魔道具を作ったりするだけで、生活に役立つ物は作れない。でも【冒険者】からしたら冒険に役立つ魔道具を作れるスキル持ちの人は重要だし、協会に勤めれば待遇良く仕事ができるはずだ。


「スキルを持っている人は中々居ないですからにゃ、この機械? の方が生活に役立ってますにゃ!」


「確かにうちもスキルを持ってる人って魔道具を作ってる人しか見た事ないかもしれない。もはや魔道具を作るスキルしか人間は手に入らないんじゃないかな?」


「そんなことは無いですにゃよ? ノートの中には産まれつき手に入るスキルは魔道具を作るスキルがほとんどと書いてましたにゃ。ただ、モンスターのスキルもそのモンスターの血液を飲めば得られるかもしれないとも書いてましたにゃ」


 ︎︎僕って一応スキル持ちって会長に言われたんだけどさ、別に魔道具を作れるわけじゃないんだよね。つまり他のスキルなんだけど、もしかして知らないうちにモンスターの血液でも飲んだ……? いやまぁ、”‬ほとんど‪”‬っていうだけだからね、僕がそのほとんどじゃない側なだけかもしれない。

 ︎︎というかモンスターの血液を飲んでたとか考えたくないし、そうだと信じたい。


「うん、聞きたくなかったかな。雫さん、気を取り直してちゃんと遊ぼうか?」


「そ、そうだね夏月くん。シアちゃんは何かやりたいのある?」


「あれがやりたいですにゃ!」


 ︎︎シアが指さしたのはクレーンゲーム、そしてその景品は有名なアニメキャラを猫化したぬいぐるみだ。そのぬいぐるみは髪の色とか髪型、目の色がシアに似てるんだよね、個人的に僕も欲しいかもしれない。


「このぬいぐるみ可愛いね、うちも普通に欲しいかも。それじゃあこれを右のところに入れて操作してね」


「分かりましたにゃ。それで、ボタンが二つあるのはなんですかにゃ?」


「左が横を合わせるやつで、右が縦を合わせるやつだよ。長押しで動いて離した時に止まるからね」


 ︎︎シアは早速百円を入れてクレーンゲームに挑戦する。初めてのシアはどれだけ上手いかな? さすがに一回で取れることは無いと思うけど、前提としてどれだけ持ち上げてくれるのかが重要だよね。

 ︎︎でもここって大型のショッピングモールで色んな人が来るから、悪質店みたいに全く持ち上げてくれないということははないだろう。


「中々難しいですにゃ……」


 ︎︎一回目は持ち上がりはしたものの、穴に向かう途中で落ちてしまった。でも全然取れる可能性がある台でよかった、これなら何回かやればシアもとれるはずだ。


「天乃江様、お手本を見せてくれますかにゃ? 見たら取れる気がしますにゃ」


「うーん、クレーンゲームって基本的には何回も同じ作業を繰り返して取るゲームだからお手本見せてって言われても……」


 ︎︎僕だってクレーンゲームは何回もやったことあるけど、さすがに一回じゃ無理だと思う。やりはするけど、さっきシアがやったように途中で落ちると思うけどね。


「お兄ちゃん、あのぬいぐるみ欲しいの? ちょっと私に任せて」


 ︎︎いつの間にか音ゲーから戻ってきていた妹が百円を入れてクレーンゲームをプレイすると、綺麗にぬいぐるみのタグのところに引っ掛けてそのままぬいぐるみは景品口に落ちた。


「はいこれ、私にとってはタグに引っ掛けることくらい造作もないのです!」


「私が天乃江様に渡そうとしたのに先を越されてしまいましたにゃ……。まぁ天乃江様が手に入れたのならそれでいいですにゃ」


 ︎︎その後、夏月先輩が千円くらいで同じぬいぐるみを取って雫先輩に渡していた。シアは他のクレーンゲームやメダルゲーム、五人で音ゲー対決したりと珍しく五人の休日が被った今日はとても楽しかった。


「それじゃあまたね、次はいつ休みになるか分からないけど」


「雫先輩たちは尚更休みないですよね、まぁかと言う僕も協会からの依頼があるので休みなんて無いに等しいですけど」


「こっちは依頼を受けてなくても大学だけで精一杯だからなぁ……。まぁ天乃江もいずれ経験するよ」


 ︎︎ひとまずそこで雫先輩とは別れたんだけど、よく考えたらシアの家知らないじゃん。


「シア、家まで送っていくよ。でも道は分からないから着いていくだけなんだけど」


「自分の家は無いですにゃよ? 協会で寝泊まりするか、会長の家に行くかですにゃ。今会長は出張に行ってるはずですからにゃ、今日は協会で寝泊まりですにゃ」


 ︎︎協会の二階にあったあの部屋ってシアが寝泊まりしてるところだったんだ。立ち入り禁止の看板があったからなんか重要なものを仕舞ってる部屋かと思ってた。


「良ければうち来る? 親がずっと帰ってこなくてもはや礼華と二人暮らし状態だし」


「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいますにゃ!」


 ︎︎一応会長にこのことは連絡してから三人で家に帰った。一応シアの保護者は会長だからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る